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第5章 大学1年生

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「じゃーなー」

「おー」

 中央駅の近くで翠と分かれた春から高校3年生の“茜音“は、駅に自転車を止め、ホームへと向かった。そしてホームでポケットの中からガムを取り出し、先程翠と一緒に撮った写真を見ながらくちゃくちゃと食べ始めた。

「なんかこのガムも飽きたなー」

 “茜音“はそう言うと足下で餌を待つ鯉のように口をパクパクしている“者共“に向かって言った。“者共“は問いに答えずただ口をパクパクしていた。

 “茜音“はガムを口から少し出して指で摘み、50㎝ほど伸ばした。そして伸びたガムを口から取り出し、“者共“の前で振り子のように揺らした。

「あぁ、あぁ・・・」
 
 ガムが右に振れれば右を向き、左に振れれば左を向く。また右に振れれば右を向き、左に振れれば左を向く。

「今日は誰にしようかな、くちゃくちゃ」

 “茜音“は振り子にしていたガムを口の中に戻した。

『パクパクパクパクパク!!!』

 “茜音“がそう言うと、“者共“がすごい勢いで口をパクパクし始めた。

「じゃあ、今日は“松方さん“」

『パクパクパク!!!!』

 “松方さん“は喜んだ。

「じゃあ、いつもの言って?」

「“茜音様“のおかげで今日も一日生き永らえる事が出来ました。ありがとうございます!」

「うむ、よろしい、プッ!!」 

 “茜音様“は足下で口を開けて待つ“熊倉さん“目掛けてガムを吹き出した。

『2番線に電車が到着いたししまーす』

 “茜音様“は電車に乗った。車窓から、ホームで“松方さん“をはじめとする“者共“に羨ましがられながらガムを食む、“熊倉さん“の姿が見えた。
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