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第6章 パーテーションの陰で

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 夢中でパソコンに向かっていたら、ことん、と机にコーヒーが置かれた。

「そろそろ上がれ。終電、逃すぞ」
「ありがとうございます」

 ミルクと砂糖も入ってる。すごい。

 もう、部長ったら、気が利く。
 あー、疲れた脳と身体にこの甘さが染みわたる。

「土日は一緒にいてやれないが」

「もう大筋は固まったので大丈夫です」

「なかなか大掛かりなプランになったな」

「すべて実現させることは難しいかもしれませんね」

「ああ、だが子供にとって、好奇心を存分に満たせる場所は、絶対に必要なものだ。ひいてはそれが『ヤマモト』の再生の鍵になる。俺たちはそれを信じて、少しでも実現の方向にもっていけるように力を尽くすだけだ」

 その言葉を聞いて、体が熱くなっていく感覚を覚えた。

 そして、心の底から実感していた。

 この人のもとで仕事ができて良かった。

 こんなにやりがいのある仕事を任されることになんて、つい数ヶ月前まで、考えてもみなかった。
 すべて、部長がわたしをこの部に引っ張ってくれたおかげだ。


 よっしゃー、もうひと踏ん張り、頑張ろう!

 コーヒーを飲み終え、自分のカップと部長のカップを給湯室に持っていこうと思い、椅子から立ち上がった。

 すると、頭がふわっとして、身体が前に傾いだ。

 あっ、やば、倒れる……

「おっ」
 部長は大きな音をさせて椅子から立ちあがると、とっさにわたしを抱き留めた。

 身長差が大きいので、わたしは彼の胸に顔をうずめる恰好になった。

「す、すみません」
 あわてて身体を起こそうとすると、彼はわたしの頭の後ろに手を回してきた。

 えっ?

「根の詰め過ぎだ。立ちくらみだろう。落ち着くまでしばらくこうしててやる」

 そう言うと、部長は回した手に少し力を込めた。

「はい……」
 
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