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もう限界
しおりを挟む8月のお盆前。
学校は夏休みに入ったが、りさは夏期講習を受けるために毎日学校に通っていた。
そして、この日は夏期講習の最終日。
担任「みんな、学校での夏期講習は今日で終わるけど、夏休みにどれだけ勉強できるかが勝負だから、家でもしっかり頑張るようにな!」
「「はーい」」
夏期講習が終わり、みんなは束の間の解放感を味わいながら帰っていくが、りさはなんだか暗い表情で様子が変だった。
これから治療行きたくないな……。
生理が来たって言っても、2週間前にあったからさすがに嘘ってバレるよね。はぁ……。
今日は治療の日で、りさはこれから病院に行かないといけないが、いつも以上に行きたくない……というより、もはや治療から逃げ出したくなっていた。
いくら治療とはいえ、やはり片想いする相手に指を入れられ感じるというのは、自分には興味なくただの遊び相手として抱かれるような、心無いsexをされているのに、自分だけが満更でもなさそうにしてしまっているような……。
りさはそんな虚しさを感じてしまっており、胸が締めつけられるほど苦しかった。
加えて、ただでさえ毎日の勉強の疲れが出始めているのに、治療の後はぐったりとなるので勉強も捗らない。
今のりさには、二重にも三重にもストレスになっていた。
コツ、コツ、コツ……
学校を出て、病院の方に重い足取りで歩き出すりさの周りには、まるでローファーの音だけが響き渡っているように、りさは自分の殻に閉じこもってしまっていた。
もし治療から逃げたら、少しは楽になるのかな……。
でも、そんなことしたら先生たち怒るよね。
だけど、もう限界。
解放されたい……。
りさの心はもうすでに限界がきている。
先生たちの怒った顔や困った顔を思い浮かべるが、もうそんなこと気にならないくらい、りさはつらい苦しい気持ちが強かった。
コツ……コツ……
"ぷつん"
そしてついに、りさの中で何かが切れる音がした……。
りさ「……」
りさはその場で足を止め、向きを変えて病院とは反対の方へ歩き始めた。
りさが治療をサボるのは初めてだ。
それも、先生たちに何も言わずにだなんて考えられない。
けれど、それほど限界だったりさは、涙を流すこともなく歩き続けた。
とはいえ、すぐにりさはどこへ行けばいいのかわからなくなり迷いだす。
どうしよう。ケホケホッ。
先生たちのことだから、わたしが治療に来ないってなるとすぐに探し始めちゃう。
家に帰るわけにも行かないし、どこか見つからないところにいかないと……。
20分ほど歩き続けて、真夏の太陽の下で暑くて足も疲れはじめたりさは、近くの図書館に行くことにした。
図書館なら広いし、自習室なら勉強もできるし、ここにいるとは思わないよね……。
本当ならもう病院に着いてるころか。ケホッ。
……ケータイの電源は切っとこう……。
図書館に入ったりさは、ケータイの電源も切ってしまい、治療のことから気を逸らすように勉強をやりはじめた。
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