【R18】乙女ゲームの主人公に転生してしまったけど、空気になれるように全力を注ごうと思います!!

はる乃

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本編

私は馬鹿ではない!*フィリップside*

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私の婚約者が可愛すぎる。


いや、正確にはまだ私の婚約者ではないが。今日も可愛すぎるあまり、勢い余って求婚してしまった……

私はなんて愚かなんだ!求婚するなら、もっと場所とかシチュエーションとか色々考えたかったのに!! 


……いや、逆に考えよう。これは布石だ。私もアリスもまだ子供。大人になるまでに、何度でも求婚しよう。一途に、誠実に、私が好きなのは、欲しいのはアリスだけだと伝え続ければ、アリスも私を好きになってくれるかもしれん。


それにしても、今日のアリスは本当に本当に可愛かった。今日は仮面をつけていなかったから、愛らしい素顔を見る事が出来たし、瞳も逸らさないでいてくれた。
宝石のように美しい瞳で、見ているだけで何度でも恋に落ちてしまいそうだったな。


「アリス……早く早く、私だけのものにしたい。そう言えば、アリスは精霊に興味があるようだったな。『ファイス』。居るか?」


私は『彼』の名を呼んだ。
すると、誰もいない空間から熱を感じない炎が舞い上がり、その中から赤い髪、赤い瞳の美丈夫が現れる。
炎を纏う彼はゆっくりとその赤い瞳を私に向け、口を開いた。


「我が主よ、俺に何か用か?」


現れたのは、私の契約精霊である火の最上位精霊ファイスだ。
アリスには文献でしか知らないと言ったが、致し方ない。王族である私は、おいそれと己の精霊の事を話す訳にはいかないのだ。

すまない、アリス。
だが愛してる。


「ああ。アリスが精霊に興味を持っていたようだから、少し訊いてみたくてな。ファイス、アリスは…」

「あの娘は闇の精霊に好かれている。それも、俺と同じ最上位の精霊だ」

「?!……闇の精霊に?」

「ああ。あの娘の魔力と余程相性がいいのか、変わった魂を好んでいるのか、片時も離れずにくっついているようだ」

「片時も離れずにだと……?!」


なんて羨ましいっ!!!
私だってアリスと片時も離れずにくっついていたいのに!!精霊だからってズルいじゃないか!!私のアリスにくっつくなんて……

いや、待て。片時も離れずに・・・・・・・??
という事はだ。
寝ている時も着替えや風呂の時も………………………………………………………………………。

許 せ ん。


「……その闇の精霊を何とか引き剥がす事は出来ないのか?」

「無理だな。アイツは昔から気に入った人間がいると、その人間が死ぬまで離れない。下手をすれば、その人間が死した後もその魂に執着してついて行ってしまう。そして輪廻により再びその魂が肉体を得ると、またくっついて傍から離れない」

「……なんと言うか……」


それってただの変態ではないのか。


「ならば、その闇の精霊はずっと同じ魂の傍に居るのか?」

「いや。魂は何度か輪廻を繰り返すと、次第に劣化して最後には消えてしまう。それに、人間は生きていくうちに変わっていく生き物だ。最初は好ましい魂だったとしても、あまりに穢れてしまえば精霊も離れる。だからアイツも、ずっと同じ魂の傍に居る訳ではない」

「なるほど。……次に会った時、アリスに教えてあげた方がいいな」

「やめておけ」

「何故だ?」

「第三者の介入は闇の精霊の反感を買う。それに、あの娘なら自分から闇の精霊に接触し、対話するだろう。主が関わる事ではない」

「そうなのか……」

「ああ。勢い余った求婚を即座に断られたからといって、少しでも好感度上げようとしているのだろうが無駄な努力だ」

「?!!」

「我が主よ。俺は真っ直ぐで穢れない主の魂を気に入っているが、主は己が馬鹿であると自覚した方がいいぞ」

「私が馬鹿だと?!」

「最上位精霊と契約している者は、他の精霊の影響を受けない。だが、影響を受けていないのにソレ・・だ。主は次期国王であろう?」

「影響を受けていないのにソレとは、どういう意味だ?」


さっぱり分からん。


「……真性の馬鹿という事だ。色恋は大概にしておけ」

「なっ!馬鹿という事と色恋は関係ないだろう?!大体私は馬鹿ではない!勉学は優秀だと言われているのだぞ?!」


ファイスは主である私の事をなんだと思っているんだ!!


「頭の良し悪しを言っているのではない。そういうところが馬鹿だと言うのだ。俺はもう行く。またな、我が主」

「ちょっと待て!そういうところとはどういうところだ!!ファイス……っ?!」


しかし、待てと言う私の言葉を無視して、ファイスは再び現れた熱のない炎の中へ消えてしまった。


だから、そういうところってどういうところだ?!
何故私が馬鹿だと言われるんだ?!
全く意味が分からん!!!



* * *

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