【R18】傷付いた侯爵令嬢は王太子に溺愛される

はる乃

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本編

暗闇から光の中へ(やや★)

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気が付くと、私は真っ暗な暗闇の中を走っていた。
走り過ぎたのか足が痛くて息が上がり、胸が苦しくて堪らない。
だけど、足を止める事は出来なかった。一度足を止めてしまったら、走り続ける事を諦めてしまったら、もう二度と前に進めなくなると分かっていたから。

『これでやっとアレ・・に価値がついたな』

『アルベールとは会わないでと、何度言ったら分かるの?あの子を懐柔して、何を企んでいるの?』

聞きたくない。
見たくない。
私はもう、貴方達には期待しないと決めたの。
何も望んだりしない。

『我が家の恥だ』

『お前の顔なんて二度と見たくない』

だから、貴方達も私に何も期待しないで……!

『その綺麗な顔をこれ以上殴らせるなよ。歪んだらお前を娶った意味が無くなるからな』

止めて止めて止めて止めて!
貴方なんて大嫌いよ
お願いだから私に触らないで……っ
触ら…………


『すまない、マリアンヌ。今日をもって君との婚約は白紙にさせてもらう。私は真実の愛に目覚めてしまったんだ』


フェリクス……さま……

足が止まりそうになる。
諦めてしまいそうになる。
もう生きていても、意味なんて無いんじゃないかって。
だって。


――――私を必要としてくれる人なんて、誰もいないのだから。


もう休んでもいい?
もう楽になってもいい?
もう

頑張らなくてもいい……?



走っていた速度が落ちて、今にも倒れてしまいそうになりながら、フラフラと前に進む。
もう走れない。
だって、苦しくて苦しくて堪らないの。

私、もう………………





『マリアンヌ!』





暗闇の中に差し込んだ、一筋の光。
それは眩い銀色の光で、まるで夜空に浮かぶ月のよう。

手を伸ばせば、しっかりと握り返された。
温かくて、愛おしくて。
握り返してくれた、この手は誰のもの?


『……様は、どうしてここへ?』

『どうして?……勿論、君を迎えに来たんだよ』


胸の痛みが、苦しさが消えていく。
私が必死に自分の足を速めようとしたら、そっと優しく手を引いてくれた。

『姉上!』

小さな手が私の背中を押してくれる。
振り返れば、まだ幼かった頃のアルベールが、にぱっと笑いながら私の背中を押して走っていた。

走っても、辛くない。
足も、もう痛くない。

『僕は、姉上が居てくれて嬉しい』

満たされていく。

『……マリアンヌに、待っていて欲しい。そして戻ってきたら』


――――今度こそ、君を私だけの花嫁に。


暗闇の空間にビシッとヒビが入り、まるでガラスが割れた時のような音を立ててガラガラと崩れていく。
そうして、目の前に広がったのはあの日の七色に輝くステンドグラスの光。

真っ白なドレスに身を包んだ私と、白い礼装のフェリクス様。
神様に誓いを立てて、私とフェリクス様は晴れて夫婦となった。

『私は、ずっと貴方の隣に居たい。どうか私を……貴方だけの、花嫁に。』

そうして、フェリクス様から情熱的なキスをされて、私の中にはこれ以上ない程の幸福感でいっぱいになる。
耳に届く、沢山の大歓声。
大聖堂の前や街道を埋め尽くす国民達が、私とフェリクス様の結婚を笑顔で祝ってくれている。

良かった。
諦めなくて良かった。
走り続けて良かった。
どれだけ苦しくて、どれだけ辛く、惨めな気持ちになっても。


『私の、私だけのマリアンヌ。愛してる。君の今も、未来も、全部全部、私のものだ』


――――どうか、全部貰って下さい。

全部受け取って下さい。
私は全部貴方のものです。
私は、貴方に貰って欲しい。
貴方に受け取って欲しい。

貴方に。
フェリクス様に。


『愛してる。……君を愛してる、マリアンヌ。だから、どうか何処にも行かないでおくれ。私の傍に、隣に、ずっとずっと……っ』


何処にも行かない。
だって、私の居場所はここだもの。
フェリクス様の居るところが、私の居場所。

フェリクス様。
私、私は、貴方と出会えて、貴方と共に歩む事が出来て、幸せです。
幸せ過ぎて恐いくらいに。

フェリクス様、フェリクス様。
私も愛してます。
心から、貴方だけを――――……


……………………
…………


「マリアンヌ」
「……フェリクス、さま……?」

舞踏会が中断し、フェリクスに愛された日の翌日。
フェリクスに名を呼ばれて、マリアンヌが薄っすらと目を覚ました。
ぼんやりとしたマリアンヌを抱き締めたまま、こめかみや頬、唇に触れるだけのキスを落としていく。

そして、フェリクス様が私の右手首を甘く噛んだ。

一気に意識が覚醒すると同時に、私の顔が一気に赤く染まっていく。

フェリクス様は何度も何度も私の右手首を噛んだり舐めたり、ちゅうっと吸ったりして、私の身体に甘い痺れが広がっていく。

「フェリクス様……?」
「……消毒。マリアンヌは、私だけのものだから」
「……っ」

フェリクス様の言葉に、私の心が歓喜していた。
あまりに嬉しくて堪らなくて、私も恐る恐るフェリクス様の手首に触れる。

「マリアンヌ……?」

目を丸くしたフェリクス様が、可愛くて愛おしくて堪らない。

「私も……キス、しても……いいですか?」
「…………手首に?」
「……はい」

フェリクス様は、まだ信じられないというような顔をしていたけれど、私の前に右手首を近付けてくれた。

私は、その手首にキスをして、軽く舐めてから少しだけ歯を立てた。
頑張って吸ってみると、少しだけ赤い跡がついた。

それを見たフェリクス様の瞳が、まるで少年のようにキラキラと輝いている。

「……私を、欲してくれるのかい?」
「そ、その言い方は……っ」
「違うの?」
「~~~~っ。ち、違わない、です……」
「マリアンヌ……!」
「ひゃあっ」

フェリクス様にぎゅうぎゃう抱き締められて、少しだけ苦しかったけれど、私も嬉しくなって同じ様に抱き締め返す。

「フェリクス様」
「なんだい?」
「私、とっても幸せです。……フェリクス様の腕の中は、私だけのものです」

私が照れながらも思い切ってそう伝えると、フェリクス様は顔を真っ赤にして、私の頭に自身の顔をぽすっと埋めた。

「…………可愛すぎるよ、マリアンヌ。私を殺す気かい?」
「え?!ま、まさかそん…………ひゃっ?!」

何か熱くて硬いモノが身体に当たって、私は声を上げてビクリと身体を震わせた。
フェリクス様を上目遣いに見上げると、熱を帯びた青い瞳に見つめられて心臓がドキリと跳ねる。

「…… いいだろうか?」
「なっ……だ、駄目ですよ。だって昨日の夜にあれだけ……」
「マリアンヌが可愛すぎるから、こんなになってしまったのに?」
「ひぅっ♡」

フェリクス様の熱くて硬いモノが、ヌルリと私の股の間を滑っていく。
嗚呼、もう抵抗出来ない。

「……マリアンヌ。まだ起きるには少し早い。だから……」
「わ、分かりました。でも、本当に少しだけですよ?少しだけ―――」

ズプン♡♡

「ひゃああああっ♡♡」
「おかしいな。どうしてこんなに、すんなりと入ってしまったのだろうか?」
「だ、だめ……まだ、動いちゃ……♡♡」
「中はヌルヌルのトロトロだ。凄くうねってて……っ……マリアンヌも、欲しかったのかい?」
「ち、違うの……違っ……あぁっ♡♡」
「違う?……素直になれるように、いっぱい気持ちよくしてあげるよ」
「や、んん♡♡フェリクス、さま……♡♡」

こうして私は、朝からフェリクス様に何度も愛されてしまい、身も心も素直にさせられて、更にフェリクス様から愛されるという幸福過ぎる連鎖を繰り返してしまったのだった。


* * *
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