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退院したって甘くない②
しおりを挟む~小児科医局~
神崎「ひなちゃん、思ったより戻ってくるの早かったね。まぁ、一気に冷え込んできたし仕方ないかぁ」
宇髄「五条は?」
工藤「まだひなちゃんとこです。グズってたんで、なかなか寝つかないんじゃないですかね」
藤堂「ははっ。相当病院に連れて来られたのが嫌なんだね。あの子、かなり病院嫌いだから」
***
~ひなのの病室~
ひな「ヒック……ヒック……ゲホゲホゲホッ、ハァハァ……ケホッ、ヒック……」
五条「そろそろ落ち着いて寝ろ。熱下がらないぞ?」
ひな「だって……ケホッ、ケホケホッ……ハァハァ、せっかく退院できたのに、ヒック……」
病室のベッドの上で腕には点滴。
泣きたくもなる。
というか、泣きたくしかならない。
五条「仕方ない。気温の変化が激しかったし、うちに来てちょっと疲れたのもあるだろ。環境が変わったからストレスになってたんだ」
鬼五条が優しい五条先生に変わった。
肩のあたりをトントンしながら、優しく話しかけてくれる。
ひな「違う……ケホッ、わたし、すごくうれしかった。毎日おいしいごはん食べれて、温かいお風呂に入れて、ふかふかのベッドで寝れて……コホコホッ、帰る家があって、おかえりとかただいまって言い合える人がいて、ハァハァ……本当にこの1週間すごく幸せだったんで……ゲホゲホゲホッ、す……ゴホッゴホッ……ハァハァ……」
五条「ひな、呼吸浅くならないように……ひながそう思ってくれてるならよかった」
ひな「……ッハァハァ……だから、ッハァハァ……帰りたい……病院……ゲホッ、やだっ……ゲホゲホゲホッ、ゴホゴホッ……ッハァハァ……ッハァ……ハァハァッ……」
五条「うん、わかったからちょっと落ち着こう。ほら、ゆっくり深呼吸して」
ひな「ケホケホッ……スー……ハッ、ゴホゴホッ……スー……ッハァ、ハァハァ……ッハァ……」
五条先生が身体を起こしてくれて背中をさすってくれるんだけど、うまく深呼吸できない。
だんだん、苦しくなってきた……
早く帰りたいのに、これじゃあ帰れない……
五条「ひな~?焦るとどんどん苦しくなるからゆっくり呼吸だぞ。心配しなくても帰れるから、な?」
ひな「ケホケホッ、うぅ……ヒック、スー……ハァハァ……ゲホゲホゲホッ、スー、ゲホゲホゲホッ!! ッハァハァ……ハァッ……五条、せんせっゲホゲホゲホッ……」
あぁ、もうダメだ……
完全に発作になってる。
もう自分じゃ整えられない……
五条「大丈夫大丈夫。頑張って深呼吸しような」
と言いながら、五条先生はナースコールしているということは、
コンコンコン——
ほら、誰か来た。
わたしやばいんだ。
もうやだ……
藤堂「ひなちゃーん、もう大丈夫だよ。すぐ楽になるからね、落ち着こうね」
あ、藤堂先生……
藤堂「ちょっとチクッとするよー」
え?
ビクッ!!
ひな「ん!! ッハァハァ、痛ぃ……ッハァハァ、ケホッケホケホッ……」
注射された……
五条先生に袖まくられてたのも全然気づいてなかった。
藤堂「ごめんね、痛かったね」
ひどいよ、急にされたら痛いじゃん……
でも、少し発作が落ち着いてきてもう一度横になった。
さすがに疲れてぼーっとしてくる。
藤堂「ひなちゃーん、もしもしするから深呼吸しててねー」
藤堂先生が聴診をして、五条先生に挟まれた体温計がピピッと鳴る。
五条「39度ちょうどです」
藤堂「うん。来た時と同じだから、これ以上は上がらなさそうだね」
なんとなく聞こえる先生たちの会話。
結局、わたし大丈夫なのかな?
五条「ひな、もう大丈夫だからな。お熱高いけどしっかり寝たら治るから」
と、五条先生の手のひらがおでこに乗せられた。
あったかいけど、冷たく感じる。
五条「寝れそうか?」
コクッ……
五条「寝るまでここにいるからな。安心して休め」
という声が聞こえて、安心したわたしはやっと眠りについた。
***
~小児科医局~
神崎「あ、藤堂先生と五条先生、おかえり~」
宇髄「ひなちゃん、やっと落ち着いたか?」
五条「えぇ。どうしても帰りたかったみたいで、興奮して発作を」
藤堂「でも、熱は上がらなくなったので、そんなに酷くはなさそうです。胸の音も少し雑音はありますがすぐに治るでしょう」
五条「恐らく、環境の変化が大きな原因だと思います。冷え込みも相まって朝から咳き込んでたみたいですが、今朝は俺がいなかったんで気づけず。夏樹がいてよかったです」
工藤「ははっ。夏樹もひなちゃんのこと好きだからな。ずっと見てたみたいだわ。それにしても、ひなちゃんは五条先生ん家の居心地がよっぽど良かったんだね。何度帰りたいって口にしてたか」
五条「咳も熱も出てるのに、本人はしんどくないと言い張るのが厄介なんです……。すぐに言ってくれればこちらも対処できるんですが、なんせ黙ってるんで結局悪くなる」
宇髄「子どものうちは鈍いからケロッとしてることも多いだろ。しんどくないって言うのはたぶん本当なんだ。が、ひなちゃんの身体自体はそういうわけにもいかないからな。本人に少しずつ自覚を持たせるしかないな」
***
結局、わたしは次の日もその次の日も熱が下がらなくて、家に帰れたのはそのまた次の日。
学校に行けたのはさらにその次の日だった。
だけど、それからは病院に行くほどの熱や発作を起こしてない。
月に一度は定期健診を受けてるけど、そこでも毎回問題ないって言われてる。
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