【R18】乙女ゲームの主人公に転生してしまったけど、空気になれるように全力を注ごうと思います!!

はる乃

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本編

制作スタッフの回し者

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なんてこった。
何も解決出来ないまま週末になってしまった。

しかも今日は仮面をつける事も許されず、目を逸らす事も駄目だと言われた。という事はだ。つまり。


オワタ/(^o^)\


ただでさえチョロい第一王子殿下が、完全に魅了の魔法にかかってしまうという事。そしてそれがもしバレたら、私の人生がそこで終わる訳で。


「今日終わる可能性もあるのよね」


なので。
私は今、王城へ向かう馬車の中で最期の景色を満喫している。


「短い人生だったわ」


知らず知らずに汚い手(魅了の魔法)を使って侯爵であるお父様に引き取ってもらった訳だけど、私、幸せだったよ。例えそれが魅了の魔法の効果で得られた偽りのものだったとしても。
優しいお父様に、慕ってくれる天使のような弟アルフォンス。侍女のライラ……は魅了の魔法関係なかったのかよく分かんないけど、とても良くしてくれたし。
さよなら、大好きな私の家族。

こんにちは、クソゲー作ったクソ制作スタッフ。死んだら化けて出てやるから。夜道だけじゃなく寝所も気を付けろよ。マジで末代まで祟ってやっからな、このクソ野郎共がっ!!!


「うっ、ぐずっ。……な、泣いちゃ駄目。泣いちゃ駄目」


やがて馬車は王城に着き、私は静かに馬車を降りて前を向いた。
そうして今世に別れを告げながら、その時が来るのを覚悟したのだが―――



* * *


「王子殿下、今なんつっt……ゴホン。なんて仰られましたの?」

「だから、本来持っていない属性の魔法を使う方法だろう?勿論あるよ。それと私の事はフィーと呼んでいいと言っただろう?」


そう言って爽やかに笑う馬鹿に、私はうっかり『おっまえ本当にパーフェクトヒューマン!!』と褒めちぎりたくなったが、何とかその衝動をぐっと抑えた。

王城に着いた後、私は招待された庭園へ案内され、もう二度と会いたくないと思っていた第一王子であるフィリップ殿下と対面した。美しい花々が咲き誇る庭園のガゼボには美味しい紅茶とお菓子が用意されていて、形式など気にせず楽しもうと言われた私は、既に死ぬ覚悟だった為に思い切って質問したのだ。


『自分の持っていない属性の魔法を使用する方法はありますか?』と。


……………………

…………


「王子殿下。私ごときが殿下を愛称で呼ぶなど、あってはならない事です。……それで、持っていない属性の魔法を使うにはどうしたら良いのですか?」

「アリスは本当に固いな。だが、そんなところも私は……。っと、持っていない属性の魔法だったな。使用する方法はふたつある」

「ふたつも?!」

「ああ、ひとつは宝玉だ。各属性の魔力が込められた宝玉を使えば、自分の持っていない属性の魔法でも使用する事が出来る。水魔法を使いたいなら青い宝玉を、火魔法を使いたいなら赤い宝玉を、といった感じでな」

「なるほど。もうひとつは?」

「もうひとつはあまり現実的ではないが、精霊と契約して使用する方法だ。例え自分が水属性であっても、火の精霊に好かれて契約を結べば、精霊の力を借りて火属性の魔法を使用する事が出来る」

「精霊……?」


流石はファンタジーの世界!魔法にドラゴンときて、精霊ですか!
でもなー。そもそも宝玉なんて持ってないし、精霊と契約だってしてない。やっぱり魅了の魔法は私個人のスキルなの?スキルというか、呪いの域だけども。


「宝玉は持っていないと使用出来ない?」

「ああ、使用出来ない」

「精霊とも契約していないと駄目なんですよね?」

「いや……」

「違うんですか?」

「違くはない。本来ならば契約していないと使えない。だが、契約していなくても、精霊が勝手に魔法を使用する時もあると聞いた事がある」

「?!」


なんですと?!!


「精霊は気に入った人間がいると、例え契約をしていなくても、傍でその人間の手助けとなる魔法を行使する事があるらしい。まぁ精霊に好かれるなんて非常に稀な事だから、私も文献でしか知らないが」




それだーーーーーーーーーー!!!
つーか、絶対ソレでしょ?!!
そして魅了の魔法は闇属性だから、闇の精霊ってことだな?!!
制作スタッフの回し者が今世に居たなんて……!!!

そしてフィリップ殿下。
心の中で馬鹿馬鹿言っちゃってごめんね。本当にごめん。マジすまん。殿下のお陰で一筋の光明が見えたよ!!


「王子殿下」

「アリス、またその呼び……名……」


何故かフィリップ殿下が私を見て固まった。けれど、私はそんなことお構い無しで今の気持ちを伝えた。


「殿下のお陰で光明が見えました。ありがとうございます。感謝の意を込めまして、今日からはフィリップ殿下とお呼びする事をお許し下さいませんか?」

「い、いいだろう。許可する」

「ありがとうございます。フィリップ殿下」


ありがとう、ありがとう、フィリップ殿下!君は馬鹿じゃない。馬鹿じゃないよ!君の知識は本当に役立った!!これからは歩く広辞苑と……

はっ!大事な事を忘れていた!!


「フィリップ殿下、あの、少しお耳をお貸し下さい」

「な、なんだ?」


周りの人に知られたら良くないもんね!大丈夫、分かっているとも!!


「『こっそり』の意味を辞書で調べた方がいいですよ」

「?!」


こっそりの意味を知らなかったなんて、周りに知られたくないでしょ?
あれ?フィリップ殿下、どうかしたのかな?なんだか、眼差しが熱……


「アリス、結婚してくれ!!」

「?!」


おまっ?!なんてことをっ?!!
処刑フラグ確立すんなやクソ王子いいいいいいいいいいいいいいい!!!!!


* * *

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