細波

Nick Robertson

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目を開けるたび、辺りはいよいよ黒くなり、そしていよいよ灯がともる。
闇はこんな小さな文明によって切り裂かれた。
黒の美しさも、怖さも殺されて長い。
私はその時分にはもう頭がゆらゆら揺れて、目もぼやけて焦点が合わず、それでもしっかり頭を起こしていた。
片手をソファにつけると、そこがギイと鳴った。
私はそれに驚きもせずに、立ち上がる。
窓を閉めねばなるまい。
寒風が優しさを込めて恐る恐る足を伸ばしている。
私はそれを食いちぎるようにバタンと閉めた。
途端にヒュウという音も止み、もう一層静かになる。
静かになった後は、耳鳴りがしてきて、もっと、もっとうるさくなる。
そんな時には体も疼いて、私はボリボリと音を立てて肘や膝の内側やら首を掻き毟る。
血も出てきて、いよいよ爪は少し臭くなって、自分が生きている意味を問うて、そしてまた寝なければいかぬと思って、そんなことを繰り返して、無駄なことなんだと思って、それを心底うんざりするくらい繰り返したら、もう死ぬのだな、ということで完結してしまう。
そんな時には涙も出ない。
もう全てを受け入れて、飲み込んだ気になって、それで最後でさえ潔さを残そうとする。
もう十分そこの時点で重罪である。
それを分かっているからもう悪い悪くないどころではないのである。
私は何かを吐いてしまおうと考えた。
吐いて吐いて、そうして全てを忘れることができれば、またそうでなくても眠ることができるだけ疲れることになれば、それでもう満足、万々歳であった。
しかし開いた口からは喉の締め付けられたようなクゥといった音しかせず、唾さえもまけてくれはしない。
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