【R18】ボロボロの“ぬいぐるみ”に転生したけど、騎士様に溺愛されてます!

はる乃

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本編

魅惑的なボンキュッボンのお姉さん

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(……誰?)

視点を変えられない私は、雨の中、誰かのブーツしか見えない。

(落ちてるって、まさか私のこと?)

しかし、すぐにそんな事は無いと胸の内で否定する。
全身を見た事はないが、スースーしてるし、私はボロボロの薄汚れたぬいぐるみだ。ほつれて綿も出てるし、布地は虫食いだらけ。貧しそうな子供さえ、一度私に目を留めても、拾ってくれた事はない。それほどまでに、私は汚い無価値なぬいぐるみなのだ。

だけど、突然私の視界がぐるりと移り変わり、驚きでぬいぐるみには無い筈の心臓が高鳴った気がした。
私の視界に映るのは、気の強そうな、綺麗な顔の美女。真っ黒い服に身を包んだ、ボンキュッボンの魅惑的なお姉さんだった。

「あんた、ぬいぐるみなのに魂が宿ってるね。大切にされていた物に精霊が宿る話は聞いた事があるが、あんたの場合、そういった類じゃなさそうだ」

このお姉さん、私に話しかけてる?
私に話しかけてるよね?
しかも、私に魂が宿ってるって……

私の存在に気付いてくれたの?!

これは夢だろうか?
それとも、気付かない内にいよいよ身体が朽ち果てて、これから天に召されるのだろうか??

しかし、その魅惑的なお姉さんは、真っ直ぐに私を見つめていて、くすりと笑みを浮かべた。

「これも何かの縁だ。良かったら、私と一緒に来ないかい?その身体、直してあげるよ」

な、な、な……
なんですとっっ?!
ぜひっ!!是非お願いします!!
私を連れてって!!

って、私、声が出ないから答えられないんですけど?!
お願いお姉さん、感じ取って!
私を連れて行って~~~~!!

未だかつて無かった程に、私は必死にお姉さんへ念を飛ばした。
このチャンスを逃したら、もう二度と私に魂があると気が付いてくれる人なんて現れないと思ったからだ。
そして、私の必死な念が通じたのか、お姉さんは「分かったよ」と優しく答えてくれたのだ。


(や、や、や、や、やったああああああ!!!一生ついていきます、姐御おおおおおおおおおおおおおおお!!!)


私は胸の内で咽び泣いた。
ぬいぐるみになってこんなに喜びを感じたのは初めてだと思う。

お姉さんは、ボロボロの濡れ雑巾のような私を丁寧に持ち上げて、私を布袋の中へそっと入れてくれた。
涙なんて出ないけど、私は泣いていた。間違いなく嬉し泣き。



私はその日、初めて違う景色を見て、初めて屋根のある暖かなお家の中を知る事が出来たのだった。



* * *
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