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治療再開①
しおりを挟む*ひなのside
ピピッ……
真菰「ひなちゃん、体温計取るね。……うん、36度1分!次は血圧測るね」
あれからどのくらい経ったのかわかってない。
けど、たぶんもう2週間近くは経つんだろう。
とにかく熱が下がらなくて発作も起きて、ずっとしんどかった。
一時はICUにも入れられて、また危険な状態になってたみたいだし、病室に戻ってきても熱が下がらなくて発作も何度かあったけど、やっと落ち着いてくれて、いつもの日常が戻ってきた。
コンコンコン——
藤堂「ひなちゃん、おはよう」
ひな「おはようございます」
藤堂「お、ひなちゃん昨日より食べれたね。えらいえらい」
朝の回診の時間、今日はお粥を半分食べれたから、藤堂先生が褒めてくれてうれしい。
藤堂「お熱もないね。よし、もしもししようか。すぅはぁーしてね」
熱が出てる間、わたしが弱りすぎてたせいか、先生たちはみんな小さい子に話すみたいな言葉遣いになってた。
藤堂先生、まだそれが抜けてないみたい。
藤堂「うん、胸の音も綺麗になってきたね。身体はどう?まだフラフラする?」
ひな「うーん、ベッドから降りる時とかに少しだけ。でも、じっとしてれば大丈夫です」
藤堂「そっか。体力が落ちちゃったからね。それに貧血もすぐに治せないから、また少しずつ頑張ろうね」
ひな「はい」
コンコンコン——
五条「ひな、おはよう。具合どうだ」
あ、五条先生……//
藤堂先生の回診中、五条先生が来てくれた。
しんどい間、たくさん五条先生の顔を見た気がするのに、ずっとぼーっとしてたから記憶が曖昧。
熱が下がり出してからは、五条先生来なかったから久しぶりに会う。
ひな「もう大丈夫です。ご飯も食べれます。たくさん迷惑かけてごめんなさい」
五条「なんで謝るんだ。りさ先生も言ってくれただろ?今回のことは俺たち病院側の責任だ」
熱が下がって食事を取れるようになったころ、りさ先生が病室に来て、姫島さんのことを私の責任だってすごく謝ってくれた。
その後は蒼先生まで来て、病院長として申し訳なかったって。
あんな風に頭を下げられるなんて、することはあってもされることはなくて少し戸惑った。
ひな「でも、わたしが屋上に行かなかったら、薬もお水で飲めてたら、こんなことになってなかったかもしれないから……」
藤堂「ひなちゃん、今回だけは本当に気にしなくていいよ。何度も言うけど、僕たちの責任だからね。でも、もし次ひなちゃんが脱走したら、その時は怒る(笑)」
ひな「は、はい……」
うぅ……そりゃそうだよね。
ひな「あ、そういえば、姫島さんは本当に辞めることに?」
五条「あぁ。あいつがひなにしたことは下手すりゃ殺人行為だ。もう正式に解雇されたぞ」
ひな「そっか……」
五条「どうした、まだ怖いか?もうひなに会うことなんてないから大丈夫だぞ」
ひな「ううん、違う。姫島さん、わたしのせいで看護師辞めることになったなと思って」
藤堂「それはひなちゃんが気にする必要ないよ」
ひな「だって、どんな理由でも、一生懸命勉強して、国家試験も合格して、看護師になって、たくさんの患者さんを看護してきたはずだから。その中には、姫島さんに助けられた人もいると思うんです」
藤堂「ひなちゃん……」
ひな「ほら、アニメの柱にだっていたでしょ?一生を添い遂げる殿方様を見つけるために柱になった剣士が。そんな理由だけど、そんな理由で一生懸命努力して強くなって鬼を倒して、みんなを守ってたでしょ?人が何かをしようとする時の原動力は、人それぞれだから。まだつらいし許せないけど、それを糧に頑張ってきた人の全てを否定することはできないなと思っちゃって。わたしだって、先生たちを糧にすることあるし……」
***
*五条side
五条「ひな……」
ひなの心はどこまでも澄み切ってる。
悪意なんてもんは存在してなくて、どこまでも馬鹿みたいに純粋で真っ直ぐ。
そして、いつの間にか少し大人にもなってる。
そんなひなが愛おしくて愛おしくて仕方ない。
気づけば、またひなのことを抱きしめてた。
ひな「ご、五条先生……っ//」
相変わらず照れた声で、顔は見えてないがきっと真っ赤なんだろう。
ぎゅっとした瞬間、微かにピクリとして固まって、なのに、少しして迷いながら背中に腕を回してくる。
かわいすぎて仕方ない。
五条「そんな風に考えられるんだな。ひなは良い子だな。ひなみたいな良い子は見たことない」
ひな「そ、そんなことないですっ……//」
五条「早く元気になって欲しいな。俺は、またひなと家で過ごしたいんだけどな」
ひな「それはわたしも……早く退院して五条先生のご飯が食べたいし、学校にも行きたいです」
五条「うん、そうだな。そのためには……また治療頑張らなきゃな……」
ひな「……え?」
五条「治療。もう前回の治療から3週間経ってるんだ。さすがに治療しないと、ひなのお腹が持たない」
今のひなに、治療という2文字がどれほど辛いのかはわかってる。
治療中にアイツのことがフラッシュバックする可能性だってある。ひな自身もそれは感じてるはず。
だけど、ひなの身体を考えると心の準備をさせてあげる余裕もない。
五条「後で宇髄先生が来るからな。検査してそのまま治療もしてしまおう」
ひな「え……?きょ、今日、治療まで……?」
抱きしめるひなの身体が震えてる。
きっと怖いんだろう。
だけど、ひなに考える余裕を与えたくなかった。
これで治療を明日にしてしまうと、ひなの恐怖も緊張も時間とともに増えると思ったから。
黒柱のみんなで話し合って、直前に言うことにした。
五条「嫌なのも怖いのもわかってる。でも、ひなの身体優先なんだ。今回は心の準備をさせてあげる時間もない。ごめんな」
ひな「そんな……」
声も震えてる。
背中に回す小さな手もギュッと白衣を掴んでる……
***
*ひなのside
藤堂「ひなちゃん、今日の治療は僕も付いてようと思ってるんだけど、不安なら五条先生に付いててもらう?」
……どうしよう。
五条先生が一緒にいてくれたらすごく心強い。
だけど、治療で変な声出たら、五条先生に聞かれるの恥ずかしい……。
一緒にいて欲しいけど、一緒にいて欲しくない……
五条「ひな?」
"トクン"
ひな「……はい」
答えを出せずにいると、五条先生に名前を呼ばれた。
相変わらず、名前を呼ばれただけで胸がトクンとなる。
五条「迷うなら、藤堂先生と宇髄先生と頑張っておいで」
ひな「え……?」
なんで?
五条先生、一緒にいてくれないの……?
五条「ひな思春期なんだろ?俺に見られて、恥ずかしくなったら集中できんだろ」
思春期……
思春期がどういうものを指すのかまだわかってないけど、家で五条先生に初めてその言葉を言われた時のあの聴診の恥ずかしさは、思春期のせいではないと思う。
あの時すでに、わたしは五条先生が好きだったんだって、そんな感じがする。
でも、そっか。わたしが恥ずかしいの気にしてくれてるんだね。
嫌われたわけじゃなくてよかった……。
そう言われたら、確かに五条先生いない方が治療に集中できるかもしれない。
ひな「恥ずかしいから……その方がいいかも……」
五条「ん。じゃあ決まりな。その代わり、治療終わったら待ってるから」
ひな「五条先生待っててくれるの……?終わったら会える?」
五条「あぁ。待ってるよ」
"トクン"
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