黒翼の巨人

興味sinsin

文字の大きさ
12 / 23

第12羽 こんな素晴らしいことはない

しおりを挟む
悠は両手で耳を覆った。これは兄とは違うと思った。
こんな恐ろしいことやるはずがない、笑いながら喋るはずがないと。
だが同時に兄と認めざるおえない事実にも気付いた。
遼のマウンテンバイクにはサッカー選手のメッシ好きを象徴するスペイン国旗と一〇のステッカーが貼ってあり、悠と祐樹は密かにメッシバイクと呼んでいたのだ。
《しばらく眺めていたけど遼のやつ、釣り上げた魚みたいに暴れてなかなか死なないんだ。しょうがないから右目を思い切り突いてやったよ。そうしたらどうなったと思う?》
話の内容とは裏腹に悠も久しく聞いてないほど朗らかな、だが残酷な含み笑いも混ぜた声で祐樹は続けた。
《ゲロを吐く直前みたいな音を口から出して静かになったよ。いや、手足はびくんびくん震えてたっけか?念のためもう今度は左目に深々と口ばしを突っ込んでとどめをさしてやった》
そう言い終えると祐樹は喉を鳴らすような鳴き声を小刻みに発した。
悠にはそれが愉快でたまらないといった笑い声に聞こえた。
《私は精神状態がおかしいんだ。カラスが喋るなんて、お兄ちゃんの声で喋るなんてありえない。これは幻覚、幻聴》と悠が思った途端、祐樹の大声が頭に入り込んできた。
《次は尚美の番だ。死んでやっとあいつらに仕返しできる。こんな素晴らしいことはないぞ!悠。俺はこれをやりとげる》
祐樹は枝の上でくるりと背中を向け、こう言った。
《お前だけは幸せになってくれ、悠》
祐樹は軽く下を向き、顔を斜め右にした。
その姿が兄の照れ隠しの仕草と重なった悠は思わず「お兄ちゃん、待って!」と大きな声で叫んだ。
その声で琴音がむくりと起き上がり悠を見た。そしてその視線の先にカラスがいるのに気付いた琴音は素早い動きでカバンに手を突っ込み、小さなスプレー缶を取り出し立ち上がると悠の前に立ちふさがり握ったスプレー缶を祐樹に向けた。
悠はそれが最近薬局などで売り始めたカラス撃退用スプレーと気付き「やめて、琴音さん」と叫んだが琴音は身じろぎせず祐樹に狙いを定めたまま動かなかった。
祐樹は背中越しに二人をちらりと一瞥するとカラス特有の羽音を上げ、飛び立っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

処理中です...