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First kissと…①
しおりを挟むそれから、わたしが少し落ち着いたところで、五条先生が温かいハーブティーを淹れてくれて、ベッドに入って一緒に飲んだ。
ひな「ごちそうさまでした」
五条「もう一杯飲むか?」
ひな「ううん、もう大丈夫です」
五条「ん」
涙もすっかり上がって、空いたカップを五条先生に渡し、五条先生がそれをサイドテーブルに置く。
そして、
五条「……そろそろ寝るか」
と、部屋の照明をまたひとつ落とす五条先生に、
ひな「五条先生……」
五条「ん?」
ひな「わたし、まだ寝たくない……」
後ろからぎゅっ……と、抱きついた。
五条「っ、ひなっ……どうした、また急に……」
五条先生は少し驚いたような声で、お腹に回るわたしの手をそっと掴む。
あっ、待って……
ギュッ……
五条「ひなっ……?」
わたしは腕を解かれてしまわぬよう、もう一度力を込めてしがみつき、
お願い、待って……
もう少しこのまま……
ひな「まだ、幸せな時間……終わって欲しくない…………」
部屋の中が薄暗く、オレンジに染まれば染まるほど、切なさがどんどん込み上げる。
ドライブして、街歩きして、温泉に入って、美味しいもの食べて、プレゼントをもらって……。
これまでの人生で1番楽しく幸せだった今日という日が、五条先生と過ごす今この時間が、どうしても終わって欲しくない。
ずっと、この幸せに浸っていたい……。
だから、時間を止めるように五条先生を引き留めた。
それが、五条先生のスイッチを入れることになるだなんて、当然、知る由もないままに……。
五条「……いいんだな?」
ひな「えっ?」
少しの間、五条先生が何も言ってくれなくて、
どうして黙っちゃったんだろう……
こんなわがままダメだったかな……
もう寝なさいって怒られるかな……
と、不安になってたら、五条先生が何かをボソッとつぶやいた。
だけど、この大きな背中が壁になって聞き取れず、なんて言ったのか聞き返そうとしたら、
五条「……俺も」
今度ははっきりそう言って振り向くと、
五条「俺も、まだ寝たくないし、終わって欲しくないっ……」
って、勢いよくわたしを抱きしめた。
と、思った次の瞬間……
ふわっ……
ぇっ……?
わたしは五条先生に押し倒された。
「「…………」」
何がどうなったのか、一部始終はわからない。
ぎゅっ……
と、五条先生が抱きしめてきたのは確か。
でも次の瞬間には、
ふわっ……
と、身体が浮いたような感じがして、
音もなく、衝撃もなく……
瞬きすらしてないのに、背中がベッドに預けられてて、五条先生の顔が目の前に。
あまりに一瞬のことで、心臓もぽかーんとしてしまい、鼓動は早くも強くもならぬまま。
わたしはただ物理的に、五条先生を見つめ返す。
すると、
五条「なぁ……ひな……」
ドキッ……!!
耳にするだけで身体が疼いてしまいそうな、
甘く、優しい……
吐息がかった声を落とされて、初めて聞かされるその甘美な声に、黙りこくってた心臓が大きく跳ね上がった。
そして、呆気に取られていたわたしの意識はすべて五条先生のもとへ……。
五条「もうひとつ、俺からプレゼントしていいか……?」
ひな「……ぇっ?」
わたしを見つめ下ろす五条先生は、とんでもない色気を纏ってる。
聞いたこともない声で名前を呼ぶし、見たことない顔してわたしを見るし、その目だって、見たことない目をしているし。
ドキドキして仕方なくて、頭だってクラクラしそうなのに、こんな状況でプレゼントだなんて言われても……
と思ったら、
五条「ひなにあるもの、プレゼントしたい……」
言いながら、五条先生は目を伏せるようにわたしの目から視線を逸らした。
五条先生……?
あんなにわたしの瞳を捉えて離さなかったのに、急にどうしたんだろう……と、五条先生の視線を追うようにわたしもスッと目を伏せる。
すると、視線の先にあったのは五条先生の唇で、五条先生の視線の先には、わたしの……
ぁっ……
五条先生が言ったプレゼントの意味。
甘く見つめてくる瞳の奥に、どことなく覚悟が感じられたのはそういう……
すべてを察してしまったわたしは、当然大パニック。
どうしよう、どうしよう……。
と、頭では思うけど、もちろんどうすることもできず。
ゆっくり、少しずつ降りてくる五条先生の唇をひたすら目で、追いかけて、追いかけて、追い続けて……
自分の鼻が視界に入って、もうこれ以上は追えないと、そっと目を閉じた、その瞬間……
「「————」」
わたしの唇に五条先生の唇が重なった。
……どのくらい触れていたのか。
そんなに長くはないけれど、決して短くもない。
唇が離れていく感覚にゆっくりと目を開くと、
ドキッ……
すぐに五条先生と目が合って、優しく微笑んでくれた。
と思ったら、
ぁ、ぁゎ……
ぁゎぁゎ……
あゎわわわ!!!
また、五条先生の顔がゆっくりと近づいてきて、
ひな「ま、待って……」
今度はギリギリのところでなんとか声を出せたけど……
ドキッ……!!!
は、ぁ、ゎゎ……はぁゎゎわわっ/////
五条先生の鼻とわたしの鼻が、触れるか触れないか……のところで止まってしまい、
五条「止めるなよ……」
唇も触れるか触れないか、スレスレのところで囁かれ、キスよりもこの寸止めの威力にわたしの心臓は過呼吸に陥った。
すると、
五条「ひなのせいだぞ……」
ひな「ぇっ……?」
五条「ひなが可愛くて、可愛いことばっかりしてくるから、もう我慢できなくなった。だから、俺にひなのファーストキス、今日は何度でも奪わせて……」
って、五条先生がまた唇を重ねようとするので、
ひな「ぁ、待っ、ぃゃ……」
少し顎を引くと、
五条「嫌か……?」
え?
五条「俺とキスするの、本当に嫌か……?」
憂いを帯びた表情で言われ、
ち、ちがう……っ。
首を横にぶんぶん振り、
ひな「キスしたい……。五条先生とキスできて、わたしすごくうれしい。でも、ドキドキし過ぎてよくわかんなくて……は、初めてだから……」
と言うと、
五条「だからそんな可愛いこと言うなって……俺も嬉しい」
ひな「……っ!?///」
顎をクイっと、さっきよりも長いキスを落とされた。
五条「……」
ひな「……」
五条「……いつまで息止めてんだ」
ハッ……!!
それから唇が離れて、また目が合って、一生懸命見つめ返していたらそう言われて。
自分の息が止まっていたことに気づき、鼻からそーっと息を抜く。
五条「キスの間ずーっと息止めて……キスの味、まだわかってないだろ」
ドキッ……
言いながら五条先生に唇を親指でなぞられて、わたしはドキドキ……またまた息が止まってしまう。
そして、
五条「そんなに緊張しなくても。まだ、寝たくなかったんだろ……?」
と、悪戯に言いつつ、愛しむようにわたしの唇を何度かなぞると、
五条「なぁ、ひな……」
一拍置いて、
五条「今日、少ししてみるか……?」
と。
ぇっ……?
えぇっ!?
五条先生から放たれた言葉に、声も出せず目を見開いた。
瞳が泳ぎに泳ぎまくっているのが自分でもよくわかる。
その言葉の意味をもうちゃんと理解できるもんだから、
ひな「ぁっ、ぁゎ……あっ……あわゎ……っ」
誤魔化したくて何か喋ろうにも逆効果。
まったく動揺を隠せない。
すると、
五条「ひな」
五条先生はさっきまでの色気を一旦消して、
五条「するって言っても、最後までしようとは思ってない。途中まで、ひなができるところまでしたらいい。そう思って、今日はゴムもわざと持って来なかった」
落ち着いた声のトーンと優しい表情で、わたしを安心させるようにそう言った。
ゴムがないってことは……挿入は絶対にない。
それがわかって少しホッとしたものの、この先に待つのはあまりにも未知な大人の世界。
だから、緊張や不安の波はどうしたって止めどなく押し寄せてくる。
それに、五条先生わざと持って来なかったって……
それはつまり、五条先生はこういうことになると思っていたわけで、というかそのつもりだったわけで、どうして夜になるにつれて部屋を少しずつ暗くしていたのか、こんなムードたっぷりな空間を作り上げたのか、色気たっぷり……というか、正直エロくて、フェロモン垂れ流しって感じだったのか……。
それは全部、わたしと今夜こうするつもりだったから……。
と、パニクる頭でそんなことだけ冷静に考えていたら、
チュッ……
突然、音のなるキスをされ、
ビクッ……!
意識が逸れていたから、ドキッというよりビクッと……。
そして、五条先生は決して体重をかけないようにわたしを抱きしめて、
五条「大丈夫。怖いことないから、ひなは何も考えずに力だけ抜いてたらいい。俺が全部教えるから……」
頭を撫でながら耳元で囁くと、
耳に、首筋に……
優しく啄むようにキスを始めた。
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