あちらの悪役令嬢は、前世が猫だったようです。

藤 都斗(旧藤原都斗)

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そんでもってこうなった

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 「前世返り?なんだそれは」
 「授業で習ったわバカ王子マジ黙ってろ」

 前世返り。
 それは、人間である事に絶望する程のショックを受けた人がたまに発症する、魂の先祖返りのようなものだ。
 全てに絶望でもしなければ発症する事は無いが、一度発症してしまえば誰か心の開ける者と出会わない限り元に戻ることは無い。

 つまり、公爵令嬢の前世は、猫だったのだ。

 前世が猫なのは余り聞いた事ないけど、それ以外なら前例が無い訳ではない、何せ、俺も前世返りの内の一人なのだから。

 そして、分かった事が一つ。

 「にゃおあん、うなーぁお、なうー」

 懐かしい気配、懐かしい眼、懐かしい仕草、懐かしい、鳴き声。

 「クロ!」
 「なぉおん」

 不安げな鳴き方をしながら辺りを見回している彼女の名を呼べば、ぱっと向けられた金色の瞳が俺を捉える。

 「あぁ、クロ、会いたかった...、俺だよ、孝之だよ、クロ!分かるかい?」
 「おい、セン、どうしたというんだ、何を言って」
 「うるせぇクソ王子黙ってろ」
 「ぐはぁっ!?」

 王子を適当にあしらい、クロへと近付く。
 なんか肘に何か当たった気がするけどそれどころじゃないからまあいいや。
 だけど昔とは姿が全く違うせいで、不審な目を向けられてしまった。

 「んなーぉ、ぅなーん」
 「大丈夫だよ、俺だよ、ほら」

 近付くだけじりじりと後退るクロに優しく声を掛けながら、魔力を使って気配と、魂、匂い、それから、声を、前世のものと今の俺と重ねて発しながら手を差し出す。
 すると、クロは姿勢を低くして警戒しながらもクンクンと指先の匂いを嗅いで、それからゆっくりと近寄って、掌に顔を擦り付けてくれた。

 「よーしよしよしよし、こわかったねー、もう大丈夫だよー」

 前世と同じように頭を撫でてやれば、一体どこから鳴っているのか令嬢の喉がゴロゴロと鳴った。

 「よーしよしよしよしよしよし」
 「んなーぉ、あぅんにゃあ、にゃううー」
 「うんうん、そうだねー、寂しかったねー、辛かったねー、よしよしよしよし」

 何を言ってるのか分からないけど、とりあえず頭を撫でながらうんうんと頷いて宥める。

 「セン君!一体どうしちゃったの!?」

 突然過ぎるエトワール嬢の言葉にビックリしたクロがびゃっと飛び上がり、フシャー!と威嚇しながら俺の背後へと隠れる。
 いや、どうしちゃったの!?ってお前こそどうしちゃったの。

 「なんですか突然、クロがビックリして隠れちゃったじゃないですか」
 「だってセン君、そんな風になった事なんて無かったよね?、まるで別人みたいだよ」

 そりゃだって王子の側用人として居なきゃいけなかった時の俺しか知らんやんアンタ。

 「なるほど、読めたぞセン、貴様、この私を裏切っていたのだな!?」

 うん、頭大丈夫かなこの王子。

 
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