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そうなるかぁ?
しおりを挟む優しく頭を撫でてくれるタカユキの手が心地良い。
逆立っていた気持ちが、ゆっくりと治まっていく。
タカユキの手は魔法の手だ。
暖かくて、優しくて、だからアタシは、タカユキに撫でられるのが大好きなんだ。
そうよ、こんなやつ気にする必要ない。
だってタカユキが傍に居るんだもん。
「リィーンさん、お気持ちは分かりますが、受け入れて頂かないと何も変わりません」
「私の何が分かるっていうの!?」
ふと、大きな鳴き声に、どこかで感じた事のある感情が混ざった。
「大事に!凄く大事にお仕えして来たお嬢様を、なんであんたなんかに任せなきゃいけないのよ!?」
何かを言ったかと思ったら、大嫌いな茶色の子が、物凄くいきなり泣き出した。
ボロボロと大粒の水を目から零しながら顔を真っ赤にして泣いている。
「わ、私のお嬢様を、返してよぉ...!!」
何言ってるか分からない。
分からないけど、なんか、凄く悲しんでる事だけは、分かる。
辛くて悲しくて寂しくて、どうしようもない時の鳴き声。
嫌いな奴だけど、それでもこんな目の前で泣かれると、やっぱりどうしたらいいか分からない。
ちらっとタカユキを見ると、ゆっくりと目を細めてくれた。
きっとこれは、任せてくれって事だ。
こういう時のタカユキはとても頼りになる。
毛色は変わってしまったけど、タカユキはタカユキだから、きっと大丈夫。
タカユキは、茶色の子に声をかける。
「リィーンさん、クロが心配してますよ」
「......へっ?」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの間抜けな顔で、茶色の子がアタシを見る。
なんだか分からないけど、居心地が悪い。
「彼女の心は今、完全に前世のものです。
ですが、本質は何も変わりません。
気高く、美しく、優しい、あなたの良く知る、クロエリーシャ・フォルトゥナイト公爵令嬢のままです」
「.........でも、私はいつも、威嚇されて...」
えぐえぐと涙を零しながら、茶色の子が何かを言い返した。
やっぱり何言ってるのか分からないけど、それでも少し、空気は変わったような気がする。
「それはあなたが、猫ちゃんの嫌う行動ばかりするからですね、一度本などで調べて下さい」
タカユキが何か言うと、茶色の子は間の抜けた、ぽかんと口の開いた顔でタカユキを見る。
タカユキのお陰でか、どうやら涙は止まったらしい。
「......えっ?教えて下さらないんですか?」
「そこまでの義理はありません」
ねぇタカユキ、なんかよく分かんないけど、話が纏まったんならなんかくれない?
オヤツが良いなアタシ。ほら、ちゅーるとか。
そんな意味を込めて前足でタカユキにアピールすると、真剣だった顔が緩んだ。
「なんでちゅかクロちゃん!構って貰えなくてちゃみちくなっちゃったんでちゅか!きゃわいいなぁもう!クロちゃんきゃわいい!」
わしゃわしゃと撫でられるけど、うん。
伝わってない気しかしないわね、本当に頭の悪い子なんだから。
「......やっぱりあんたなんか嫌い...!」
そんなアタシ達を見て茶色の子がなんか言ってたみたいだけど、気にしない事にした。
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