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勉強会①
しおりを挟む——数日後
コンコンコン——
五条「ひな、ちょっといいか?」
夜、学校も始まり部屋で宿題してたら、五条先生が入って来た。
病院の癖なのか、五条先生は一応ノックするのにこちらの返事を聞かずにドアを開ける。
着替えたりしてたら恥ずかしいのに……
ひな「はい。どうしたんですか?」
五条「実は、来月の末に勉強会があるんだ。1泊2日の泊まりで、ノワールの先生たちが集まっていろいろ発表し合ったりするんだけど、夜はみんなで温泉入ったりご飯食べたりもして、まぁ半分慰安旅行的な毎年恒例の行事だ。で、家族同伴もOKなんだが、ひなも一緒に行くか?」
ひな「え?わたしも行っていいんですか?」
五条「あぁ。3連休の土日だし、どうせ家でひとりになるのも心配だし、旅行も行ったことないだろ。本屋で温泉見てたみたいだしな」
誕生日の時のこと覚えててくれてるんだ。
五条先生はお仕事で行くとはいえ、温泉に入れるなんてなんだか楽しそう。
ひな「行きたいです!」
五条「ん。じゃあ、ひなも行くってことにしとくから、それまで体調崩すなよ」
ひな「はい!」
***
——1ヶ月後
今日は楽しみにしてた勉強会の日。
朝早くに家を出て、五条先生の車で向かう。
五条「着くまで寝てていいぞ。3時間くらいかかるから。昨日の夜もあんまり寝てなかっただろ」
あ、ワクワクして眠れてなかったことはバレてたんだね。
ひな「はい。でも眠くないので大丈夫です。」
だって、すごく楽しみなんだもん。
それに、久しぶりに五条先生の車に乗って、しかも助手席に乗って、サングラスしながら運転する五条先生はなんだかいつもと違うかっこよさ。
思わずじーっと見ちゃう。
五条「何をそんなに見とるんだ」
ひな「え?あ、いえ、なんでもないですっ//」
前向いて運転してるのに見てるのバレた。
なんか恥ずかしい。
五条先生はわたしのために休憩を多めに挟みながらゆっくり運転してくれて、到着したのは山に囲まれた老舗の温泉旅館。
毎年、この時期になるとこの旅館をノワールで貸し切って勉強会が行われるらしい。
まだ朝9時なのに、駐車場にはすでに車が何台も止まってる。
病院の駐車場みたいに外車ばっかり。
「五条先生、お待ちしておりました。お荷物はこちらでお預かりいたします」
旅館の中に入ると、早速仲居さんが出迎えてくれた。
毎年来てるから名前も覚えられてるみたい。
五条「お世話になります。よろしくお願いします」
と、五条先生が荷物を渡して何やら受付してる。
五条「すみません。女性用の浴衣なのですが、140cmくらいの子供用はありますか?背が低くて」
受付「えぇ、ございますよ。お嬢様の浴衣ですね。お部屋にご用意しておきます」
わたしは子供用か……
でも、お嬢様なんて言われちゃった。
それだけでテンション上がる!
受付を済ませると、五条先生がスーツに着替えると言うので今日泊まる部屋に行った。
うわぉ。すごい。
お部屋は広々とした畳のお部屋になっていて、窓からは山と川が見えている。
テーブルの上にはお菓子も置いてあった。
ひな「五条先生、これ食べてもいいですか?」
五条「今はダメだ。後にしろ。それは温泉に入る前に食べるもんだ」
と言われて、お菓子は我慢。
五条「ひな、ちょっと着替えるからこっち見んなよ」
ひな「は~い」
と言いながら、テーブルに置いてある物を物色する。
これはお茶か~
あ、これってこの旅館の案内かな?
と冊子を開くと、館内図などが載っていた。
温泉は2階にあって、ええっと……
わぁすごい!アイス無料サービスとかある!これ絶対食べよっと!
あとは、これは……夜鳴きそば?
夜鳴きそばも無料って書いてるけど……
ひな「ねぇ、五条先生?夜鳴きそばってな…………うわぁぁぁあ!!」
夜鳴きそばって何?
そう聞こうと思って振り向いたら、五条先生の上半身が裸……
五条「おい、こっち見んなっつったろ……」
ひな「ごごごごごめんなさい!!」
心臓のバクバクが止まらない……
五条先生の裸を半分見てしまった。
家にいても見たことなかったのに。
とりあえず、顔の向きを元に戻して手で覆う。
はぁ、ドキドキした……。
というかまだドキドキしてる……。
心臓が騒がしい。
というか、今日と明日ってこの部屋で着替えるのか。
じゃあ、五条先生に着替えてるところ見られちゃうかもしれないの!?
えぇー!!
って考えてたら、
五条「ひな。もう着替えたから大丈夫だ。お前は何顔を真っ赤にしとるんだ。上半身見たくらいでそんな騒ぐな……俺はひなの聴診する時騒いだことないだろ。だいたい、こっち見るなって言ったの聞いてなかったのか?いつも聞いてないのに適当に返事するな」
そりゃ、五条先生はお医者さんなんだから診察の時に騒がないでしょうよ。
でも、そういう五条先生だって今ちょっと顔赤いのに……
ひな「はい、ごめんなさい……」
五条「行くぞ」
と、スーツをビシッと着た五条先生の後をついて、再びロビーへと向かう。
夏樹「あ!!ひなの!!」
ひな「え!夏樹くん!!」
ロビーに降りると、夏樹くんがいて声をかけられた。
工藤「五条先生、ひなちゃん、おはよう」
夏樹くんの後ろには、工藤先生。
夏樹「ひなのも来てたんだな~!!」
工藤「何が『ひなのも来てたんだな~』だ。お前はひなちゃんが来るって聞いてついてきたんだろ」
え?そうなの?
わたしは夏樹くん来るの知らなかった。
夏樹「ちょ、ちげーよ。行きたいと思ったらひなのも来るってわかっただけだから。兄貴なに言ってんだよ」
あれ、いつの間にか夏樹くんが工藤先生のこと兄貴って。
前は兄ちゃんって呼んでたのに。
ひな「大人ばっかりだから夏樹くんいてうれしいよ」
夏樹「そ、そうか?」
工藤「おーい。お前らだって遊びに来ただけじゃないぞ。ちゃんと今日1日働けよ」
この勉強会は、先生たちが研究内容や病院で発生した珍しい症例なんかを発表したり、科目を超えて意見や情報交換をする場所。
そんなのに参加したって、もちろんちんぷんかんぷん。
だけど、何もしないと夕方まで暇を持て余すことになる。
というわけで、わたし……と、夏樹くんも。
資料を配ったり会場案内をしたりと、運営のお手伝いをすることになっている。
だから、今日は服装も一応制服で来た。
五条「ひな、俺ちょっと先生方に挨拶回りして来るな。時間になったら会場来るんだぞ」
ひな「はい」
工藤「俺も行って来るわ。夏樹、ひなちゃんの足引っ張らないようにしっかり働けよ」
夏樹「うっせー!」
と、五条先生も工藤先生も行ってしまったので、先に午前中の開会式とシンポジウムが行われる大きな会場に行った。
会場にはすでに先生や看護師さんがたくさん集まってる。
真菰「あ、ひなちゃん、夏樹くん!」
「「まこちゃん!」」
真菰「2人ともお手伝い頑張ってね!」
「「ありがとう!」」
今日ここに集まったのは100人くらい。
もちろん、今日も病院は開いてるので医師や看護師が全員集まるわけじゃないけど、偉い人や各科の主要な人、大学の人が集まって来てるみたい。
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