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三度(みたび)②
しおりを挟むまずは聴診をされてから、心エコー。
工藤先生も藤堂先生も真剣にモニターを見ているのが、目を瞑っていても感じ取れる。
工藤「ん、終わり。タオル取るからちょっと待ってな」
プローブを置いて、温かいタオルでわたしの胸のジェルを拭き取ってくれてから、
工藤「足りないところあったらこれで拭いて、服直していいぞ。血液検査するから起きるのはまだな」
新しいタオルをくれて、軽く胸を拭いて服を正して、また仰向けになって採血。
それが終わると椅子に戻って、
工藤「ひなちゃん。もうわかってると思うけど、今から入院な。しばらく治療に専念してもらう」
と、告げられた。
そして、
工藤「外科の個室、Bの部屋に入ってもらうようにしてあるから、着替えて入院の用意しておいで」
と、診察のために脱いであった白衣を手渡される。
ひな「研修……どうに……も、ならないですよね……」
受け取った白衣を、膝の上でクシャッと握る。
工藤「学生のうちはなんとかしてあげられたけど、もう医者だから。どうにもしてあげられない。復帰したら研修再開になるけど、いつ復帰出来るのかは何とも言えない。全部、ひなちゃん次第」
全部、わたし次第……。
仕事に復帰したいのなら、それだけ治療に専念しなさいということだろう。
ひな「はい……」
この白衣を取りあげられなかったのも、わたしがもう学生でなく、医者に、社会人になったからだ。
さらにくしゃりと白衣を握って立ち上がったわたしは、静かに頭を下げて診察室を出た。
その数分後……
着替えのために研修医室へ向かう途中、
ひな「……っ、くっ……」
また急に胸が痛み、廊下で壁に手をついて、その場でゆっくりしゃがみ込む。
ひな「……っ、ぅっ"……」
今、手元に水がない。
冷や汗と脂汗が同時に吹き出しながら、早く治まってくれないかと息を止めるけど、なかなか治まってくれない。
すると、
「おい、どうした!?」
たまたま通りかかったのか、わたしに駆け寄って来たのは豪先生。
ひな「……っ、ッ、……っ"」
すぐに立ち上がってこの場を去りたいと思うのに、身体が言うことを聞けない。
そんなわたしに豪先生は、
豪「大丈夫だ、落ち着いて」
丁寧かつテキパキと、心臓に負担がかからないようわたしに楽な姿勢を取らせて、
豪「小野寺だ。ひなちゃんが倒れた。5階の渡り廊下、すぐ来れるか?水持って来い」
誰かに電話をかける。
***
それからはあっという間だった。
工藤先生と藤堂先生が来て、
工藤「ひなちゃん、水飲もう」
冷えたペットボトルの水を渡されるも、
バシャッ
焦りと手に力が入らないのとで床に落としてしまい、
ひな「……っ"、……み、ず……っ」
藤堂「ひなちゃんごめんね、ちょっと我慢してよ」
って、素早くグローブを付けた藤堂先生に、
ひな「っ、……!? っ"、……ッ……!!!」
喉の奥に指を突っ込まれ、嘔吐反射を誘発させられる。
ひな「っ"、オェッ……!っ、ゲホッ……ゔっ、……ッ……ハァ、ハァ……」
藤堂先生の荒療治のおかげか発作は治まったものの、めまいがして自力で立ち上がることができなくて、そのうち誰かが持って来たストレッチャーで運ばれ……
~カンファレンスルーム~
工藤「以前カテーテルを行った時、術中、本人がパニックになったり、血圧が低下する場面もありました」
藤堂「もともと血管が細いうえに収縮を起こしたのと、心臓も小さいのでギリギリだったんです」
豪「厳しいのは十分理解できるが、身体の負担を考えるとやはり開胸は避けたい。ひなちゃんの精神面を考えても、そうじゃないか?」
藤堂「度重なる手術に、過去のことも踏まえると、これ以上彼女の身体に傷痕が残ることは、正直避けたいところではあります」
豪「そしたら、今回は全麻でアブレーションしよう。俺がやるから、工藤、助手に入れ」
翌日には、わたしは3度目の心臓の手術を受けた。
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