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第3章 “ハムおじさん”

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 朝8時、コンビニで待機している“ハムおじさん“を迎えに行くのが高良田健の仕事だ。高校を中退してからいろいろなアルバイトをしたが、今の仕事が一番稼ぎがいい。

「おはよーございまーす」

 入るなり元気に声をかける。コンビニの従業員、そしてブリーフ一丁で首輪をした“ハムおじさん“へ向けて。

「おはよー」

 と5歳の娘をもつ一重で巨乳の主婦の増谷真里亞(23)がパンを整理しながら言った。

「おはようございます」

 小説家を目指している小柄で少しふっくらとした赤城雫(32)がボソボソと言った。“ハムおじさん“は開かずの雑誌の中身を何とか見ようと必死になっている。

「“ハムおじさん“、時間だよー、そろそろ行くよー」

 “ハムおじさん“はもう少しで、金のために脱いだ落ち目のアイドルの乳首が見える所まで雑誌を開いていた。開かないように止めてあるテープが軋んでいる。

 高良田健はいつものように3枚入りの薄切りハムを一つ買い、店内で開けて一枚床に放り投げた。

「・・・え?」

 “ハムおじさん“が言った。

「・・・・え?」

 高良田健も困惑した。今までの“ハムおじさん“は喜んで床に放り投げられたハムにむしゃぶりついたからだ。

「・・・“ハムおじさん“だよね?」

 高良田健は“ハムおじさん“に向かって言った。

「“ハムおじさん“だよ?私は」

 落武者のような頭をした“ハムおじさん“は高良田健の目を真っ直ぐ見ながら言った。

「じゃあハム食べないと」

 笑いを堪えながら高良田健は言った。

「なんで貴様が投げたハムを食べなければならない。その店員の投げたハムなら食べるがな」

 “ハムおじさん“は増谷さんの方を指差して言った。

「いやいや、そういう仕事でしょ?“ハムおじさん“って。それでお金貰ってるんでしょ?」

「したくもない仕事はしない主義でね」

 落武者頭でブリーフ一丁の男のキリッと顔に、店内にいた全ての人間が堪えきれず爆笑した。

「あははははは面白いこと言うねーおじさん!!」

 と高良田健。

「あはははは、仕事なめてるw人生なめてるよコイツw」

 と増谷さん。
 
「そのセリフ、使っていいですか?」

 と赤城さん。

「まーいーや、行くよ、ほら」

 そう言って高良田健は“ハムおじさん“の首輪にリードをつけようとしたらまた“ハムおじさん“が拒否したので、今度は許さずかなり強めにグーで頬を殴ったら“ハムおじさん“は大人しくなったので、リードをつけて引っ張り、店を後にした。
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