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第12羽 こんな素晴らしいことはない
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悠は両手で耳を覆った。これは兄とは違うと思った。
こんな恐ろしいことやるはずがない、笑いながら喋るはずがないと。
だが同時に兄と認めざるおえない事実にも気付いた。
遼のマウンテンバイクにはサッカー選手のメッシ好きを象徴するスペイン国旗と一〇のステッカーが貼ってあり、悠と祐樹は密かにメッシバイクと呼んでいたのだ。
《しばらく眺めていたけど遼のやつ、釣り上げた魚みたいに暴れてなかなか死なないんだ。しょうがないから右目を思い切り突いてやったよ。そうしたらどうなったと思う?》
話の内容とは裏腹に悠も久しく聞いてないほど朗らかな、だが残酷な含み笑いも混ぜた声で祐樹は続けた。
《ゲロを吐く直前みたいな音を口から出して静かになったよ。いや、手足はびくんびくん震えてたっけか?念のためもう今度は左目に深々と口ばしを突っ込んでとどめをさしてやった》
そう言い終えると祐樹は喉を鳴らすような鳴き声を小刻みに発した。
悠にはそれが愉快でたまらないといった笑い声に聞こえた。
《私は精神状態がおかしいんだ。カラスが喋るなんて、お兄ちゃんの声で喋るなんてありえない。これは幻覚、幻聴》と悠が思った途端、祐樹の大声が頭に入り込んできた。
《次は尚美の番だ。死んでやっとあいつらに仕返しできる。こんな素晴らしいことはないぞ!悠。俺はこれをやりとげる》
祐樹は枝の上でくるりと背中を向け、こう言った。
《お前だけは幸せになってくれ、悠》
祐樹は軽く下を向き、顔を斜め右にした。
その姿が兄の照れ隠しの仕草と重なった悠は思わず「お兄ちゃん、待って!」と大きな声で叫んだ。
その声で琴音がむくりと起き上がり悠を見た。そしてその視線の先にカラスがいるのに気付いた琴音は素早い動きでカバンに手を突っ込み、小さなスプレー缶を取り出し立ち上がると悠の前に立ちふさがり握ったスプレー缶を祐樹に向けた。
悠はそれが最近薬局などで売り始めたカラス撃退用スプレーと気付き「やめて、琴音さん」と叫んだが琴音は身じろぎせず祐樹に狙いを定めたまま動かなかった。
祐樹は背中越しに二人をちらりと一瞥するとカラス特有の羽音を上げ、飛び立っていった。
こんな恐ろしいことやるはずがない、笑いながら喋るはずがないと。
だが同時に兄と認めざるおえない事実にも気付いた。
遼のマウンテンバイクにはサッカー選手のメッシ好きを象徴するスペイン国旗と一〇のステッカーが貼ってあり、悠と祐樹は密かにメッシバイクと呼んでいたのだ。
《しばらく眺めていたけど遼のやつ、釣り上げた魚みたいに暴れてなかなか死なないんだ。しょうがないから右目を思い切り突いてやったよ。そうしたらどうなったと思う?》
話の内容とは裏腹に悠も久しく聞いてないほど朗らかな、だが残酷な含み笑いも混ぜた声で祐樹は続けた。
《ゲロを吐く直前みたいな音を口から出して静かになったよ。いや、手足はびくんびくん震えてたっけか?念のためもう今度は左目に深々と口ばしを突っ込んでとどめをさしてやった》
そう言い終えると祐樹は喉を鳴らすような鳴き声を小刻みに発した。
悠にはそれが愉快でたまらないといった笑い声に聞こえた。
《私は精神状態がおかしいんだ。カラスが喋るなんて、お兄ちゃんの声で喋るなんてありえない。これは幻覚、幻聴》と悠が思った途端、祐樹の大声が頭に入り込んできた。
《次は尚美の番だ。死んでやっとあいつらに仕返しできる。こんな素晴らしいことはないぞ!悠。俺はこれをやりとげる》
祐樹は枝の上でくるりと背中を向け、こう言った。
《お前だけは幸せになってくれ、悠》
祐樹は軽く下を向き、顔を斜め右にした。
その姿が兄の照れ隠しの仕草と重なった悠は思わず「お兄ちゃん、待って!」と大きな声で叫んだ。
その声で琴音がむくりと起き上がり悠を見た。そしてその視線の先にカラスがいるのに気付いた琴音は素早い動きでカバンに手を突っ込み、小さなスプレー缶を取り出し立ち上がると悠の前に立ちふさがり握ったスプレー缶を祐樹に向けた。
悠はそれが最近薬局などで売り始めたカラス撃退用スプレーと気付き「やめて、琴音さん」と叫んだが琴音は身じろぎせず祐樹に狙いを定めたまま動かなかった。
祐樹は背中越しに二人をちらりと一瞥するとカラス特有の羽音を上げ、飛び立っていった。
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