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第13羽 悠、カラスとの会話する
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病院で順調に回復しているという医師の太鼓判を押された悠は松葉杖をついて広い駐車場に面した芝生の上にあるベンチに越をおろし、瞼を閉じて空を見上げた。
正午の強い日差しは瞼越しにもわかった。
葬式が終わり、こちらに迎えに来るまであと三十分くらいだろうか、悠はそう考えながら琴音が遼の死を伝える電話を受け取ったときのことを思い出した。
電話をかけてきたのは賢三叔父さんなのは琴音の対応でわかったが、やりとりを聞いているうちに、遼を失った尚美の悲しみは尋常ではないということがわかってきた。
仮に兄の言ったとおりの死に様だとしたら当然と思えた。
だが、あれほど憎かった遼や尚美に対し、いい気味だという感情は少しも湧いてこなかった。それどころか、憐憫の情さえ湧いてきていた。
しかしこの後味の悪さは何なのだろう?
そんな悠の頭の中に誰かの会話が響いてきた。
《今度こそ仕留めてやろうとしたらどこかに引っ越してやがった。まあ逃がしはしないがな》
《私なんかもう三回目。しかもこの病院で寝たきりになってしまったから難しいわよ》
会話の方へ悠が顔を向けると駐輪場の屋根の上に二羽のカラスの背中が見えた。
悠が会話を聞いているのにカラス達は気付いている様子は無く、お互いエールを送ると別々に飛び立っていった。
“カラスの言葉がわかったところで何の意味があるのだろう?それにお兄ちゃんのあんな言葉は聞きたくなかった”溜息をつき、悠はそう思った。
《大変そうだね》
先ほどのカラスとは別の声が頭に響いてきたので悠は辺りを見回すと、駐車場の角に立っている照明灯の上にカラスが一羽止まっており、こちらを見ているのに気付いた。
兄以外のカラスに声をかけられたことに悠は驚いたが同時に警戒もし、押し黙った。
《聞こえるのだろう?お譲さんの声もはっきり聞こえたんだ。お兄さんもカラスになってしまったのかい?》
その声はどこか気が昂っていた兄とも、先ほどのカラス達とも違う落ち着いたものだった。
《死に損なって身につけたその能力は嫌いかな?》
警戒を緩めたわけではなかったが、復讐のみとは違う印象を持つカラスに興味を持った悠は《何のためにあるのかわからない》と答えた。
《ハサミを手に入れたと思いなさい。私の知っている能力を手に入れた者達は様々な使い方をしていた。カラスに標的の情報を教える代わりに盗ませた金品を手に入れたり、カラスと遺族との意思疎通を仲介して霊能者まがいのことをしたりとね。使い勝手は色々ある》
そう言うとカラスはいかにも痒いという風に口を開け、足で頭を素早く掻いた。
《何で私に話しかけてきたの?》
悠の問いにカラスは掻いて毛が数本飛び出した頭を傾け《お譲ちゃんは死ぬ間際まで憎んだ相手を今も憎んでいるのかな?》と逆に聞き返したが、それに悠は首を左右に振った。
《うん、では教えてやろう。カラスになったものは復讐を遂げるまでいくら死んでも生まれ変わる。当然カラスとなってね。つまりは相手を殺さなければこの世を永遠にさまよう》
悠はさっきの二羽のカラスを思い出した。
何度か、恐らく死を覚悟の復讐方法を試みたが成し遂げられず、生まれ変わり再び復讐しようとしていたのだろうか?だが、これでは、まるで復讐の奴隷ではないか。
悠は嗚咽のときに伴うしゃっくりに似た痙攣が喉の奥で起きるのを感じた。
《だが復讐を諦めるカラスもいる、私のようにね》
そこでカラスは上空を通り過ぎていく数羽のカラスをチラリと見て、また悠に視線を向け、次のような話を続けた。
正午の強い日差しは瞼越しにもわかった。
葬式が終わり、こちらに迎えに来るまであと三十分くらいだろうか、悠はそう考えながら琴音が遼の死を伝える電話を受け取ったときのことを思い出した。
電話をかけてきたのは賢三叔父さんなのは琴音の対応でわかったが、やりとりを聞いているうちに、遼を失った尚美の悲しみは尋常ではないということがわかってきた。
仮に兄の言ったとおりの死に様だとしたら当然と思えた。
だが、あれほど憎かった遼や尚美に対し、いい気味だという感情は少しも湧いてこなかった。それどころか、憐憫の情さえ湧いてきていた。
しかしこの後味の悪さは何なのだろう?
そんな悠の頭の中に誰かの会話が響いてきた。
《今度こそ仕留めてやろうとしたらどこかに引っ越してやがった。まあ逃がしはしないがな》
《私なんかもう三回目。しかもこの病院で寝たきりになってしまったから難しいわよ》
会話の方へ悠が顔を向けると駐輪場の屋根の上に二羽のカラスの背中が見えた。
悠が会話を聞いているのにカラス達は気付いている様子は無く、お互いエールを送ると別々に飛び立っていった。
“カラスの言葉がわかったところで何の意味があるのだろう?それにお兄ちゃんのあんな言葉は聞きたくなかった”溜息をつき、悠はそう思った。
《大変そうだね》
先ほどのカラスとは別の声が頭に響いてきたので悠は辺りを見回すと、駐車場の角に立っている照明灯の上にカラスが一羽止まっており、こちらを見ているのに気付いた。
兄以外のカラスに声をかけられたことに悠は驚いたが同時に警戒もし、押し黙った。
《聞こえるのだろう?お譲さんの声もはっきり聞こえたんだ。お兄さんもカラスになってしまったのかい?》
その声はどこか気が昂っていた兄とも、先ほどのカラス達とも違う落ち着いたものだった。
《死に損なって身につけたその能力は嫌いかな?》
警戒を緩めたわけではなかったが、復讐のみとは違う印象を持つカラスに興味を持った悠は《何のためにあるのかわからない》と答えた。
《ハサミを手に入れたと思いなさい。私の知っている能力を手に入れた者達は様々な使い方をしていた。カラスに標的の情報を教える代わりに盗ませた金品を手に入れたり、カラスと遺族との意思疎通を仲介して霊能者まがいのことをしたりとね。使い勝手は色々ある》
そう言うとカラスはいかにも痒いという風に口を開け、足で頭を素早く掻いた。
《何で私に話しかけてきたの?》
悠の問いにカラスは掻いて毛が数本飛び出した頭を傾け《お譲ちゃんは死ぬ間際まで憎んだ相手を今も憎んでいるのかな?》と逆に聞き返したが、それに悠は首を左右に振った。
《うん、では教えてやろう。カラスになったものは復讐を遂げるまでいくら死んでも生まれ変わる。当然カラスとなってね。つまりは相手を殺さなければこの世を永遠にさまよう》
悠はさっきの二羽のカラスを思い出した。
何度か、恐らく死を覚悟の復讐方法を試みたが成し遂げられず、生まれ変わり再び復讐しようとしていたのだろうか?だが、これでは、まるで復讐の奴隷ではないか。
悠は嗚咽のときに伴うしゃっくりに似た痙攣が喉の奥で起きるのを感じた。
《だが復讐を諦めるカラスもいる、私のようにね》
そこでカラスは上空を通り過ぎていく数羽のカラスをチラリと見て、また悠に視線を向け、次のような話を続けた。
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