苺の誘惑 ～御曹司副社長の甘い計略～

第1章 怪しげな依頼

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　四谷の雑居ビルの階段を登りはじめたとたん、若い女の子の甲高い笑い声が聞こえてきた。

　3階まであがり、〈酒井芸能プロダクション〉と表札が掲げられているドアを開ける。

　事務所では、さっきの声の主であるふたりの若手タレント、リサと絢奈あやなが、来客用ソファーを陣取り、雑誌をめくりながら、雑談にふけっていた。

「あっ、サニーヒルズ・ビレッジじゃん。ホテルがオープンしたって、こないだワイドショーでやってたよ。わっ、スイートルーム、めっちゃ豪華！　こんなところに彼氏とお泊まりしたい！」

「無理だって。大統領とか王様が泊まる部屋でしょ、これって。わ、このショップのラインナップもすごいね。ラグジュアリー・ブランドしか入ってない！　下々の者は“ガン無視”かあ。富裕層の彼氏でも捕まえない限り、足も踏み入れらんないね」

　あいかわらず、若さを前面に押しだした露出度の高い服を着て、わが世の春を謳歌してるな、この子たちは。

　リサが一際大声をあげた。

「えー、何、この人！　めっちゃイケメン。芹澤宗太。弱冠2７歳で、ビレッジの管理会社の副社長だって。なんだかわかんないけどすごーい！」

「こんな人と“玉の輿婚”できたら、一生遊んで暮らせるんじゃね？」

　ふたりは顔を見合わせた。
　同時に同じことを思いついたようだ。