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第19羽 復讐を止める者
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迎えに来た琴音の車の中、悠は兄の復讐阻止の方法をあれこれ考えたが、どれもカラスが襲ってくるという話を他の人が信じる前提のものばかりで実行には程遠いものばかりだった。そんな悠に昼食で食べた大手牛丼チェーンの新商品を面白おかしく評していた琴音が「あー、薬局寄って酔い止めの薬買わなくちゃ」と言ったので悠はぼんやりと「何で?」
と聞き返した。
「結局さ、日曜日の集会、お客さんも何人か参加することになっちゃってさ、当日それ用のバスで行くことになったんだわ、でもさ、あたしバスだと酔っちゃうんだよね」
さっと無意識に琴音へ顔を向けた悠は開きかけた口を閉じた。
カラスに襲われるから行くのは止めて、と言って誰が信じるだろうか?
それにこう聞き返されるに決まっている「何でそれがわかるの?」と。
カラスと会話が出来る、とは口が裂けても言えなかった。
言ったところで怪我の後遺症で頭がおかしくなったと思われるのが関の山だと思った。
お兄ちゃんなら、人間だった頃のお兄ちゃんならどうするだろう?
幼い頃読み聞かされた絵本に出てくる戦いを止めた巨人のようなお兄ちゃんなら…
悠の目に何かを決心した光が宿った。
その頃、赤信号で停まっているタクシーの運転手が信号をはさんで琴音の車を正面から見ていた。十代の少女が何か喋り、それに母親らしき女性が驚いた素振りをして言い返した。だが少女はその年代特有の頑固な表情でまた何かを喋ると母親らしき女性は根負けした笑顔を向け、頷いた。
“わがまま放題だからな、今のガキ共は。何を聞き容れたんだか”中年のタクシー運転手は信号が青になったのに気付き、ギアを入れてタクシーを発車させた。
まばらに雪がちらつく灰色の空を背景に、鉄塔の上から祐樹は濡れた高速道路を見下ろしていた。
もう間もなく目当てのバスが来るだろう、これで終わりだ。いや、仮に失敗してもまたやればいい、そのチャンスは無限にあるのだから。しかし、この状態に生まれ変わってからは四六時中ヘッドフォンから大音量で音楽が流されるように憤怒が頭に流し込まれている。
これもそれもあの二人のせいだ。今日こそ残りの一人を始末してこの状態から解放されよう。そういえば昨日の腑抜けカラスの一人、仲間が教えてくれた名前は何だっけ?ムエキ、ムラキ?まあいい、そいつから悠の名前が出たのには驚いた。しかし、悠の顔を思い出すと一瞬だが頭の中が落ち着く、あいつの為だったら何でもやれた。だから人間だった頃も性根の腐った二人の仕打ちに我慢できた。今思えば我慢することはなかったな。奴らをぶちのめして有り金を奪い、悠と逃げるべきだったんだ。
戦いを止める巨人は絵本だけのものだ。復讐を終わらすには相手を残らず始末する、それが現実なんだ。
祐樹はそう思い、隣に並んで止まっている四羽のカラスを見た。
と聞き返した。
「結局さ、日曜日の集会、お客さんも何人か参加することになっちゃってさ、当日それ用のバスで行くことになったんだわ、でもさ、あたしバスだと酔っちゃうんだよね」
さっと無意識に琴音へ顔を向けた悠は開きかけた口を閉じた。
カラスに襲われるから行くのは止めて、と言って誰が信じるだろうか?
それにこう聞き返されるに決まっている「何でそれがわかるの?」と。
カラスと会話が出来る、とは口が裂けても言えなかった。
言ったところで怪我の後遺症で頭がおかしくなったと思われるのが関の山だと思った。
お兄ちゃんなら、人間だった頃のお兄ちゃんならどうするだろう?
幼い頃読み聞かされた絵本に出てくる戦いを止めた巨人のようなお兄ちゃんなら…
悠の目に何かを決心した光が宿った。
その頃、赤信号で停まっているタクシーの運転手が信号をはさんで琴音の車を正面から見ていた。十代の少女が何か喋り、それに母親らしき女性が驚いた素振りをして言い返した。だが少女はその年代特有の頑固な表情でまた何かを喋ると母親らしき女性は根負けした笑顔を向け、頷いた。
“わがまま放題だからな、今のガキ共は。何を聞き容れたんだか”中年のタクシー運転手は信号が青になったのに気付き、ギアを入れてタクシーを発車させた。
まばらに雪がちらつく灰色の空を背景に、鉄塔の上から祐樹は濡れた高速道路を見下ろしていた。
もう間もなく目当てのバスが来るだろう、これで終わりだ。いや、仮に失敗してもまたやればいい、そのチャンスは無限にあるのだから。しかし、この状態に生まれ変わってからは四六時中ヘッドフォンから大音量で音楽が流されるように憤怒が頭に流し込まれている。
これもそれもあの二人のせいだ。今日こそ残りの一人を始末してこの状態から解放されよう。そういえば昨日の腑抜けカラスの一人、仲間が教えてくれた名前は何だっけ?ムエキ、ムラキ?まあいい、そいつから悠の名前が出たのには驚いた。しかし、悠の顔を思い出すと一瞬だが頭の中が落ち着く、あいつの為だったら何でもやれた。だから人間だった頃も性根の腐った二人の仕打ちに我慢できた。今思えば我慢することはなかったな。奴らをぶちのめして有り金を奪い、悠と逃げるべきだったんだ。
戦いを止める巨人は絵本だけのものだ。復讐を終わらすには相手を残らず始末する、それが現実なんだ。
祐樹はそう思い、隣に並んで止まっている四羽のカラスを見た。
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