【R18】乙女ゲームの主人公に転生してしまったけど、空気になれるように全力を注ごうと思います!!

はる乃

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本編

弟が天使過ぎた件

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恐らく魅了の魔法の2番目の犠牲者。
アルフォンス・リトフォード。


え?私、またやっちゃった?
自己紹介以来、ご飯の時間以外ではほとんど会ってなかったのに。というか、会わないように避けてた筈なのに、弟になったばかりの天使アルフォンスが私を好きだと言ってきた。


「僕、アリス姉さまが大好きなんです!だから、僕と一緒に遊んでください!それが無理なら、一緒に勉強してください!」

「や、ちょっと待って?自己紹介の時から、まだ1週間と経ってないのに、どうして大好きって言えるの?無理しなくていいんだよ?」

「無理なんかしてません!僕は本当にアリス姉さまが好きなんです!!」

「こ……」


恐ええええ!!!
魅了の魔法マジで恐すぎなんですけど?!もう魅了しちゃったの?こんな幼気な天使をもう毒牙にかけたのかっ?!

やばいよ、もはや私、生きてる事が罪になるんじゃない?公害レベルだコレ。そりゃ学園のイケメン達もおかしくなるよ!同じ空間で呼吸するだけでやばいかもしれん!!


「あ、アリス姉さま?」

「んっ!(息止める)」

「え?ちょっ、姉さま?!何してるんです?!」

「ん~~!!(危ないから早く向こう行って!)」

「息止めてるんですか?!は、早く口開けて!!」

「んん~~!!(苦しいから早く逃げて!!)」

「姉さま?!顔色やばいですって!!早く息して!!」

「んぐっ……!!(あかん、もう無理)」

「だ、誰かー!!早く来てー!!」


そこで私は意識を失った。ギリギリまで抵抗した私を誰か褒めて欲しい。しかし、結局同じ空間で呼吸をしてしまったから、あまり意味はなかったのかもしれない。

目が覚めてみると、私は自室のベッドの上で、アルフォンスが涙目で私の側に座っていた。


「アルフォンス……?」

「姉さま!良かった、目を覚ましたのですね。……ごめんなさい、姉さま。ぼ、僕が姉さまに我が儘を言って、困らせてしまったから……」

「ち、違うのアルフォンス!貴方のせいじゃないのよ!」

「でも、姉さま……僕のお願いに答えるのが嫌だったから息を止めたのでしょう?」

「そんな訳ない!!私だって本当は天使みたいに可愛いアルフォンスと遊んだり勉強したりしたいけど、そんなに私の側に居たらアルフォンスに迷惑をかけちゃうから……っ?!」


そこまで言って、私は自分が重大なミスをしでかしてしまった事に気付いた。急いで口を噤むも、時既に遅し。私の本音を聞いたアルフォンスの瞳が、爛々と輝きだしてしまった。

「ね、姉さま。それ本当?姉さまは、ただ僕に遠慮してただけだったの?」

「ななな何の話?わ、私は何も言ってないわ!アルの幻聴よ!!」

「?!アリス姉さま、今僕のことをアルって……」

「あっ!ご、ごめんなさい、勝手に愛称で呼んだりして!あの、だから私はとっても図々しくて酷い女なの!だから私に関わらない方が…」

「姉さまが図々しくて酷い女?それなら、世の中の他の女性達は酷すぎて目も当てられないよ。……ねぇ、姉さま。もう一度僕のこと、愛称で呼んでよ」

「それは……」

「お願い、姉さま」

「う……」


アルフォンスが潤んだ瞳のまま、私にそう懇願してきた。天使に甘えるようにねだられて、逆らえる筈もない。私はあっさりと天使に陥落したのだった。


「……アル」

「嬉しい。これからは、ずっとそう呼んで欲しいな」

「……………………別にいいけど」

「やった!姉さま、大好き!!」

「うひゃ?!」



笑顔で抱きついてくる愛らしい弟に狼狽えながら、私はアルにこそ魅了の魔法が備わっているのではないかと疑うのであった。



* * *

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