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みんなの視線が痛い。
「誰です、あなたは?」
先生の少し震えた声が響く。
「狐じゃないとすれば?」
生徒がざわついた、これで何度目だろう。
「狸のスパイだ!」誰かが叫んだ。

なんつー誤解だろう。
でも違うという証明のしようもないな。
俺はボスのところへ逃げ込むか考えた。
しかしそれでは猿との約束を果たせない。

「俺は、人間だ」
自分でこう言って、とても不思議な気分だった。
普通なら当たり前じゃんと馬鹿にされそうなものだ。
「人間?」
「人間!」
ここの生徒は騒ぐのが好きなのかな、と思ったところで分かった。

一人だけだと心細くなってしまうものだ。
多人数だと、えばっていろんなことを言うのだ。
自分が言ったのではない、全員の意見の一部として捉えられるからだ。
自分の言葉である、と浮き彫りにはされたくないものなのだ。
だから匿名を使うと一人でもえばることができる。

それは寂しい心地よさだ。
公開も後に立たない怖さもはらんでいる。
もし後々ばれたら?
そんなことを考えてしまってももうボタンを押してしまっていたりする。
それがインターネットの快楽と恐怖だ。

俺はこんな取り留めもないようなことを考えた。
仕方ないのだ。
昔自分には後悔したことがあるのだから。
それも、一つではなかった。

先生が肩を怒らしてつかつか進み出る。
「見回りはどうしたんだ!」
「かいくぐって来たんです」
「そんな簡単に、人間どもにやられるメンバーではない。やはりお前は狸か」
「いいや」

先生は俺を上から頑張って見下す。
俺小さいもんだから。
「それならなんでここに来たんだ!」
「あんたらを蹴散らそうと思って」
「蹴散らす!ほう、じゃあやるか?」
狐たちが一斉に構えた。
先生の牙が白く光る。
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