りさと3人のDoctors

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生理の相談

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——1ヶ月後





夏休みも明けた休日の昼間。

また以前のように毎日猛勉強に励むりさは、机に向かって今日も勉強していた。





いたたた……。

あれ、もしかして薬切らしてる……?





今朝生理が始まったりさは、生理痛がひどくなり出したので鎮痛剤を飲もうとするが先月で切らしてたようだった。

ラッキーなことに蓮が休みで家にいるので、りさは蓮の部屋に向かった。





コンコンコン——





蓮「は~い?」


りさ「にぃに、ちょっといい……?」


蓮「ん~、りさどうしたの~?」





書棚の整理をしていた蓮は、りさが来てすぐに手を止めてくれた。





りさ「あのね、今日生理来たんだけど、生理痛の薬切らしちゃってたみたいで……にぃに薬持ってるかなって」


蓮「予備があるはずだからちょっと待ってね。りさベッド上がっていいから横になってな?つらいでしょ?」


りさ「ごめんねにぃに。ありがとう……」





りさはお言葉に甘えて、蓮のベッドで横になった。





このベッド、にぃにの匂いで落ち着く……。





蓮「えぇーっと、りさにいつも渡してる薬は……これか!」





いろんな薬が入った箱から、蓮はいつもりさに処方してる鎮痛薬を見つけた。

薬を見つけた蓮は、すぐにりさに飲ませてあげようと、部屋に置いてる小さな冷蔵庫から水を取り出した。





蓮「りさ、体起こせる?」


りさ「うん……うぅ、いたた……」





りさは体を起こしてベッドに座り、蓮から水と薬をもらった。





りさ「……ゴクっ。にぃにありがとう……」





そういうりさの顔色は悪く、今は相当痛みに耐えてるところだと蓮にはわかった。





蓮「りさ、もっかい横になろう。薬効くまでここにいていいから……」


りさ「うん……ゔぅ……」





もう一度、蓮のベッドに横になるりさは、海老のように丸まってお腹を押さえて顔を歪める。





蓮「お腹が1番痛い?」





頷くりさのお腹の手をどかし、まるで次々とやってくる痛みの波を逃すように、蓮は優しくお腹を撫でてくれた。





蓮「りさ、また病院でお薬出してあげるからね。いつもなるべく切らさないように、使い切る前にもらいに来ていいんだよ?痛くなる前に飲めるようにしとかないと……」


りさ「はい……それにしても、にぃにの手魔法みたい。痛いのマシになる」


蓮「ははっ。そう?りさ、痛い時に息も止めちゃうんじゃなくて、ふぅ~って細く長く吐いてごらん」





りさは蓮のアドバイス通りにふぅ~っと細い息を長く吐くよう繰り返した。





りさ「ふぅ~……すぅー、ふぅ~……」


蓮「うん。そうそう。上手にできてるよ。そうしてる方が痛みが逃げてくれるからね」





蓮はまるで陣痛に耐える妊婦さんみたいにりさを介抱する。





りさ「なんか、赤ちゃん産むみたいだね……」


蓮「まぁ、陣痛も生理痛に似てるっていうからね。その延長というか、もっと何倍にも痛くした感じ?って、にぃには医者なだけで男だからわかんないけど……」


りさ「そんなの聞いたら怖くて余計に痛くなっちゃう」


蓮「ははっ。大丈夫だよ。世の中のお母さんはみんな乗り越えてるわけだし、それに今は無痛もあるからね。いずれにせよ、りさが赤ちゃん産むことになったら、にぃにがいるから大丈夫っ!」










2、30分ほどして痛みがおさまってくると、りさはある相談をした。





りさ「にぃに?あの、実は生理のことで相談があるの……」


蓮「りさが自分から話すなんてえらいね。どうしたの?」


りさ「あのね、最近はあまりズレることなく毎月生理があるんだけど、このままいくと、センター試験に被っちゃいそうで……」


蓮「あ~、そうかちょうど月の中頃だもんね。試験で集中できないのはたしかにかわいそうか……そうだな、薬で生理日をズラす方法があるんだけどそれやってみる?」


りさ「薬って点滴とかするの……?」


蓮「ううん、大丈夫大丈夫。普通の飲み薬だよ。とりあえず、薬渡す時に詳しく説明してからどうするか決めようか。次の治療の時でいいから、終わったらにぃにの診察室おいで」


りさ「うん、わかった」










***



そして、生理が終わって2週間ぶりに治療を受けた後。





蒼「りさ、このあと蓮のとこ行くんだよね?」


りさ「うん。生理がセンターと被りそうだから相談したの。今日は詳しい説明とかしてくれるって」


蒼「自分からちゃんと相談してきたって蓮褒めてたよ。ちょっとずつしっかり者になってきて、えらいなりさ」





蒼はりさの頭をわしゃわしゃとなでた。

やめて~と言いつつ、りさは褒めてもらってうれしそうにしてる。





蒼「そしたら行くか。普通に行ったら外から回らないといけないから、診察室まで一緒に行ってあげるよ」


りさ「ありがとう」





蒼は蓮にこれから行くことを連絡して、2人は一緒に診察室を出た。

そして、隣のフロアの産婦人科に通じる扉を、蒼は首からぶら下げてる身分証をかざして開けてくれる。



蓮の診察室前につくと、少し緊張してるのか、りさの表情が固まっていた。





蒼「りさ、一緒についててあげようか?」


りさ「……ううん。にぃにだし、ひとりで大丈夫」





そう言って診察室のドアを開けると、蓮がニコニコの笑顔で出迎えてくれた。





蓮「りさ、いらっしゃい」


蒼「蓮、りさよろしくな。ひとりで大丈夫みたいだから、俺医局戻るよ」


蓮「おっけー。また終わったら連絡入れるよ」





蒼はりさを蓮に任せて医局に戻った。





蓮「よし、そしたら先に……はい!鎮痛剤渡しとくね!」


りさ「にぃに、ありがとう」





りさはお願いしていた生理痛の薬を蓮から受け取りカバンにしまう。





蓮「そしたら、さっそくだけど生理の話しようか。えっと、まずはいくつか確認するね。最初に直近3ヶ月の生理が始まった日と終わった日を教えてくれる?」


りさ「えぇと、手帳に記録してあるからちょっと待って……」





そういって、りさは生理が来た日にハートの印をつけいる手帳を蓮に見せた。

その後も、入試の日程や普段の生理の状況などいくつか問診を受ける。





蓮「うんうん。りさえらいね~、ちゃんと管理できてるね」





蓮はニコッとしてりさの頭をなでた。





蓮「毎月きちんとした周期で来てるね。これなら大丈夫だ。よし!それじゃあ、これからお薬の説明していくね。まず、生理をコントロールするにはピルって言う薬を使うんだけど2種類があるんだ。今の生理日より前にずらすか、後ろにずらしたいかで変わってくるよ」


りさ「どう違うの?」


蓮「簡単に言うと薬の強さが違うかな。生理を今より早める場合は弱い方を、遅らせる場合は強い方を飲むんだ。飲む日数も変わってきて、早める方が薬の飲む回数は多くなるよ」


りさ「えっ、じゃあわたし強い方がいい。飲む回数少ないのがいい……」


蓮「りさ待って?たしかに、飲む回数は減るんだけど、成分が強い分、副作用が出やすいんだよ。ピルの副作用には血栓症や頭痛や吐き気がある。りさはせっかく早く相談に来てくれて、センターまでもまだ数ヶ月あるから、今から弱い薬を飲み始めて体を慣らすのはどうかな?せっかく生理をコントロールできても、試験本番に副作用で気持ち悪くなったりしたら嫌でしょ?」


りさ「うん、それは嫌だ……にぃにの言う通りにしてみる」


蓮「うん!そしたら決まりだね。じゃあ、血液検査して終わりにしよっか」


りさ「えっ……?」





血液検査。

突然、大っ嫌いな言葉が聞こえてきて、りさは耳を疑った。





りさ「にぃに、今血液検査するって言った……?」


蓮「言ったよ。さっきも言ったけど、血が固まる副作用もあるから、ピルを服用するには血液検査をしなくちゃいけないんだ」





予想もしてなかった話に、りさの顔はどんどん暗くなり、いつの間にか俯いていた。





りさ「やめる……」


蓮「え?」


りさ「やっぱりやめたい。血液検査はやだ……」


蓮「も~、りさ~……」





蓮は椅子から立ち上がり、座ったまま俯くりさをすっぽり包み込むように抱きしめた。





蓮「りさ、本当にやめるの?せっかく勇気出して、にぃにに相談してきたじゃん。血液検査が嫌なだけで、生理と試験が被るかもって不安なままでいいの?」


りさ「だって……ぐすん」


蓮「も~、ほら泣かないで……うーん、ちょっと待ってね」





泣き出すりさを抱きしめたまま、蓮はどこかに電話した。





蓮「ごめん、来れる……?」










コンコンコン——





蓮が電話をして3分ほどすると、診察室に蒼がやってきた。





蒼「りさ、どうした?なんで泣いてるの?」





突然の蒼の声に、りさは少しビクッとして顔を上げた。





りさ「先生、なんで来たの……?」


蒼「なんでって、蓮に呼ばれたからだよ。りさになんかあったのかと思って」


りさ「にぃにに相談したの。生理ずらしたくて。でも、お薬飲むなら血液検査しないといけないって言われたの。だからやめるって。でもそうすれば、試験と被るかもしれないの。うわ~ん!」


蓮「……というわけで、呼ばせていただきました」





蓮は、自分にしがみついて泣くりさに苦笑いしながら、ペコッと蒼に頭を下げる。

蒼はりさの背中に手を置いて、落ち着かせるように話しかけた。





蒼「りさ?とりあえず泣くのやめよう。顔あげて」


りさ「ぐすん、ぐすん。ひっく」





りさは体を蓮から離し、手で涙を拭った。





蒼「りさ、俺がついてるから血液検査頑張ろう。それで、ちゃんと試験と被らないようにしよう」


りさ「ぐすん。だって、怖いんだもん……」


蒼「怖いけどすぐ終わるでしょ?それとも、このまま生理が被って試験失敗してもいいの?」





りさは全力で首を横に振った。





蒼「そうでしょ?俺もりさのつらい顔は見たくないから。一緒にいてあげるから頑張るよ」


りさ「コクっ……」


蓮「よし!じゃあ、ささっと終わらせちゃおうか!」





そう言って、蓮はすぐに血液検査の準備を始めた。





りさ「うぅ……怖い……」





勇気を出してベッドに横になったものの、駆血帯を巻かれたりさは、差し迫る恐怖に怯えていた。





蒼「大丈夫大丈夫。すぐ終わる」





蒼はりさの頭を撫でながら、りさを落ち着かせる。





蓮「よし、りさチクってするよ~」


りさ「や、やだ……にぃに待って!」


蒼「もう、りさの待っては日が暮れるだろ?ほら、手握ってあげるから。はい、蓮よろしく」





蒼は採血と反対側の手を握り、蓮を催促する。





蓮「OK。そしたらりさいくよ~、ちょっと我慢してね~……」


りさ「んっ、痛い……!」





りさは目をつぶって蒼の手をぎゅっと握りしめた。





蓮「りさえらいね~、もうちょっとだからね~……はい!終わり!」


りさ「うぅ……ぐすん……ぐすん……」


蒼「もう終わったよ。そんなに泣かないの……」





蒼はりさの涙を手で拭い、頭をぽんぽんと撫でた。










そして、翌月の生理が始まるとりさはピルの服用を始めた。

副作用で気持ち悪くなるかもしれないからと、蓮のアドバイスで寝る前に服用したものの、飲み始めの数日間は案の定副作用が出てしまい、朝から気持ち悪いと寝込んで学校も休んでしまった。



でも、少しすると体も慣れてきたのか特に問題なく過ごせており、りさは毎日きちんと薬を飲み続けた。


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