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【第二話】本屋と進路希望と
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その日の放課後、私は本屋に来ていた。
ここは最寄りの本屋で一番大きいから客もまあまあいる。
でも今日はそこまで混んでいなかった。
今日は特に目的があるわけじゃない。
でも家から離れられるし一石二鳥。どうせ夕飯も買いに行かなきゃだったし。
多分今日も母親は男と遊びに行ってるのだろう。
「わ~本がいっぱい!」
「そりゃあ本屋だもん。」
零がはしゃぎ回る。
そのまま走ってどこかに行ってしまった。
…本、好きなのかな。
少し気になってついて行ってみると、
『お前でもわかる!薬剤師になる人のための本』
と言う本を手に持って読んでいた。
「うわー、懐かし~」
「…」
そうか、もう認めざるを得ないかもしれない。
今更だけど、彼女は確かに、
幽霊なのだ。
…じゃなきゃ、今の一瞬の『あの表情』、きっと、私には説明がつけられないから。
「私さ、夢なんてなくて、今が一杯一杯なのに、」
気づくと私はそう続けながら彼女の横に立っていた。
「なのに未来のことなんて、わかんないしって、進路希望もテキトーに書いて、飯もテキトーに済まして」
「…」
「私親に金もらったことなくて、いつもお金をくれるのは兄にいなんだけど、…あ、いや、兄あにで…」
私は彼女の持っている本を彼女の手から取った。
「なんか知らんけど、すっごい金送ってくるんだよね、毎回。だから金だけ余っててさ、だから…」
「……だから、…あー、なんて言うか、…この本、欲しい?」
自分でも自分がよくわからなかった。
何口走って、どうしてこんな行動をしているのか。
でも、…
その顔が、何だか放って置けなかった。
零は私の顔を見つめていた。その顔がいつものふざけた雰囲気じゃなくて、真面目だけど、でも堅苦しくもない、優しい感じで、…どこか、目が離せない。
「…別に、キミ好きなの買って良いんだよ?」
零は笑顔で返してきた。
なら、
「じゃあ、さ…」
「…教えてよ。将来、役立つかもだし」
少しの沈黙、
その沈黙を切ったのは
「…え~?そこまで言われちゃあ、仕方ないなぁー」
零だった。
「この本すっごくわかりやすいんだよ。初心者におすすめ」
「題名が読者貶してる感あるけどね」
「まあまあ♪」
ふふっ、と零が笑った。さっきとは違う笑顔。『いつもの笑顔』。
「てか、莉央ちゃんってにーさんのこと『にい』って呼ぶんだね、可愛い♪」
「うるさい」
そしてそのあとは特に他の本を見ずに、レジへと向かった。
その本は、意外と高かった。
その後の零のテンションもいつもより高かった。
でも、誰かと並んで夜道を歩くのは、初めての出来事だった。
そして、
あれから暫く経った私はと言うと——
「この計算はね…」
物理の勉強を教えていてもらっていた。
あの本はあの後二人で読んだけど、ドヤ顔で毎度毎度解説を入れてくる零の説明がすごいわかりやすくて複雑な気持ちになった。
そして今日、ついに…
「ねえ、零、さ…」
シャーペンを止める。
扇風機の音が耳に入った。
「ん?」
「…将来の夢って、あったの?」
私はこの質問をした。そしてその瞬間少し後悔した。
「んー、そりゃあ勿論ーー」
聞かないほうがよかっただろうか。
だって彼女は、過去の人で——
やっぱり——
「特になかったかも…?わからん!!」
「は?」
は?
私は目を見開いた。笑顔で答えるれにますますついていけなくなる。
「…え、薬剤師とかじゃ…」
「え?薬剤師?薬剤師は考えたこと無かったかもなあ」
「……はぁ????」
混乱も混乱でいいところだ。
話が違う。
「えー?なになに、薬剤師志望者向けの本読んでて勘違いしちゃった~?」
そのにやけ顔に私の熱が上がる。
「~~~~っ!!!!」
「私ねー、昔っから薬に詳しいんだよ。だから薬剤師の本とかもよく読んでたなあ」
「おまっ、本当に…!!」
恥ずかしい気持ちも、怒りに変わる。
思わず少し立ち上がってしまった。
「私の気持ち返せよ!」
「えー?しらないよおー」
「もうっ」
私は勢いよく机にのめり込んだ。
もう知らん。
「ねえー、怒った~?」
やはり、陰キャと陽キャは交われない運命なのだ。
そうだ。そうなんだ。今までもそうだったじゃないか。何を今更。バカか私は。
私は無視を決め込んだ。
ーー同時刻
高層マンションにて、動画編集を終えた男が一人。
「…」
目標は無い。
ただ、二人の夢だから。
ただ、二人の夢だったから。
それだけ、たったそれだけ、されどそれだけ。
「…アイツ、『マジで!?っすっご!!天才じゃん!!』とか言うんだろうな」
今日の天気は快晴。
まだ暑さの残る風が、街の木を揺らしていた。
ここは最寄りの本屋で一番大きいから客もまあまあいる。
でも今日はそこまで混んでいなかった。
今日は特に目的があるわけじゃない。
でも家から離れられるし一石二鳥。どうせ夕飯も買いに行かなきゃだったし。
多分今日も母親は男と遊びに行ってるのだろう。
「わ~本がいっぱい!」
「そりゃあ本屋だもん。」
零がはしゃぎ回る。
そのまま走ってどこかに行ってしまった。
…本、好きなのかな。
少し気になってついて行ってみると、
『お前でもわかる!薬剤師になる人のための本』
と言う本を手に持って読んでいた。
「うわー、懐かし~」
「…」
そうか、もう認めざるを得ないかもしれない。
今更だけど、彼女は確かに、
幽霊なのだ。
…じゃなきゃ、今の一瞬の『あの表情』、きっと、私には説明がつけられないから。
「私さ、夢なんてなくて、今が一杯一杯なのに、」
気づくと私はそう続けながら彼女の横に立っていた。
「なのに未来のことなんて、わかんないしって、進路希望もテキトーに書いて、飯もテキトーに済まして」
「…」
「私親に金もらったことなくて、いつもお金をくれるのは兄にいなんだけど、…あ、いや、兄あにで…」
私は彼女の持っている本を彼女の手から取った。
「なんか知らんけど、すっごい金送ってくるんだよね、毎回。だから金だけ余っててさ、だから…」
「……だから、…あー、なんて言うか、…この本、欲しい?」
自分でも自分がよくわからなかった。
何口走って、どうしてこんな行動をしているのか。
でも、…
その顔が、何だか放って置けなかった。
零は私の顔を見つめていた。その顔がいつものふざけた雰囲気じゃなくて、真面目だけど、でも堅苦しくもない、優しい感じで、…どこか、目が離せない。
「…別に、キミ好きなの買って良いんだよ?」
零は笑顔で返してきた。
なら、
「じゃあ、さ…」
「…教えてよ。将来、役立つかもだし」
少しの沈黙、
その沈黙を切ったのは
「…え~?そこまで言われちゃあ、仕方ないなぁー」
零だった。
「この本すっごくわかりやすいんだよ。初心者におすすめ」
「題名が読者貶してる感あるけどね」
「まあまあ♪」
ふふっ、と零が笑った。さっきとは違う笑顔。『いつもの笑顔』。
「てか、莉央ちゃんってにーさんのこと『にい』って呼ぶんだね、可愛い♪」
「うるさい」
そしてそのあとは特に他の本を見ずに、レジへと向かった。
その本は、意外と高かった。
その後の零のテンションもいつもより高かった。
でも、誰かと並んで夜道を歩くのは、初めての出来事だった。
そして、
あれから暫く経った私はと言うと——
「この計算はね…」
物理の勉強を教えていてもらっていた。
あの本はあの後二人で読んだけど、ドヤ顔で毎度毎度解説を入れてくる零の説明がすごいわかりやすくて複雑な気持ちになった。
そして今日、ついに…
「ねえ、零、さ…」
シャーペンを止める。
扇風機の音が耳に入った。
「ん?」
「…将来の夢って、あったの?」
私はこの質問をした。そしてその瞬間少し後悔した。
「んー、そりゃあ勿論ーー」
聞かないほうがよかっただろうか。
だって彼女は、過去の人で——
やっぱり——
「特になかったかも…?わからん!!」
「は?」
は?
私は目を見開いた。笑顔で答えるれにますますついていけなくなる。
「…え、薬剤師とかじゃ…」
「え?薬剤師?薬剤師は考えたこと無かったかもなあ」
「……はぁ????」
混乱も混乱でいいところだ。
話が違う。
「えー?なになに、薬剤師志望者向けの本読んでて勘違いしちゃった~?」
そのにやけ顔に私の熱が上がる。
「~~~~っ!!!!」
「私ねー、昔っから薬に詳しいんだよ。だから薬剤師の本とかもよく読んでたなあ」
「おまっ、本当に…!!」
恥ずかしい気持ちも、怒りに変わる。
思わず少し立ち上がってしまった。
「私の気持ち返せよ!」
「えー?しらないよおー」
「もうっ」
私は勢いよく机にのめり込んだ。
もう知らん。
「ねえー、怒った~?」
やはり、陰キャと陽キャは交われない運命なのだ。
そうだ。そうなんだ。今までもそうだったじゃないか。何を今更。バカか私は。
私は無視を決め込んだ。
ーー同時刻
高層マンションにて、動画編集を終えた男が一人。
「…」
目標は無い。
ただ、二人の夢だから。
ただ、二人の夢だったから。
それだけ、たったそれだけ、されどそれだけ。
「…アイツ、『マジで!?っすっご!!天才じゃん!!』とか言うんだろうな」
今日の天気は快晴。
まだ暑さの残る風が、街の木を揺らしていた。
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