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そんなんアカンわ
しおりを挟む誰から見ても完全に詰んだ状況にも関わらず、一切気付いていない愚かな王子は、己の大事な少女に心配そうな顔を向けながら、愛を囁いた。
「でも、本当に心配なんだ。
あの女の策略で、君にまた辛い思いをさせてしまっている...。
俺がなんとかしてみせると言いながら、何も出来ていない...」
なんとかしようとして空回りしまくった結果がこれとか笑い話にもなってないですけど。
頭の中で冷静なツッコミをしている侍女の目が、物凄く冷たい。
今回の件は、ともすれば内乱になってしまう可能性があった事を知っているからだ。
「いいえ王子、辛くなんてないわ、だって、わたしには王子が居るんだもの。
それにね、好きな人が頑張ってると、何倍も頑張れるのよ」
「エトワール......、本当にすまない、俺が不甲斐ないばかりに......」
いや、不甲斐ないとか以前の問題ですけど。
心の中でツッコミを入れる侍女と兵士の目が、死んだ。
他人の、しかも腹の立つ人間のイチャラブなど害悪でしかなかった。
「もう!そんなに自分を責めちゃダメよ王子。
王子は凄い人よ、学園だって首席で卒業したし、あんなにバラバラだった生徒会をまとめていたじゃない」
「ありがとう、エトワール...、だけど、俺はそれだけじゃダメなんだ...、この国の王子だからね...」
「王子......」
それが分かっててどうしてこうなってんのこの王子。
もっと考えなきゃいけない事沢山あったと思うんだけど。
そんな言葉を口にしてしまわないよう、侍女も兵士も口をへの字にして必死に耐える。
「王子だからこそ、この国の為にも、あの女をなんとかしなきゃいけない......」
遠い目をして窓の外の景色を見詰めながら告げられた王子の言葉は、真剣そのものでありながら、決意に満ちていた。
そんな王子に、少女は慌てたような、何処か必死な顔で制止をする。
「王子...、ダメよそんなの、きっと理由がある筈だわ!それも聞かずに、なんてダメ!」
「......君は本当に、誰よりも優しく美しい人だ...。
だけど、理由があるからと言って、何をしていい訳では無い、それは分かるね?」
「でも、話し合えばきっと、どんな人とでも分かり合える筈なのよ」
王子は、腕の中で必死に告げる愛しい少女を眩しそうに見詰めた。
「エトワール...、......分かったよ、一度、手紙を書いてみよう。
もし、これであの女がどうしようもない人間だと分かったら、後は俺に任せて欲しい」
「王子......、うん、分かった」
完全に地球に存在するチベットスナギツネのような顔になってしまった兵士と侍女は思う。
そんな手紙絶対届かねぇぞ、と。
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