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本編
私は馬鹿ではない!*フィリップside*
しおりを挟む私の婚約者が可愛すぎる。
いや、正確にはまだ私の婚約者ではないが。今日も可愛すぎるあまり、勢い余って求婚してしまった……
私はなんて愚かなんだ!求婚するなら、もっと場所とかシチュエーションとか色々考えたかったのに!!
……いや、逆に考えよう。これは布石だ。私もアリスもまだ子供。大人になるまでに、何度でも求婚しよう。一途に、誠実に、私が好きなのは、欲しいのはアリスだけだと伝え続ければ、アリスも私を好きになってくれるかもしれん。
それにしても、今日のアリスは本当に本当に可愛かった。今日は仮面をつけていなかったから、愛らしい素顔を見る事が出来たし、瞳も逸らさないでいてくれた。
宝石のように美しい瞳で、見ているだけで何度でも恋に落ちてしまいそうだったな。
「アリス……早く早く、私だけのものにしたい。そう言えば、アリスは精霊に興味があるようだったな。『ファイス』。居るか?」
私は『彼』の名を呼んだ。
すると、誰もいない空間から熱を感じない炎が舞い上がり、その中から赤い髪、赤い瞳の美丈夫が現れる。
炎を纏う彼はゆっくりとその赤い瞳を私に向け、口を開いた。
「我が主よ、俺に何か用か?」
現れたのは、私の契約精霊である火の最上位精霊ファイスだ。
アリスには文献でしか知らないと言ったが、致し方ない。王族である私は、おいそれと己の精霊の事を話す訳にはいかないのだ。
すまない、アリス。
だが愛してる。
「ああ。アリスが精霊に興味を持っていたようだから、少し訊いてみたくてな。ファイス、アリスは…」
「あの娘は闇の精霊に好かれている。それも、俺と同じ最上位の精霊だ」
「?!……闇の精霊に?」
「ああ。あの娘の魔力と余程相性がいいのか、変わった魂を好んでいるのか、片時も離れずにくっついているようだ」
「片時も離れずにだと……?!」
なんて羨ましいっ!!!
私だってアリスと片時も離れずにくっついていたいのに!!精霊だからってズルいじゃないか!!私のアリスにくっつくなんて……
いや、待て。片時も離れずに??
という事はだ。
寝ている時も着替えや風呂の時も………………………………………………………………………。
許 せ ん。
「……その闇の精霊を何とか引き剥がす事は出来ないのか?」
「無理だな。アイツは昔から気に入った人間がいると、その人間が死ぬまで離れない。下手をすれば、その人間が死した後もその魂に執着してついて行ってしまう。そして輪廻により再びその魂が肉体を得ると、またくっついて傍から離れない」
「……なんと言うか……」
それってただの変態ではないのか。
「ならば、その闇の精霊はずっと同じ魂の傍に居るのか?」
「いや。魂は何度か輪廻を繰り返すと、次第に劣化して最後には消えてしまう。それに、人間は生きていくうちに変わっていく生き物だ。最初は好ましい魂だったとしても、あまりに穢れてしまえば精霊も離れる。だからアイツも、ずっと同じ魂の傍に居る訳ではない」
「なるほど。……次に会った時、アリスに教えてあげた方がいいな」
「やめておけ」
「何故だ?」
「第三者の介入は闇の精霊の反感を買う。それに、あの娘なら自分から闇の精霊に接触し、対話するだろう。主が関わる事ではない」
「そうなのか……」
「ああ。勢い余った求婚を即座に断られたからといって、少しでも好感度上げようとしているのだろうが無駄な努力だ」
「?!!」
「我が主よ。俺は真っ直ぐで穢れない主の魂を気に入っているが、主は己が馬鹿であると自覚した方がいいぞ」
「私が馬鹿だと?!」
「最上位精霊と契約している者は、他の精霊の影響を受けない。だが、影響を受けていないのにソレだ。主は次期国王であろう?」
「影響を受けていないのにソレとは、どういう意味だ?」
さっぱり分からん。
「……真性の馬鹿という事だ。色恋は大概にしておけ」
「なっ!馬鹿という事と色恋は関係ないだろう?!大体私は馬鹿ではない!勉学は優秀だと言われているのだぞ?!」
ファイスは主である私の事をなんだと思っているんだ!!
「頭の良し悪しを言っているのではない。そういうところが馬鹿だと言うのだ。俺はもう行く。またな、我が主」
「ちょっと待て!そういうところとはどういうところだ!!ファイス……っ?!」
しかし、待てと言う私の言葉を無視して、ファイスは再び現れた熱のない炎の中へ消えてしまった。
だから、そういうところってどういうところだ?!
何故私が馬鹿だと言われるんだ?!
全く意味が分からん!!!
* * *
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