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そうだね知ってた
しおりを挟むそれでは時を現在へ戻すとしよう。
公爵令嬢が『にゃんぱらり』とベランダから地面へと降り立ったあと、一体何が起きたのか。
まず、公爵令嬢が敷地内とはいえ外に出てしまったので、それを室内へと返す為に使用人達は大慌てで令嬢を追い掛けていた。
「お嬢様!どこですか!?お嬢様!!」
「お嬢様ァァァ!」
心が猫になった令嬢が、外に出て何をするかというと、逃走以外には無いのではないだろうか。
「見たか!?」
「いや!こっちは居なかった!」
「くそっ、お嬢様ァァァ!!」
半泣きで駆け回る執事、後程枯れてしまいそうな程の大声で呼び掛けるメイド、顔面蒼白で隠れられそうなスペースを見て回る使用人。
「このまま見付からなかったら、お嬢様はどうなってしまうの……!!」
「きっと怖くて泣いてらっしゃるわ!」
「あぁ、なんてこと!おいたわしやお嬢様……!」
ハッキリ言おう。
大惨事である。
「それもこれも全部何もかもあの王子のせいよ!」
「そうよ!我が国の華とまで謳われたお嬢様に何してくれやがるのかしら!」
「ホントよね!」
一方で、王子に対する株が最早過去最高に下落しまくっていた。
自業自得とはいえ完全なとばっちりではあるのだが、まあいいということにしておこう。
さて、そんな大惨事を目の当たりにしてしまった暗殺者の男は、これ幸いと令嬢探しに奔走していた。
もしこれで一番に見付けられたら、サクッとトドメを刺してやろうという魂胆である。
追加で、令嬢の行方を皆と同様、必死に探していたという事実は、それなりに男の立場を助けてくれる事だろう。
そんなこんなで、色々と打算や計算やその他もろもろによる男の行動ではあるのだが。
(全て俺には筒抜けなんだよなぁ)
隠密、そして人間の体温、呼吸、心音、それらを察知出来る読心という魔法を同時発動している俺に死角は無かった。
何となくで目標の人物が何を考えているのか察せるこの読心という魔法だが、これはクロと話せるようになる為に研究していて出来た副産物の魔法なので、使えるのは俺だけである。
これが上手く行けばクロと話せると思ったんだけど、猫にはそんなん通用しなかったですちくしょう。悲しい。
ちなみに現在クロがどこにいるかというと。
「んなぁん?」
「ん?どうしたのクロちゃん?撫でたらいい?撫でたらいいの?そうなの?」
「なぅ」
嬉しそうに目を細めて、俺の掌に頭を押し付けてくるクロ。
はぁああああ!!ぎゃわいいんん!!
悶えて転がり回らなかった俺を誰か褒めてくれてもいいのよ。
いやここには俺とクロ以外誰も居ないんだけどね。うん。
なにこの天国?
爽やかな風のそよぐ木陰で、遠くに使用人達の阿鼻叫喚を聴きながら、俺はクロとの至福の時間を楽しんだのだった。
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