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「ここです、ヘイ、もういつもいつもスンマセン」鬼が謝りながら俺を洞窟に案内する」
「へえ、ここが宝の隠し場所?」
「へえ、へえ。全くおっしゃる通りで」鬼はまだ舌なめずりをしている。

今、ふっと視線を感じたが、誰もいない。気のせいだろうか。

それにしても暗いな。奥に何があるか分かんないじゃないか。
壁を触りながらゆっくり進んでいくと、ツルッと滑ってしまった。
うー、ここ水が溜まってるんだな。

俺はもっと恐る恐る歩き出した。
ガツと足に何か当たる。
触ってみると、確かに硬い。

「小判かなんか、みーっけ」
俺は調子づいてもっと奥へ行く。
すると小さな声が聞こえてくる。
「んー、んー」
「え?」
俺がそこへ行ってみると、柔らかい肌に触れた。

「おーい、人までさらったのか?」
「いや?昨日流れてきたから、とりあえず人質にしてみたんだ」
「とりあえずね…」

俺は紐をほどいた。
手と足と口まできっちり結ばれていた。
でもキチンと蝶々結びになっていたので解けたのだ。

外に連れ出すと、肌が真っ白で、体が細めの女だった。
俺は鬼に命令して全ての宝物を持ってきてもらった。

「そういえば物を盗むとき人は殺したのか?」
「当然!…な訳ないだろう?」
「じゃあどーやったの」
「そいつらは海にポイだ」

それじゃあ殺しているのと同じことだ、ぞっとするなあ。
「だが全員無事だと思う」
「どうして」
「大亀タクシーは四六時中運転してるからな」
へえ、そーなのか。

じゃあ流されてきた女はどうして乗れなかったんだ。この鬼テキトーだぞ。

俺は鬼に最後の命令を出す。
「この宝をクロールで庵治まで運ぶのだ」
どうして、二つ返事ができるのか、俺には理解できないな。
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