ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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お楽しみの温泉タイム

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ひな「五条先生!温泉っ、温泉っ!早く行きたい!」


五条「待て、ちょっと落ち着け。とりあえず制服脱いで浴衣に着替えろ」





部屋に戻って来て、やっと温泉に入れる!とウキウキしてるのに、すぐには行かないみたい。

五条先生に浴衣を渡されて、着替えようと思ったけど、

五条先生に見られたら恥ずかしい……。





ひな「あ、あの……」


五条「ん?」


ひな「ここで着替えるんですか?」


五条「どこで着替えるつもりなんだよ」


ひな「そうですよね……」


五条「俺はこっち向いて着替えるから、ひなはそっち向いて着替えろ。別に見ないから大丈夫だ」





と言ってくれたので、五条先生と背中合わせで急いで服を脱いで浴衣を羽織った。





あれ?

浴衣ってどっちが前とか決まってたよね。
それに帯ってどうやって結ぶんだ……?

こんなの着たことなくて全然わからない。





五条「着替えたかー?」


ひな「あ、ちょ、まだです!」





えっと、どうしよう。

五条先生着替え終わったみたいだけど、どうやって着たらいいのこれ?





五条「もういいかー?」


ひな「え、あ、ま、まだダメ!」


五条「はぁ?いつまで時間かかってんだよ。もう振り向くぞ?」


ひな「え!なんで!ちょ、まだダメ!!」





って言ったら、もう五条先生がすぐ後ろにいて、頭に手がぽんっと。





五条「浴衣の着方も知らんで、温泉から出たらどうするつもりだったんだ」





……うん、確かに。





ひな「すみません……」


五条「とりあえず、そっち向いたままで右が下になるように前を合わせろ。そしたらこっち向け」





と言われた通りに右、左と前を合わせてくるりと五条先生の方を向く。





ドキッ……





振り返ると、浴衣姿で腕を組んで仁王立ちする五条先生が。





浴衣まで似合うんだ……





そして、帯を手に取ると美しい手捌きでサッと帯を結び上げた。





ひな「わぁ、すごい」


五条「風呂出たら、とりあえず蝶々結びすれば良いから。後で直してやる」


ひな「ありがとうございます」





五条先生って本当に何でも出来るんだな。

できないことが何か知りたくなってくる。

ま、それはまた今度探そう。





ということで、





ひな「じゃあ、温泉に行きましょう!」


五条「だから待てって……そんな焦るな、ぶっ倒れるぞ。お茶とお菓子頂いてからだ」


ひな「え!お菓子食べていいんですか!?」


五条「あぁ。むしろ今食べろ」


ひな「やったー!」





と、五条先生が入れてくれたお茶を飲みながらお菓子を頬張った。





ひな「五条先生も本当はお菓子食べたくて仕方なかったんですね!」


五条「はぁ?バカか。こういうとこのお菓子は温泉に入る少し前に食うんだよ」


ひな「え?なんで?」


五条「温泉に入るとカロリー消費が激しいから血糖値が下がる。貧血も起こりやすくなる。そうならないように、こういうお菓子を食べて血糖値を上げるんだ。それから、水分とビタミンCを緑茶で補給する。覚えとけよ」





へ~。お菓子なんてただのプレゼントだと思ってたけど、医学的にも根拠があったのか……

さすがお医者さん。





結局、15分くらいお茶とお菓子でゆっくりしてから温泉に向かった。










「五条先生、お疲れ様です」
「五条君、お疲れ様」





温泉まで行く途中、五条先生はすれ違う人みんなから挨拶されてた。

五条先生より歳下の人なんていなさそうなのに、中には尊敬の眼差しを向けて会釈する人もいて、五条先生はやっぱりすごいんだなって思う。

そんなすごい人の隣にわたしがいるのがちょっと申し訳ない。



浴場に着くと、入口には"殿""姫"と書かれた暖簾が。





五条「ひなは先に髪も洗っとけな。ご飯の後もう1回入れるかどうかわからないから」


ひな「わかりました」


五条「40分くらいで足りるか?温泉は5分しか浸かっちゃダメだぞ」





え!短っ!





ひな「10分以内じゃないんですか!?」


五条「温泉は普通の風呂とは違う。身体に効き過ぎてのぼせるから、絶対5分以内にしときなさい」


ひな「はい……では、40分後にここで待っときます」





と、五条先生と別れて女湯に入った。










脱衣所でまずは髪をゴムで束ねて、帯を解いて浴衣を脱ぐ。

すると、明るくて広々とした空間のせいか、自分の身体の傷痕が目に入ってきた。





あ……

身体の傷見えちゃうな……





五条先生のおかげで傷痕はだいぶ綺麗になったけど、どんなに薬を塗ってもどうしても痕が消えないものもあって、それなりに残ってしまった。

大衆の場で脱ぐこともなくて気にしてなかったけど、こうして見るとやっぱり気になる。

そんな身体をサッとタオルで隠して、お風呂場に行った。



お風呂場には大きな露天風呂があってすごく気持ちよさそう。

とりあえず、先に髪や身体を洗ってしまってから、ゆっくりと露天風呂に身体を沈めた。





ふぁ~、気持ちいい~……!

極楽とはこういうことなんだ。





10月末の涼しい秋空の下で、あったかい温泉に浸かる。疲れなんてものは全部吹っ飛んでいく。





ほぇ~、気持ちいい~。





と目を閉じて浸かっていると、





「ひなちゃん!」





この声は……





ひな「まこちゃん!」


真菰「お疲れ様ひなちゃん。お風呂気持ちいいね」


ひな「うん!最高!」


真菰「温泉は初めて?」


ひな「はい!」





と、まこちゃんとしばらくお話してたら、





真菰「五条先生も今お風呂入ってるの?」


ひな「あぁっ!!」





まこちゃんから五条先生という言葉を聞いて思い出した。

時計を見ると8分経ってる。





ひな「5分しか浸かったらいけないって!8分経っちゃった!」





慌てて温泉から出ようとすると、





真菰「あ、ひなちゃん待って!!」





なぜかまこちゃんに止められて、





真菰「ゆっくり上がらないと倒れちゃうから。とりあえず、そこの石のとこに腰掛けてみて」





まこちゃんに言われた通り、ゆっくりと立ち上がってお風呂の縁に腰掛けた。





真菰「どう?大丈夫そうかな?フラフラしない?」


ひな「はい、今のところ」


真菰「そしたら、またゆっくり立ってお風呂出ようか」





と、まこちゃんも一緒に上がってくれた。



浴衣に着替えると、まこちゃんが帯を結んでくれて、髪を乾かして、そのままお団子結びまで。





真菰「ひなちゃん、大丈夫?のぼせてない?」





結局、まこちゃんがずっとついてくれて一緒に浴場を出た。





五条「まこちゃんと一緒だったのか。心配したぞ」





出たところではすでに五条先生が待っていた。





ひな「ごめんなさい。ちょっと時間を忘れて、温泉に8分ほど浸かってしまって……」





言うと、五条先生の表情が一気に変わる。





五条「倒れたのか?」


ひな「いえ、倒れてはないです」


真菰「すみません、五条先生。私がひなちゃんに話し過ぎてしまったんです。でも、ひなちゃんが自分でちゃんと気づきましたし、ゆっくり腰掛けながら温泉から出て、シャワーで身体も十分に流させました。上がってからも特にフラつきなどの症状は見られません」





と、まこちゃんがわたしが怒られないように看護師の顔して五条先生に説明してくれて、それを聞いた五条先生も表情が優しい五条先生に戻った。





五条「そうか。まこちゃんありがとう。帯まで結んでくれたんだな」


真菰「いえ。それでは、私は一度部屋に戻りますね!また後ほど」










まこちゃんと別れて、わたしたちも部屋に戻ろうと歩いてると、





夏樹「ひなのー!」





と、夏樹くん。

手にはアイスキャンディーを持ってる。





ひな「あっ。いいな、アイス」


夏樹「かわいい……」


ひな「え?」


夏樹「あ、いやっ……ほら!アイスそこにあるぞ。無料だから食べ放題。俺2個目。ひなのも食べなよ」





え、もう2個目食べてるんだ……。

わたしも食べよっと!

って、ご飯前にわたしアイス食べていいかな?

五条先生が隣にいるのに、はたして許されるのだろうか……





ひな「五条先生、アイス……」


五条「ひな後でお腹壊すだろ」





うん、そんなことを言われると思った。

でも、





ひな「せっかくだし食べたいなぁ……」





って呟いてみたら、





五条「じゃあ、少しだけな」





と、お許しが出た。

五条先生に取ってもらって、袋から出してもらって、





カプッ……





ひな「ん~!冷たくて美味しい!」





お風呂上がりのほてった身体にアイスの冷たさが沁みる。

夢中でカプッとペロッとしてると、





五条「ひな、ストップ。そこまで」





と、棒が見え始めたくらいで五条先生に取られた。

そしてそれを五条先生がガブッと……





あぁ……わたしのアイス……

もっと食べたかった…………





夏樹「ひなのかいわいそうに」





言いながら、目の前で3つ目のアイスを食べる夏樹くん。



夏樹くん嫌い……


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