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私はとてつもなく安定して悲しくなった。
私の水槽の中で今おそらく鯉が跳ねた。
そう感じると同時にやっと少し肩の力が抜けた。
私は水槽の底が外れていたのを発見したかのように潜っていった。
煙が私を捕まえる。
蜘蛛みたいなやつかもしれない。
ドンと窓を叩く音で目が覚めた。
まだ薄暗い。
誰かと思うと、昨日の少女だった。
私は戸を開ける。
少女はなんの気兼ねもないように体を滑り込ませる。
「ぐー、早いな、起きるの」私が少女を見下ろしながら話しかけた。
そうでもしないと、こいつはずっと黙っているようだった。
「うん。ここにいると思って。当たって良かった」
しかし山荘といえばここしかないだろう。
「…で、なんでこんなところへ来たんだ」
「え?ああ、走って」少女はあどけなく笑う。わざとなのかもしれない。
「違う、ここに来た理由を聞いているんだ」私は努めて低い声を出す。
「えーと、ここに来たいから?とか」
私は息をすっかり吐き切って、「もう出て行ったら?」と聞いてみた。
「なんで?」
「ここにいて欲しくないから」
「ヤダ」こんなことを言えるのは子供、いや年下の特権だ。
「それはワガママというんだ。帰れ」私は声を荒げた調子にする。
「ヤダ」
私は少女の腕を掴んで外に連れ出そうとした。
しかしありえないくらい細い腕から微かな力が伝わってきたものだから、やめた。
ここで引っ張ることができたなら、私はおそらく何にもならないただの人間だ。
少女は手を離されても「痛い」とは言わなかった。
俺は仕方がなくなって二階に上がった。
後ろから音が聞こえてきて、つけられているのが感じられた。
ギシギシと階段を鳴らして、初めて二階を訪れた。
ここも埃はなぜかあまりないように見えた。
しかし幾つかの部屋があるだけで、他はなんともなかった。
私はすぐ後ろを見ないようにしながら階段を素早く降りて外に出る。
当然少女も同じことをする。
どうしてしまおうかな、そんな考えが一瞬頭をよぎったが、横に飛ばした。
実際少し嬉しかったのだと思う。
私の水槽の中で今おそらく鯉が跳ねた。
そう感じると同時にやっと少し肩の力が抜けた。
私は水槽の底が外れていたのを発見したかのように潜っていった。
煙が私を捕まえる。
蜘蛛みたいなやつかもしれない。
ドンと窓を叩く音で目が覚めた。
まだ薄暗い。
誰かと思うと、昨日の少女だった。
私は戸を開ける。
少女はなんの気兼ねもないように体を滑り込ませる。
「ぐー、早いな、起きるの」私が少女を見下ろしながら話しかけた。
そうでもしないと、こいつはずっと黙っているようだった。
「うん。ここにいると思って。当たって良かった」
しかし山荘といえばここしかないだろう。
「…で、なんでこんなところへ来たんだ」
「え?ああ、走って」少女はあどけなく笑う。わざとなのかもしれない。
「違う、ここに来た理由を聞いているんだ」私は努めて低い声を出す。
「えーと、ここに来たいから?とか」
私は息をすっかり吐き切って、「もう出て行ったら?」と聞いてみた。
「なんで?」
「ここにいて欲しくないから」
「ヤダ」こんなことを言えるのは子供、いや年下の特権だ。
「それはワガママというんだ。帰れ」私は声を荒げた調子にする。
「ヤダ」
私は少女の腕を掴んで外に連れ出そうとした。
しかしありえないくらい細い腕から微かな力が伝わってきたものだから、やめた。
ここで引っ張ることができたなら、私はおそらく何にもならないただの人間だ。
少女は手を離されても「痛い」とは言わなかった。
俺は仕方がなくなって二階に上がった。
後ろから音が聞こえてきて、つけられているのが感じられた。
ギシギシと階段を鳴らして、初めて二階を訪れた。
ここも埃はなぜかあまりないように見えた。
しかし幾つかの部屋があるだけで、他はなんともなかった。
私はすぐ後ろを見ないようにしながら階段を素早く降りて外に出る。
当然少女も同じことをする。
どうしてしまおうかな、そんな考えが一瞬頭をよぎったが、横に飛ばした。
実際少し嬉しかったのだと思う。
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