黒翼の巨人

興味sinsin

文字の大きさ
10 / 23

第10羽 黒翼の再会

しおりを挟む
「今日は店も休みだし、海でも見てリフレッシュしよっか!」という琴音に連れられた悠は海浜公園のベンチに腰掛けていた。

快晴で海風もなく、穏やかな昼下がりだった。

悠の左には先程まで波打ち際で石を投げたり波を相手に鬼ごっこをしてはしゃいでいた琴音がベンチの背もたれに体を預け、恥じらいも無く大口を開けながら眠りこけている。


キラキラ輝く沖を見つめながら悠はペットボトルのお茶をひと口飲み込んだ。

波打ち際のテトラポットの上で毛づくろいをしているウミネコが見える。

つかの間の後、涙が溢れてきた。

その涙は兄を失ったときのものや、琴音の優しさに触れたときのものとは違った。

生きていることへの感動の涙だった。

そこへ以前聞いた甲高い澄んだ鳴き声が右側からしたので悠は体をびくっとさせ、とっさに声のほうを向いた。

悠の力でも石を投げれば当たりそうな距離の松の木に、カラスが止まっていた。

カラスはじっと身動ぎせず、こちらを見つめている。悠はベランダで見たカラスだと思った。

そしてカラスの口ばしや頭全体が赤茶っぽい色で染まっているのに気付き、なにやら胸騒ぎを覚えた。

《聞こえるか悠》

頭の中に兄の声が聞こえた悠は両手を口に当て目を見開いた。

「お兄ちゃん?」

震える声でそう言うとカラスは小刻みに鳴き声を出す仕草をした。

《仲間から聞いたとおりだ、怒りを抱えたまま死に切れなかった者は俺たちとコミュニケーションできるっていうのは本当だったな》

「信じられない、本当にお兄ちゃんなの?」

悠は大きな声でそう言い、立ち上がろうと松葉杖に手を回した。

《よせ悠、無茶はするな。それと声は出さなくていい、頭の中で会話できる》

カラスはそちらを見ろというように口ばしを二度眠っている琴音に向けた。

《今の生活はどうだ?》

カラスと化した兄である祐樹の問いに《琴音叔母さんは優しくて楽しいし、前の生活とは全然違うよ》と悠は頭の中で答えた。

《そうか》

祐樹はそう言うと沈黙した。


つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

処理中です...