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ボールが勢いよく飛んでいく。
今度は相手全員の力もこもっているから怖い。
俺はもうダメだと諦めていた。
…もう、勝ちは決まったのだ、嘆いても仕方ない。
ドンと音がする。
俺は伏せていた顔を上げた。
音が鈍い!?
はっとゴールを見ると、仲間の一人が必死にゴールの上に被さって体を張ってボールを止めていた。
無論相手は力ずくで引きはがそうとしていたが、手でゴールの縁を鷲掴みにしていたので、なかなか取れなかったようだ。
しかし少しできた隙間にボールがグイグイとねじ込んでいく。
あまりにも痛そうだった。
でも歯を食いしばって耐えている。
これはもう、反則とか、反則でないとか、そういうものでも、それに試合でもない何かだ。
その何かがチームを奮い立たせる。
俺は凄い速さでそこに向かった。
自分のチームの何人かがすでにボールを取り外しにかかっていた。
術を使わないなら、体を使うしかない。
審判はどこで寝ていてもいいのだ。
試合は自分たちで進行させるものだ。
すぐに俺たち側のゴールは団子のようになっていた。
全員が張り付いていたのだ。
相手もこうなれば必死だ。
しかし俺たちはボールに密着していた。
グイと手応えが感じられる。
チーム全体の力が体から溢れ出してきて、名前も付いていない、つまり術ではない、力の塊が他の人のそれと混ざり合う。
黒い液体のようになって、それが増幅してきたとき、ふっと体が軽くなった。
周りが途端に静寂の中に落ち込む。
静かな、静かな空間が確かに出来上がった。
「ありゃ、おかしいな、あの顔。やばいなあ、術が破られたらしいや」遠距離君が相手の中で一番に悟った。
ボールがすっと抜ける。
俺達は相手を、それよりも相手のゴールを睨む。
俺の仲間の誰かが、ゴールの後ろのボードを蹴った。
ボードはバキバキに折れる。
そしてゴールは落ちる。
しかしもうそれは必要なかった。
俺達は直接出向いたのだ。
相手のゴールに向かって。
「うぉい。五人のダンクとか…!」
相手の誰かのつぶやきを誇らしく思う時間もない。
だが遠距離君はまだ隠し球を持っていた。
「背景魔法・消滅!」とんでもなく早口だ。
俺達が入れた、と思った時、ゴールは無くなっていた。
俺達は固まったまま床に落ちた。
そして底を貫いて土の中を進んでしまった。
「うわあ、行っちゃったね!でもボールはカエがあるから気にしないでよ!」
遠距離君がニコニコと「予備の」ボールを背中から取り出した。
「空間魔法だよ!」
そしてえいやっとゴールに向かって投げた。
ゴールは落ちているので、そこに向かって投げたわけだ。
ボールは勇んで地面すれすれを直進する。
俺たちも黙っているはずはない。
今頭上遥か上で何が起きているのかは分かっていた。
「あいつなんてズルいんだ」
俺達全員は感知能力も格段に上がっていた。
俺はすかさず地面に落ちているボールめがけて黒い力の塊の一部を投げつけた。
ボールがゴールに届く前に力の塊がそれを粉々にしていた。
力さえも何倍も強くなっている!
そして俺は別のところにももう一つ力の塊を投げつけておいた。
「グワッ」遠距離君が吹っ飛ぶ。
地面から黒い物体のオデマシだ。
反応しきれずにそのまま当たってしまったので遠距離君はすっかり気を失った。
まあそれでもすごいとは思う。
普通なら首ごと無くなるところだ。
俺達は上に飛んで試合場に戻った。
そして俺がチームを代表して最後の術を使う。
「イセクサ」
…
遠距離君ほど素早くはないが立派にゴールを作り上げることに成功し、そこにストンと入れた。
さっき落ちていった所は相手側のゴールの真下だったから、少しずらしたたけどこのゴールは相手チームのものと考えていいだろう。
試合は終わったのだ。
今度は相手全員の力もこもっているから怖い。
俺はもうダメだと諦めていた。
…もう、勝ちは決まったのだ、嘆いても仕方ない。
ドンと音がする。
俺は伏せていた顔を上げた。
音が鈍い!?
はっとゴールを見ると、仲間の一人が必死にゴールの上に被さって体を張ってボールを止めていた。
無論相手は力ずくで引きはがそうとしていたが、手でゴールの縁を鷲掴みにしていたので、なかなか取れなかったようだ。
しかし少しできた隙間にボールがグイグイとねじ込んでいく。
あまりにも痛そうだった。
でも歯を食いしばって耐えている。
これはもう、反則とか、反則でないとか、そういうものでも、それに試合でもない何かだ。
その何かがチームを奮い立たせる。
俺は凄い速さでそこに向かった。
自分のチームの何人かがすでにボールを取り外しにかかっていた。
術を使わないなら、体を使うしかない。
審判はどこで寝ていてもいいのだ。
試合は自分たちで進行させるものだ。
すぐに俺たち側のゴールは団子のようになっていた。
全員が張り付いていたのだ。
相手もこうなれば必死だ。
しかし俺たちはボールに密着していた。
グイと手応えが感じられる。
チーム全体の力が体から溢れ出してきて、名前も付いていない、つまり術ではない、力の塊が他の人のそれと混ざり合う。
黒い液体のようになって、それが増幅してきたとき、ふっと体が軽くなった。
周りが途端に静寂の中に落ち込む。
静かな、静かな空間が確かに出来上がった。
「ありゃ、おかしいな、あの顔。やばいなあ、術が破られたらしいや」遠距離君が相手の中で一番に悟った。
ボールがすっと抜ける。
俺達は相手を、それよりも相手のゴールを睨む。
俺の仲間の誰かが、ゴールの後ろのボードを蹴った。
ボードはバキバキに折れる。
そしてゴールは落ちる。
しかしもうそれは必要なかった。
俺達は直接出向いたのだ。
相手のゴールに向かって。
「うぉい。五人のダンクとか…!」
相手の誰かのつぶやきを誇らしく思う時間もない。
だが遠距離君はまだ隠し球を持っていた。
「背景魔法・消滅!」とんでもなく早口だ。
俺達が入れた、と思った時、ゴールは無くなっていた。
俺達は固まったまま床に落ちた。
そして底を貫いて土の中を進んでしまった。
「うわあ、行っちゃったね!でもボールはカエがあるから気にしないでよ!」
遠距離君がニコニコと「予備の」ボールを背中から取り出した。
「空間魔法だよ!」
そしてえいやっとゴールに向かって投げた。
ゴールは落ちているので、そこに向かって投げたわけだ。
ボールは勇んで地面すれすれを直進する。
俺たちも黙っているはずはない。
今頭上遥か上で何が起きているのかは分かっていた。
「あいつなんてズルいんだ」
俺達全員は感知能力も格段に上がっていた。
俺はすかさず地面に落ちているボールめがけて黒い力の塊の一部を投げつけた。
ボールがゴールに届く前に力の塊がそれを粉々にしていた。
力さえも何倍も強くなっている!
そして俺は別のところにももう一つ力の塊を投げつけておいた。
「グワッ」遠距離君が吹っ飛ぶ。
地面から黒い物体のオデマシだ。
反応しきれずにそのまま当たってしまったので遠距離君はすっかり気を失った。
まあそれでもすごいとは思う。
普通なら首ごと無くなるところだ。
俺達は上に飛んで試合場に戻った。
そして俺がチームを代表して最後の術を使う。
「イセクサ」
…
遠距離君ほど素早くはないが立派にゴールを作り上げることに成功し、そこにストンと入れた。
さっき落ちていった所は相手側のゴールの真下だったから、少しずらしたたけどこのゴールは相手チームのものと考えていいだろう。
試合は終わったのだ。
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