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検査の結果
しおりを挟む検査の結果、りさの処女膜は完全に塞がってしまっていることがわかった。
お腹の痛みも生理によるものだが、経血が外に出られないため、生理が始まったことに気づけなかったのだ。
このまま放置しておけば、中で経血などがどんどん溜まり病気になる可能性がある。
まずは手術で処女膜を切開し、すでに溜まったものを綺麗にしなければならない。
さらに、りさの処女膜はもともと分厚くて硬い。
手術で一度切開しても、そのまま放置すれば戻ってしまう可能性もある。
そうなると、性行為が上手くできなかったり、出産が難しくなるかもしれないため、定期的にほぐしていく必要がある。
けれど、りさはまだ中学生。
ただでさえ身体が弱いのに、デリケートな問題を受け入れ、心身ともに治療に耐えられるのか……。
3人は頭を抱えていた。
蒼「とりあえず、手術はなるべく早くしよう……。その後の治療は、りさが高校生になるまで待てないかな?蓮、どう思う?」
蓮「うーん、難しいね。本来なら術後の治療もすぐに始めていくんだけど……りさの身体の状態と精神面を考えると、時間をかけて始めるのもひとつだね」
蒼「豪の意見は?」
豪「俺も、今りさに治療するのは避けた方がいいと思う。それで、この話りさにはどう伝えるつもりなんだ?」
蒼「明日の朝、俺からりさに話すよ。手術の詳しい説明とかは、また改めて蓮からしてくれるか?同席するから」
蓮「わかった」
蒼「じゃあ、そういうことでよろしく」
***
コンコンコン——
りさ「はい」
蒼「りさ、おはよう」
翌朝、蒼はいつも通りの笑顔でりさの部屋に入った。
蒼「お腹どう?まだ痛い?」
りさ「ううん。今は大丈夫」
蒼「そうか、よかった。りさ、先生少しお話があるんだ」
りさ「……検査の結果、悪かったの?」
りさは何か察したように声を震わせ蒼に尋ねる。
そして、ベッドに腰掛けた蒼は、りさの手をそっと握った。
蒼「りさ。先生、これから大事な話をするよ。大事なりさの身体の話。ゆっくり話すから、しっかり聞いてくれる?」
りさは怖かった。
検査の結果が悪かったに違いない。
蒼から何が伝えられるのか、聞くのが怖くて仕方ない。
でも、蒼の目は真剣そのもので、どこか悲しげにも見えて、聞きたくないなんてわがままはとても言えなかった。
コクっ…
と頷くりさを見て、蒼はゆっくり話始めた。
蒼「まず、昨日の検査で、りさのお腹の痛みは生理が原因だったことがわかったんだ」
りさ「え……?だけど、まだせっ……せぃ、り……になったことないよ……?本当だよ……」
蒼「うん、それは先生もわかってる。りさはまだ血が出てきたことはないはず」
りさ「じゃあどうして?血が出るんでしょ……?」
蒼「それがこれから話す一番大事な話でね。実は、りさは生まれつき処女膜が完全に塞がっていることがわかったんだ。そのせいで、生理の血もお腹に溜まって痛みが出てたんだ」
りさ「しょじょ……?ってなに……?生まれつきって……今までわからなかったの……?」
りさはすでに混乱していた。
なにか大変なことが起こってるとは感じながらも、まったく話についていけない。
蒼「りさ、落ち着いて聞いて。処女膜って聞いたことない?」
りさは首を横に振る。
中学2年生、そんな話もわかってくる年頃だろうが、純粋なりさには見聞きしたことがなかった。
蒼「性行為、つまり、sexをしたことがない女の子を処女って呼んだりするんだけど、女の子はみんな処女膜っていうのが膣の入り口にあって、初めてsexした時に破れるものなんだ」
先生、さっきからなに言ってるの?なんの話……?
蒼の口から次々と出てくるデリケートな言葉に、りさは恥ずかしさとついていけないのとで、パニックになり涙を流し始めた。
そんなりさを蒼は抱きしめてあげたかったが、話はまだ終わっていない。
ここで抱きしめるとりさの気が緩んでしまうと思い、淡々と、けれど優しく話を続けた。
蒼「ただ、膜といっても通常は穴があいていて、そこから生理の血が外に出てくるようになってる」
りさはもう頷くこともできず、ただただ蒼の話を聞いている。
蒼「でもね、りさの場合は、これが完全に塞がってしまってる状態。処女膜はお母さんのお腹の中にいるときに出来るものだから、塞がってるということは生まれつきなんだ。そして、これは大きくなってから、りさのようにお腹が痛くなったり、生理が始まらなくて気づくことが多いんだよ」
りさ「っ……っく……ぐすん……っ……」
りさの顔はすっかり涙に濡れていた。
蒼「そしてね、このまま放っておくと病気になる可能性もある。だから、すぐに手術して治療していく必要があるんだ」
りさ「ぅ……うぅ……ぅわぁ~んっ……っ!」
静かに涙を流してたりさだったが、手術という言葉を聞き、堪えきれず声を上げて泣き始めた。
そして、蒼もここでやっとりさを抱きしめた。
蒼「りさ……ごめんな。つらい話だったな……。よくちゃんと聞いてくれたね。ありがとう。えらかったよ……」
胸に顔を埋め泣きわめくりさの姿に、蒼は胸が苦しくて仕方ない。
こんなかわいくて純粋な、思春期もまだのような女の子に……
と、りさをぎゅっと抱きしめ頭を撫でながら、りさを想った。
そして、そんなりさの泣き声は病室の外にまで聞こえていて……
豪「……つらいな。りさだから……どうしても、患者だと簡単には割りきれない……」
蓮「豪兄でさえそう思うんだ。俺たちにとってりさは本当に特別。なんとか守ってあげたいな、つらい思いさせたくないよ……」
りさのところへ行ったきり、なかなか戻ってこない蒼の様子を見に行こうと、豪と蓮はりさの部屋の前に来ていた。
ただ、部屋から聞こえてくる蒼とりさの話に、とても中には入って行けず。
2人もまた、胸が締めつけられるような思いの中、医局に戻っていった。
2、30分経って、ようやくりさの涙が落ち着いてきた。
りさ「……っ……ぐすん……」
蒼「りさ、ちょっと落ち着いてきたか?」
りさ「……こわぃ」
りさは小さく震えた声でつぶやいた。
蒼「うん。怖いよな……怖くて当たり前なんだよ。でもね、りさ。先生がついてるから大丈夫。豪と蓮だっているよ。自分で言うのもあれだけど、こんなに腕が良くてりさのこと思ってくれる先生が3人もいるんだ。なにも心配することないよ」
りさには頼れる3人の先生たちがついてる。
そのことは、少しだけりさの心を軽くしてくれた。
***
蒼がやっと医局に戻って来て、
豪「蒼、おつかれ」
蓮「蒼兄、おつかれさま」
豪と蓮はすぐに声をかけた。
豪「コーヒー飲むか?」
蒼「あぁ。ありがとう」
豪はコーヒーを入れ、3人でソファーに座り込む。
蓮「蒼兄、つらかったでしょ。りさ、泣いてたね…」
蒼「蓮、お前聞いてたのか?」
蓮「蒼兄がなかなか戻ってこないから、豪兄とりさの部屋の前まで行ったんだよ……」
蒼「そうだったのか」
蓮「りさは?落ち着いたの?」
蒼「あぁ、なんとか。泣き疲れて寝たよ」
蓮「混乱しただろうしね」
蒼「まさか、『処女ってなに?』なんて……そこから聞かれると思わなかったな。今どきの中学生はそういうこと知らないのか?」
蓮「ははっ。蒼兄なに言ってんのー。そんなのりさが無垢なだけに決まってるでしょ~」
蒼「そうか。俺がりさを大人にしちゃったかぁ~」
豪「おい、蒼なに言ってんだ?りさはまだ純粋な女の子だぞ。大人になんか……」
蓮「はははっ!豪兄は本当にりさが好きなんだから。りさがお嫁に行ったらどうなるのやら」
豪「うるさいぞ、蓮」
3人は互いを慰めあうように、つらさを紛らわすように、少しの間、兄弟水入らずの時間を過ごした。
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