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番外編その2 木澤彰吾、パパになる

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 花梨と生まれてくる未来の我が子のために……

 長年、連れ添った煙草と泣く泣く別れる羽目になった俺だったが、花梨が献身的に協力してくれたこともあり、すっぱりと、おさらばすることができた。

 それから超ハイスピードで結婚準備を進め、挙式、披露宴はハワイと決め、今日はその結婚式の夜。

 ハネムーナーの憧れ、『モアナ・サーフライダー・ホテル』のペントハウス・オーシャンスイーツ(と、花梨が興奮気味に言っていた。俺は初耳) の一室で、晴れて新婚初夜を迎えることになった。

 それまでも一緒に暮らしてたわけだから、花梨とはすでに夫婦同然。

 いまさらと言えば、まあそうなんだが、やはり「初夜」という言葉の威力はすごい。

 ムード抜群のロケーションで、初々しく恥じらう花梨の桃色に染まった頬を目にしたとたん、俺の理性は完全にぶっ飛び……

 花梨を抱き上げ、ベッドに横たえ、性急に唇を合わせ――

「ん……」

 花梨は俺の激しい動きに唇を噛んで耐えている。

  「声、聞かせてくれよ……。誰にも聞こえないぞ。ここなら」

 思うさま泣かせてみたくなって、さらに花梨を追い立てる。

「も、もう……あっ」

 潤んだ瞳で訴えかける花梨。
「し、彰吾……さん」
「か、花梨……」

 そうして、精魂尽き果てるまで愛し合ったあと……

「なんだか赤ちゃんできた、気がする……」

 ぐったりと、俺の腕のなかで余韻に浸っている花梨がそう呟いた。

 汗でしっとりしている髪を撫でながら、そのときはなんとなく聞き流していたが……

 ハワイから帰って2カ月後。

 半休を取って産婦人科に行った花梨からメールが来た。

「やっぱり、あの時の勘が当たった」と。
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