我儘女に転生したよ

B.Branch

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互助組合に登録します 1

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「ここが互助組合ギルドね」

「グルル」

私が呟くと、足元の真っ白いひょうのような魔獣が返事をした。

この子は従魔だ。
ベルタが探してきてくれました。
どんなツテ・・を持っているのでしょうか、、、やっぱりベルタさんは侮れないですね。

従魔とは特別な調教を施され、魔具である首輪を付けることにより従魔契約を結ぶことができる。
人語を理解し、命令には忠実に従う。

互助組合ギルドに行くことには納得したベルタだったが、私が1人で行くことには納得してくれなかった。
護衛なしに街に出ることなどあり得ない、と猛反対されたのだ。

そこで、この子の登場だ。
護衛をこっそりと雇うというのも無理があるし、信用できる護衛を探すことも難しい。
だが、従魔であれば秘密を漏らすこともなく、従順で戦闘能力も申し分ない。
万が一勝てない相手でも、私を乗せて逃げることが出来る。
この子の足の速さに敵うものはそうはいないので、完璧な護衛と言えるだろう。
因みに名前は、ディーター君にした。

「本当にいろいろな人がいるわね」

互助組合ギルドの建物の扉は開け放たれ、多種多様な人々が騒々しく出入りしている。
そんな喧騒を拾って、私の頭上に長く伸びた耳は敏感に反応しピョコピョコと動いていた。

そう、今私の頭にはまごう事なきうさ耳が生えていた。
この耳は仮面に付属している。
顔の半分以上を隠す仮面とこのうさ耳は私を別人にしてくれていた。

しかも、この付属の耳は高性能で実際に頭から生えているように見えるばかりか、実際に聞く事も出来た。
仮面と髪で本当の耳は見えないので、私は今周りからは獣人に見えていることだろう。

兎と豹の組み合せでは完全に獲物と捕食者だが、まあ、安全確保と身分がばれる危険を防げるなら多少目立つのは仕方ないと思おう。
事実、私が互助組合ギルドの門をくぐると沢山の人の目を感じた。

この世界では獣人だけならば珍しくなく、普通に暮らしている。
貴族社会にはいないが、街には普通に住んでいるし商いを行っている者もいる。
冒険者にも多いので、当然この互助組合ギルドにも数多く出入りしていた。

「初めてなのですが、登録お願いできますか?」

皆の視線を浴びながらも列に並び、漸く窓口まで辿り着いた。

「はい、この用紙に必要事項を記入してください」

受付の女性が事務的な口調で告げる。

「分かりました。どこか別の場所で記入した方がいいですか?」

「え?いえ、ここで結構ですよ」

事務的で無表情だった受付の女性が不思議そうにこちらを見てくる。

「ああ、だから、、、」

なるほど、受付にかなりの長い列が出来ているのは、1人辺りの応対時間が長いからのようだ。
受付窓口は6個もあるのに列の長さは一向に解消されていない。

それは受付のお姉さんも疲れて無表情になりますよね。
ご苦労様です!

「あの、何か?」

不思議そうだったお姉さんの顔が不安そうな表情に変わる。
無表情な時とは違いかなり若く見える。

「いえ、大した事ではありません。長い列が出来て大変だろうな、と思っただけです。すぐに用紙に記入しますね」

当たり障りのない言葉を掛け笑顔を向けると、なぜかお姉さんの肩がプルプルと震え出した。

「え、ど、どうかしましたか?」

ガタンッ、とお姉さんが突然椅子から立ち上がった。

「そうなんです!!本当に毎日毎日大変なんです!!列は途切れないし、文句は言われるし、仕事が終わらないからお昼を食べる暇もないのに皆勝手な事ばかり言って、もう、もう、耐えられません!!」

お姉さんが切れました。
これは相当ストレスを溜め込んでいたようですね。
私の不用意な?一言が引き金になってしまったらしく、愚痴が止まりません。

互助組合ギルド長に言っても、分かったとしか言ってくれないし、夜中にご飯食べてたら太ってきたし、吹き出物も出来るし、彼氏も出来ないのよ~~」

うん、最後のはお姉さんの心の叫びですね。

ああ、お姉さんが泣き出しちゃいました。
どうしましょう?誰か!、と思って周りを見回すと、他の受付のお姉さん達まで共感して怒ったり泣いたりしている。
皆、ストレス溜まってたんですね、、、

只今互助組合ギルドは業務停止状態です。
、、、私のせい?違いますよね?ね?

救いを求めて足元の従魔ディーターを見ると、静かに目線を逸らされた。
う、私のせいってことですか?
なんだか周りの人々の視線も私を責めているような気がします、、、なぜだ~~

「何事だ!?」

誰もが為す術もない状態の互助組合ギルド内に男の声が響き渡った。

互助組合ギルド長!」

誰かがホッとしたように男を見て叫んだ。
皆、助けを求めるように現れた互助組合ギルド長らしき男に目を向ける。

「クラーラ、なんの騒ぎだ?」

一番大泣きしている私の前の受付のお姉さんに互助組合ギルド長が声を掛ける。

「ウ、ヒック、だっで、もういやなんです~!」

「ハァ、よく分からんがちょっと来なさい。他のものは業務を再開するように!」

互助組合ギルド長は皆に一喝し、クラーラさんを別室へと促す。
クラーラさんの受付に並んでいた者達は、不平を言いながらも他の列にバラけて行く。

仕方ない、私も並び直すしかありませんね。

「この人も行ぎまず」

ガシッ

ん?なぜか、クラーラさんが私の腕を掴んでいます。

「え?私は、、、」

「この人も行ぎまず!」

私の言葉に食い気味で、クラーラさんが主張を繰り返した。

いやいやいや、私は今日初めてここに来て登録さえもまだしていない部外者ですよ?
どうしろと?困惑気味に互助組合ギルド長を見ると、ハァ、と溜息をつかれた。

「お嬢さんも来なさい」

ちょっと待ってください!う、思いのほか力が強くてクラーラさんの手を振り払えません。
ディーターを見ても、危険と見なされないのか助けてくれない。

そのまま私はズルズルと別室へと連行されたのでした。
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