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それでもいいらしい
しおりを挟む黒くて金色の、俺の宝石。
誰よりも大事な大事な、俺の唯一。
綺麗で純粋な、可愛いクロ。
俺の弱さとかそういう、なんとも言えない汚いのを見透かしながら、それでも俺を信じてくれる、愛しい存在。
ふう、と小さく息を吐く。
そのまま、よしよしとクロを撫でて、心を落ち着けた。
うん、OK、いつもの俺だ。
殺気、までは行かないだろうけど、敵意のようなものは出てしまっていたらしい。
リィーンさんに向き直ると、その細い体がビクッとこわばる。
怯えてはいないけど、戸惑っているような、こちらを窺っているような、そんな空気だった。
それをぶち壊す為に、俺は口を開く。
「……可哀想ですか、あなた達から見ればそうでしょうね。
だけどそれはただの主観ですよ、私達前世返りはそんな事を言われても腹が立つだけです」
「あ……」
言った瞬間のリィーンさんの怯えたような瞳に、少しの罪悪感を感じてしまう。
だけどこれは凄く大事な事だと思うから、きっちりと言おう。
「今を生きてるだけで可哀想とか、何様なんだって話ですよ、そんなん言われて彼女が喜ぶとでも?」
淡々と、少しの皮肉をぶつける。
八つ当たりだと理解しながら、それでもこれは必要な事だと、まるで己に言い聞かせるみたいな自分にも、腹が立った。
「そう……ですね、すみませんでした」
それは素直な謝罪だった。
誤魔化そうとも、取り繕おうともしていない、真っ直ぐな謝罪。
己の間違いを認められる、素直ないい子なんだろう。
だからこそ彼女はクロの侍女で、共に過ごして来られたのかもしれない。
八つ当たりしてしまう子供みたいな俺とは大違いだ。
「あなたくらいは言わないで下さいね、それ」
「……はい、気をつけます」
真摯な眼差しで俺を見詰めた彼女は、胸に手を当てて頭を下げた。
これからも俺達みたいな存在と一緒にいるつもりなのだろう。
真剣に、そして、真正面から向き合って行く決意があるのは、彼女の瞳を見れば分かった。
なんか、すげー未熟だな、俺。
今後もし、クロと意思疎通が取れるようになったとして、その時に俺と同じ事を言われた彼女が一体何を思うのか考えるだけで、それを言った奴に対して凄まじい怒りが湧いてしまう。
余りの怒りに、我を忘れてしまいそうな程のそれは、明らかに危険だ。
全部、ただの想像なのに。
「んな!んんんな!」
さっきまでの雰囲気を払拭するみたいに、クロは自分の着ているスカートの裾を咥えて、ぎぎぎとか音が聞こえる位引っ張るのを再開した。
って待って待って、スカートの裾はアカン、太ももが見えてる。
女の子がそんな事しちゃだめだよクロちゃん。
「よーしよしよしクロちゃん落ち着いてねー、大丈夫大丈夫わかったわかった」
「んんんんん!」
アカンこれだめなやつだ。
頭を撫でたりなんだり、とにかく宥めようと色々やったけど、効果なしである。
ふと、リィーンさんがクロへ向き直った。
もしかして手伝ってくれるのかと思った矢先、リィーンさんは勢いよく頭を下げた。
「お嬢様、申し訳ございませんでした」
「んんんんな!」
謝罪した次の瞬間、まるで答えるみたいなタイミングで鳴いたクロだけど、きっと意味はリィーンさんの望むものじゃない。
しかし、リィーンさんは嬉しそうに破顔した。
「はい!」
「んな!んんんんんん!」
ツッコミ入れるの野暮だと分かってるけど、心の中ならいいよね?
めっちゃ嬉しそうな顔してる所悪いんだけどさ、絶対通じてないよ、それ……。
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