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暴食の章

第31話 戦況を変える奇策

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 勢いよく空中へ飛ばされた僕たちは強制スカイダイビングをする羽目になった。

「は、灰崎!」

「サミエム、手を!」

 テレポート石は全員に配られている訳ではない上に制約まである。使用者と接触されている者しか同じく飛べないという…何とも微妙なものだが、こんな非常事態なら厄介な問題にもなり得る。空中で動くすべなんて分からない、手を伸ばして届く範囲じゃない……ないものだらけだ。

「届いたぞ!」

「…え?」

 確かに右手を握られている感触が…まさかこの短時間で僕よりも重い装備を身に着けているサミエムが自由自在動けるように?全く……本当に彼の身体能力には助けられる!指をならし、もう少しで地面に激突するという所で僕たちはどこかへ飛ばされた。



「…っ!痛ってぇ!」

「くそぉ……話が違うじゃないか、ライゼン!」

 鈍い音が硬い木の床に響く。強打した腰をなでながら周りを見渡すと……見慣れた風景だ。クラウソラス研究所?なんでここに…

「あっ!」

「うん?なんだよ?」

 荷物の中には2つの石があったんだった。1つは脱出用の柔らかい床の場所に飛ぶものとあと1つは…秘密の研究所へ行くためのもの…つまり、僕のミスだったということだ。

「…なぁ……なぁ!」

「うへぇ?!」

「考え込んでどうしたよ?確かにやべぇ所の騒ぎではないがよ」

「とりあえず外へ出ましょう!」

 これで大丈夫なはず…誤魔化せたはずだ!そう思い込み絶望的な外へと出る。



 なんて光景だ…終末期の世界なのか?そう見間違うほどに事態は深刻化していた。蛇竜と化した暴食帝の腹に一心不乱に噛みつく白い化け物たち、どこかでは悲鳴が聞こえ、豪華絢爛の建物は一目で廃墟と言える佇まいに…世界の料理人が憧れる食都壱番街の姿は最早ないに等しい。

「お、おい…あれ!」

 思わず息を吞み、反応するのも忘れていた。先ほどまで腹に噛みついていた化け物が吸収されて体内に入っていくではないか。奴は皮膚からも食事をするのか?!確かにがれきの1つも残ってない…あいつの身体が当たった部分が綺麗にくり抜かれている。

「触れれば食われて魔法も効かないのか……ははは、これだけムリゲーだと笑いが出るよ」

「危ない!」

「ウボォアァァ!」

「…っ!ウェンデゴか!」

「エンチャントウィンド、風烈斬!」

「助かったよ…」

「まだ来るぞ、早くライゼンと」

「合流なら今したぞ、迷子ども」

「うわっ、びっくりした…」

「残念だが作戦は失敗だ、あの状態と戦えるのは強欲帝様以外いない」

「そ、そんなまだ人は残っていますよ?あれを」

「止めるすべがあるのか?強大な魔力の塊でさえ食い尽くす化け物相手に何をするって言うんだ?」

「…」

「大体我々は正義の味方なんてものじゃない、むしろ悪役だ!感謝なんて」

「1つだけ…」

「何だと?」

「1つだけ案があります」

「ほう、この状況を変える妙案があるというのなら聞きたいものだな、賢者様?」

「ソウルリンク…あいつと魂の同化をして魂縛化します」

「え?」

「何?」

(えぇぇぇ?!正気?!)

「それしか僕が取れる作戦はないです」

(いくら何でも…ほ、ほら!逃げるとかさ?飴ちゃんあげるから!考え直してよ)

「…なんだこのやかましい声は」

(失礼ね、私はこれでもれっきとした神なのよ!)

「まぁいい」

(良くないっての!)

「やかましいのと意見が一致するのはいささか不愉快だが私も反対だ」

(不敬罪にしてやるぅ…)

「魂がどこに連結されているのか分からない…からですか?」

「あぁ、ソウルリンクはに触れていなければ手順を踏めない、そういう制約だろ?」

「…一か八か僕に賭けてみませんか?」

「何もしないよりましだとでも言いたそうだな?」

(わ、私は反対よ!)

「分かった、ただし万が一お前がしくじっても助けない…いいな?」

「はい、もちろんです」

「俺も灰崎を信じる、お前がいなくなるのは嫌だけどさっき俺を信じてくれた時みたいに俺も!」

(…あーもう!分かったわよ、やれることは手伝うわよ!)

「…ふふ、ありがとうございます!では…起死回生の作戦を説明します!」
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