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第一章 青葉

13 廃墟にて候

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『もっと姿勢を低くして隠れて』


…あっ、僕また夢見てる。


小柄な少女が下藪を少し押し分けながら目の前10mぐらいの崖の下、その先100mぐらいの所にある洞窟の様な場所を見ていた。
おそらく夜もだいぶ更けていて、そろそろ真夜中って言っても良い頃合い。

ちなみに少女の名前はジーニー。ボブの繁殖相手だ。
『イテッ…今なんで蹴った?』
蹴られた腕をさすりながらジーニーの最近丸みをそこそこ感じる程度に育ってきている尻を舐める様に見てやった。

『今あなたから嫌な感じの何かを感じた気がしたから』
こいつら獣人族の女って感覚がかなり鋭敏なんだよなぁ…人の思考を読むな。まったく。

『まぁそれはいい。あいつらが配置に着くまでもう少しだと思うが何とかなりそうか?』
俺の視界には3人の番人らしき奴らが槍を持って焚火の周りに屯って話でもしてる様な姿が見えている。
『一応2人は私がるから1人はあなたがって』

ジーニーはそう言って弓に視線を一瞬落とし、そのまま偵察を再開した。
『ジーニーって…いや、獣人の奴らって瞬間的に爆発的な力を出すことがあるよな。あれってどうやってんの?何かのスキルなのか?』
顔の横30cmぐらいの所にあるホットパンツに包まれた尻の上に手を置いてこっちを見たジーニーに指でヘレンとボブが予定の場所に到着した事を知らせた。

『勝手に私の尻に触るな。そこに触れていいのはボブだけ』
俺の手の皮を捻りながら自分の尻から引きはがしそんな事を言ってくるジーニー。
『んなこたぁ知ってるって。でも触りたいぐらいステキな尻がそこにあったら愛でるのは紳士の嗜みって奴なの』
『黙れゲス野郎が。お前のおかげで私は最近ずっと寝不足。今度触ったら貧相なお前のソレを食い千切る』
『こっわ!チンポ食い千切るとかこっわ!できれば舐める程度にしておいてくれない?』
『それよりボブもヘレンももう少し準備に時間がかかりそう』
あ、ほんとだ。
2人とも身体能力を上げる為の詠唱と踊りを始めてる。

『ヘレンも種族的なスキルで夜だけ能力が伸びるよな』
『ヘレンと私たちの能力の発生のし方はまったく違う。ヘレンのは最初から持ってる力が解放されているみたいだけど私たちのは瞬間的な力の解放だから』
『それは…さっき俺が聞いた事の答えか?』
『そう。速く動いたり普通じゃ当たらない所に矢を当てるのは、体が勝手に決めている枷を意志の力で外して動いたり、心臓の動きまで自分で変えたりして体の動きを完全に止めて、精度を上げている。だからすごく疲れる』
なるほど、リミットを外して瞬間的に爆発的な力を出したり、体の意識外で動いてる部分まで干渉して止めたりする事で普通なら当たらない様な距離で矢を当てると…

『それ俺とかなにも鍛えてない生身の奴らがやったら腕とか足とかボロボロになりそうだな』
『たぶん何度もやったら寝たきりになる。だからもし使うなら体を回復させながらやったらいい』

なるほど…壊れるそばから回復させつつ酷使するなら超人的な身体能力も出し続けられるって事か。

『いい事教えてもらった。今度ボブのあれをもっと大きくするための極意をあいつに教えておくな』
『…それはお礼にならないからいらない。それよりもボブのアレをもう少し小さくする方法を教えて欲しいかも』
『…小さくする…お前がしゃぶるなり挟むなり先にあいつを何回かイかせてやればいいんじゃねぇの?』
『しゃぶっ…このゲス野郎が…まぁでも…そうか、先に何度か…ナルホド…』
『ボブのチンポを思い出すのは後にしろ、そろそろ時間だ』
『だから尻を触るなって言ったのに…このクズが…』

ゲスとかクズとか言いつつも今度は尻をつかんだ俺の手を振り払わないジーニー♡

さてと、そろそろ盗賊連中を殲滅してさらわれてる女達を救助して一発楽しませてもらうとするか~♪

俺はジーニーに教えてもらった話を参考にして、体に継続回復魔法を掛けて自己暗示スキルを使った。


へー自己暗示スキルと継続回復魔法か…魔法の方はリィンカーネーションみたいな魔法って事で、自己暗示スキルは体が壊れない様にかかっている制御リミットを解除する事が出来るって感じかぁ。

確かにこれなら瞬間的に何メートルもジャンプしたり一瞬で50m移動したり出来そう。




ん?何だ?誰かが泣いてる様な声が聞こえる気がするけど…誰?



僕はロープで縛られて転がされていた。それと両手の親指が何か細い物で固定されて動かせない様になっていた。
「あれっ…ここ…あっ、小晴が居た」
「小晴様って言いなさいよ!ヒック…ウヴ・・・怖かったんだからもう!!あんたあんなに簡単に寝るとかおかしいんじゃないの!?何か薬でもやってんじゃないの!?」
「寝る?………あ、そう言えば僕らは車に乗せられて…そうか、何かを口の辺りに押し付けられたな」
「だから何か眠くなる様な薬を使われたの!でもあんなの気が張ってる状態ではあんまり効かないはずなのにあんたは何時間寝てるのよ!まったく!!」

何時間寝てるのよって言われても…
「って今あれからどれぐらい経ってるの?」
「…30分ちょっとだけど…何か文句でもあるの!?」

30分寝てただけでそこまで言われるの?
あっ、この小晴って子よく見たらリボンが上級生の色だ。えっ?この体で高校3年生?18歳ってマジ?
「何か文句でもあるの!?」
僕の驚いた顔で何かを察したらしい小晴がギャンギャンうるさい。

「イヤイヤ、その体で上級生とか詐欺だろ」
「うっさいわね!私は今からなのよ!大器晩成型なのよ!!」
「さすがに18歳でこれから育つは厳しくないか?」
「少しぐらい夢見てもイイでしょ!!バカァ!!!」
小晴の目から涙がボロボロ落ちてるし…

確か夢の中でさっき見たのは…自己暗示と継続回復魔法で、力が出せるようになるって言ってたな。
自己暗示スキルは分かる。多分使えると思う。
継続回復魔法は…回路の場所は分かるけど…なんか使えない感じだなぁ…何か前提条件が足りてない感じって言うか…あ、魔法を続けて掛けるのって脳内処理がずっと続く感じだから…あれだ、今の僕だとそっちで頭を使い続けるから動けなくなるんだ。だから使えないんだ。これって頭を2個に分けるとかそんな何かが必要になるみたいだけど…それってどんな状態?…フム…とりあえず今回は普通の回復魔法でその都度回復する感じにやってみるか。

「フンッ!って!痛ってぇ!」
親指を拘束していた何かを引き千切ったら小さなパキッて音と共に指に鋭い痛みが走った。
痛みを感じる右手の親指に回復魔法を掛けたら痛みが和らいで普通に動かせるようになった。

「あんたそれ…何無茶してんのよ!そんな事したら指の骨が折れ…痛くないの?」
僕が自分の腕と手首を拘束しているロープを引き千切ったら小晴が涙が止まるぐらい驚いてくれた。

少しぐらい安心させておくか。この見た目の女の子にここまで泣かれたらさすがに心が痛い。
「僕…俺を止めたければ金属ワイヤーでも持って来いって事。ほら小晴、後ろを向け」
「えっ…何を…」
小晴が少し怖がってるが、自由にしてやれば少しは安心出来るだろ。

自分の指の骨を折りながら小晴の拘束を全部外してやったら少しの間呆然とした顔で僕を見てたけどまたポロポロ涙を流しながら僕の胸にゆっくり近づいて来て抱き着いた。
「スン…少しの間抱かせてあげるから喜びなさい。グズッ」
顔を見せない様にしながらこんな事を言って制服がしわくちゃになりそうな勢いで僕を抱きしめる小晴。

なんか愛奈の泣いてる時の事を思い出してそっと抱きしめてしまったら少しビクッってしたけど強く握っていた制服を離して嗚咽を漏らしながら抱き着きなおした小晴。
「大丈夫。僕…俺が必ず助けてやるからな」
「…うん」

僕ってもしかしたら小さい体の子の方が好きなのかなぁ…でも芽瑠の胸は揉んで吸って引っ張りたいって思うから大きい胸の子も嫌いな訳では無いと思うんだけど…

僕の胡坐をかいた脚に正面から抱き着く様に乗って僕に抱き着いている小晴のほとんど感じられない胸の感触とか太ももの重みなんかを感じつつ、僕は自分が本当に好きな女の子のイメージを模索していた。

「んっ…もう大丈夫。アリガト」
小晴が泣きはらした目だけど少しだけ力が戻った感じの表情で僕を見上げて僕の膝から降りた。

おぉう、今気づいたけどさっきのって対面座位。めっちゃ愛が深まる体位って聞いた事がある~♡

って、僕は愛奈とか小晴みたいな愛(おっぱい)を感じにくい相手としかこんな事できないって言うのは…もしかして何か呪われてたりしないよな?

「あ、そう言えば僕たちをここまで運んだ連中ってどこに行ったの?」
「俺って言い方はもう止めるの?」
「どっちでもいいけど…」
「じゃぁ俺を使ってちょうだい」

俺って呼称が好きな子?

「まぁそれはどっちでもいいけど…」
「私がうっすら起きていた間は何かドアの辺りに立って話してたけど、気づいた時にはもう居なくなってたわ。荷物は…どこにあるか分からないの」
「そうか。じゃぁ取り戻してから帰らないといけないって事か」
部屋を見渡した感じではそこそこ廃墟らしさを感じるというか建築現場らしさを感じるって言うか…

「ここって建築途中で放棄されてる場所だったりするのかな?」
「…どうかしら?なんとなく言いたい事は分かるけど」
ドアはあるけど窓ガラスは入ってない。窓ガラスが入りそうな所の外には足場も何も無くて20mぐらい下にコンクリートの地面が見える。壁はコンクリート打ちっぱなしで天井板が付けられる前なのかかなり高い場所にあるコンクリートの天井に配線がむき出しで固定されている。

「そう言えば時間はあれから30分ぐらい経ってるって、小晴言ってたよな?」
「えっ?…うん。言った…モウヨビステ…モウ…モウソンナカンケイッテ…」
頬を押さえて後ろを向いた小晴が小さな声で何かブツブツ言ってるけど、僕が呼び捨てにした事への呪詛でも漏らしてるのか?

まぁいい。

天井までは5mぐらいあるな。でも…煙突か何かが繋がる為の穴かどうかわからないけど、天井ギリギリの辺りに人が入って行けそうな横穴が開いてる。

「小晴、あの穴って外まで出れると思う?」
「ひょえっ!?…えっ?あぁあの穴?」

こいつ驚きすぎじゃないか?今50cmぐらい跳び上がって振り向いたぞ。

「そうね…あの高さだと排気とかクーラーとかの室外機につなげるダクトとかを通す場所かもしれないから外に繋がってるかもしれないけど…」
だから何?って顔で小春が俺を見てる。

「ちょっと俺が運んでやるからうまく移動しろよ」
「はぁ?何をチョッ…いきなり抱き上げるとか…あんた…ってお米様抱っこするってどういう事!?ここはお姫様抱っこするところでしょ!!あんたどういう教育受けてきたの!?」
「俺はお姫様抱っこする教育とか受けた事ないんだ。ごちゃごちゃ言ってると尻を撫でまわすぞ?」
「…エッチ…バカァ…ドスケベ」
「言いたい事は後で聞くから俺の腕が折れる前にうまく移動しろよ。行くぞ!」
「あんなところに…はぁ~~~~~っ!?」
僕が小晴を肩に乗せたまま垂直ジャンプで排気ダクトか何かの縁に掴まったら小晴が固まった。

「ほら、さっさと移動しろ。マジで骨が折れそうだから」
ちなみに両足の筋肉は今の一回のジャンプで悲鳴を上げていたので速攻で回復魔法で治しておいたが、まだ痺れるような痛みを脚の全体に感じる。
「あっ、えっ?えっ!?あ、ここに…」
僕の肩の辺りに両手を当ててコハルが体を起こそうとするのに合わせて懸垂の要領で押し上げてやったら小晴は開口部にお尻を載せて座る事が出来た。

とりあえず逃げる事は何とかできそうだな。

自分の体を持ち上げようとした時、僕のコハルを載せていた側の右手の指がパキパキポキって3回ほど軽い音をさせて折れ、体が地面に落ちた。

尻から地面に落ち、全身を走りぬけた痛みに悶絶していたら上から小晴が落ちてきた。
「キャー!!!」
「なんでぇ!!」

………
……


「ホントウニゴメンナサイ…」
「まぁいいけど…」
小晴がさっきまでの半分ぐらいに物理的に縮まってる感じがする。

おそらく意図した訳では無いと思うが、小晴は僕の腹の上に両ひざを立てる様に落ちてきた。
そしておそらく僕の内臓が一回破裂した。すぐ直したけど。
そうだ、内蔵を直した時になんとなく感じたんだけど、回復の効果が小晴の体にも広がった感じがしたんだけど…
もしかしたらだけど、過去を見る魔法みたいに直接触れてたりしたら効果が相手に届く?

だとしたら、もう一個気になる事がある。
精力活性化スキル…あれの効果がもしかしたら愛奈にも伝わってるかもしれない。んー…だとしても今考えても確認出来ないから、とりあえず後でもう一回考えるか。

「もう魔力が足らない。さっきみたいな事は今はもう出来ないから脱出は少し待ってくれな」
「…魔法が使えるって言ってるって話を聞いたけど」
「それはあの医者から聞いたのか?」
「うん。過去を見れるのと回復できるのともう1つ何か出来るって言ってるって…」
僕の上から降りてそのまますぐ横に正座した姿のまま上目目線で話をしてる小晴はちょっと愛奈風味が感じられて可愛い♡

「あいつもさすがにあれだけ見えた事を言ったら信じると思って色々話したんだけど…もしかしてあいつまだ信じて無いのか?」
「信じて無いわ…ね。医者として生活してきた辺りがどうも魔法がある事を受け入れられないみたいよ」
「はぁ…僕は誰に相談したらいいんだ?今の所2か所で失敗して…ハァ、もう誰に相談に行ったらいいか分かんね~」
とりあえず力が抜けた僕はそのままコンクリートの床に倒れて天井を見上げていたら、小晴がもぞもぞ動いて頭の辺りに近付いてきた。

「私も魔法が使える訳じゃないけど…もしかしたら似たような力があるかもって思ってた事があったんだ。だから私に話してみない?」
小晴が僕の頭を持ち上げて自分の足の上に置いてくれた。

「小晴にも何かスキルみたいなのが使えるの?」
「スキルって言うか…ちょっとした魅了みたいな力って言うか…」

それから僕と小晴は、少しの間不思議な力の事を話し合った。
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