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本編

せめて無機物じゃなく、生物にして下さい★

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ギシギシと軋む柔らかなベッドの上で、息遣い荒く快楽に身を震わせる少女。
そんな少女を組み敷いているのは、端正な顔立ちで深い緑色の瞳をした青年だ。

「やっ……やぁあああん♡♡そんな、掻き混ぜちゃ、だめぇ♡♡」

ぐぷぐぷと泡立ち掻き混ぜる卑猥な水音が室内に響き渡り、羞恥心を煽られたエマは顔を真っ赤にしながら、必死に逞しい胸板を押し返そうとする。
けれど、所詮は男と女。
力の差は明白だ。

「駄目じゃない。これは必要な事なんだよ?しっかり解して柔らかくしないと、大事な君が壊れてしまうかもしれないからね」
「でも、さっきだって……あんっ♡♡」
「一度達したくらいでは全然足りないよ。だってエマは初めてなんだから。沢山達して、トロトロになるまで解さないと。……極力痛みは感じて欲しくないから、挿れる時は魔女殿からいただいた痛みを和らげる薬・・・・・・・・も飲んでもらうよ」
「……く、すり……?」

エマが涙の滲む瞳で見上げると、クリストファーはにこりと柔和な笑みを浮かべた。エマが少しでも怖がらず、安心するように。

「大丈夫。全部、僕に任せて。エマはただ、身を委ねてくれればいい。いっぱい気持ち良くしてあげる。またシテ欲しいって、エマの方から僕を欲しがるくらいにね」
「クリス様……っ」


どうしてこんな事になったのだろう?
私は、人間じゃないのに。
ただの薄汚れたぬいぐるみ・・・・・・・・・だったのに……!!


……………………
…………



前世の事は、今はもうあまり覚えていない。
長く長く、独りでいすぎたからだ。


(はー。今日も雨か。身体が水吸いまくってるよ。せめて屋根があればなぁ…………)


薄っすらと覚えているのは、日本という国で、毎日朝早くから夜遅くまで働いていた、という事だけ。
推測になるけど、恐らく私の身に何かが起こって、私は死んでしまったとだと思う。
死んで、これも推測だけど、前世とは違う別世界に転生した。……んだと思う。

だって、遠目に見える人達の中に、明らかに人間じゃない外見の人がいるんだもの。獣人って言うのかな。耳や尻尾がフサフサしてて、一度でいいから触ってみたい。それに、時々だけど、小さな光がフワフワ飛んでいるの。あれって、きっとアレだよね?ティンカーベル。妖精だよ、妖精。

(いいなぁ。私も妖精になりたかったなぁ。妖精だったら空を飛べるし、何処へでも好きに行けるもの。というか……)

この際、無機物でなければ何でもいいわ。

なんでなの?
なんで私はせっかく転生したにも関わらず、ぬいぐるみに転生なんかしちゃったの?
私、前世でよっぽど悪い事でもしたの?

気が付いたら、私はぬいぐるみで、路地裏に捨てられていた。

ハード過ぎるでしょ。
いや、働く必要が無いからイージーなの?
いや、確かに貝になりたいとか、一日中日向ひなたぼっこしてる猫になりたいとか、思った事はあった気がする。気がするけど、だからって無機物はないんじゃない?
せめて有機物にしてよ。生物にしてよ。痛みとか無いけど、自我だけあって一ミリも動けないとか発狂ものだよ??

発狂してない私を誰か褒めてよ。
盛大に褒めちぎってくれていいよ。

背中の糸がほつれて、綿が少し出ちゃってるし。
時々小さな虫が私の下に入り込むんだよ。いやもう、最初の頃は盛大に悲鳴を上げたよ?勿論ぬいぐるみだから声なんて出ないけどさ。

鏡を見た事がないから、自分がどんなぬいぐるみかも分かんないのよ。
ただ、視界の端に映ってる手が、布で縫われてるまあるいぬいぐるみの手だったの。だから多分、小さな子供が手に持って遊ぶような、女の子のぬいぐるみなんじゃないかなって。もしかしたら男の子かもしれないけどね。

最初は心の中で悲鳴を上げてた虫達だって、今では可愛らしいもんよ。
団子虫とか、前世の有名な映画で見た気がするし。
だが、ムカデ。てめぇは駄目だ。何年経ってもお前だけは怖いんだよ。頼むから、糸のほつれた部分から中には入らないでくれ。最低限のエチケットだ。

幸いにも、この世界にGがつくアレはいないようだ。何年も路地裏にいるけど、一度も見た事が無い。
良かったよ、ホント。あんなのが近くにいたら神様を恨んで悪いぬいぐるみになってたよ。まぁ身体は一ミリも動けないけどね。

(あーあ。暇だなぁ……)

動けないから、視点も変えられない。何年も何年も同じ景色を路地裏から見つめ続けて、暇過ぎて死にそうだ。

(……本当に死ねたらいいのに)

この身体が完全に朽ち果ててくれたら、また私は転生出来るのだろうか?
いや、もしもまた無機物になってしまったらと思うと、もう転生もしたくない。
動けない。声も出せない。目も閉じれない。

こんなの、居ないのと一緒だよ。
だから、いっそ消えてしまいたい。

心なんて、なければ良かったのに。




「…………おや?これはこれは……面白いもんが落ちてるね」




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