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旧ver(※書籍化本編の続きではありません)
幸せの形①
しおりを挟むアルディエンヌ公爵領に住む領民達の間では、最近、とある話で持ち切りだった。
「聞いたかい?アルディエンヌ公爵家の後継者の話」
「婿入りしたエリック殿下と、ヴィクトリア様の子供だろう?凄い美男子だと聞いたが」
「確かにあの二人の子供なら生まれてくる子は美形だろうが、一体いつお生まれになったんだろうな?」
「そうだなぁ。ヴィクトリア様がお生まれになった時は、誕生祭があったが、今回の話は本当に突然だったからな」
「だろう?話を聞いた限りじゃ、後継者の子供は、もう15歳らしい」
「それだけでかい子供が入れば、出入りの商人から話が漏れそうなもんだが」
「何か事情があったのかもしれねぇな。まぁ、領主となられたエリック殿下のお陰で、元々住みやすかったこの領地が更に発展しているし、ヴィクトリア様も孤児院を頻繁に訪れたり、領民にも大層優しくして下さる。俺ぁ、あのお二人を応援しているし、そんな二人のお子様なら大歓迎だ」
「ああ、俺もだ。直接何か出来る事はないが、例えどんな事情があろうとも、後継者様を支持するぜ」
「その子が次の領主となる時が楽しみだな」
エリックとヴィクトリアが結婚し、アルディエンヌ領地を治めるようになってから、既に二十年近くの時が経過していた。
そうして、突然湧いて出た後継者の話に、世間は持ち切りだった。
その子供は、藤色の瞳に艷やかな黒髪の、それはそれは大層な美男子らしい。
世間は、貴族も平民も、誰もがその子供に夢中になった。
誰の言葉だったか、誰かが、その子供の瞳の色を、『とても美しい深紅の瞳ですわね』と言った。
けれども、その子供の瞳は母親であるヴィクトリア譲りの藤色。
――――見間違えたのか?
『深紅の瞳』と言われ、その子供は妖しく微笑んだそうだ。
誰もを虜にしてしまうような、壮絶な美しさと、まだ成人前とは思えぬ程の色香を漂わせて。
……………………
…………
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