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互助組合に登録します 2
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「それで、何があったんだ?」
別室に入ると、私と互助組合受付のクラーラさんをソファーに座らせ、互助組合長が騒ぎの理由を聞いてきた。
漸く泣き止んだクラーラさんは、ボソボソと訳を話す。
「、、、受付が混み過ぎて大変だって、以前からお話ししてますよね?」
「ああ、その件か、大変なのは分かるが泣かんでもいいだろう。仕事中だぞ」
互助組合長が呆れたようにクラーラさんを見る。
「でも、本当に大変なんです!!ねえ?!」
なぜか、クラーラさんが私に同意を求める。
いや、今日初めてお会いしましたよね?
よく知ってる常連さんみたいに扱われても困ります。
「いや、、う、はい、そうですね」
無関係を主張しようとしたが、クラーラさんの圧力が凄すぎて無理でした。
同意しか許されないみたいです。
「そうは言ってもなぁ、受付窓口は最大限増やしたし、もうこれ以上どうにもできんだろう。この王都は物資も豊富で道も整備されている。冒険者が拠点とするにはいいところなのだ。これからも人は増える一方だろう」
互助組合長の言葉に、クラーラさんは項垂れてしまう。
辺りにどんよりした空気が漂う。
う、息苦しいです。
「あの、一ついいですか?」
「なんだ?」
「なぜ、受付で用紙を記入させるのですか?」
空気を変えるために気になっていたことを聞いてみる。
「は?受付以外どこで書くって言うんだ?」
私の問いかけに、互助組合長は怪訝そうな顔をする。
「用紙を記入してから並んでもらえば、受付で時間を使わないのではありませんか?」
「ふむ、まあそうだが、用紙に記入するのは初めての者と依頼者だが、字が書けん者も多いから代筆も受付の仕事なのだ。それ以外に依頼を受ける手続きや依頼達成の手続きもしなくちゃならんし、互助組合への質問や仕事の相談に答えるのも受付の仕事だ」
なるほど、互助組合の受付はかなり大変な仕事のようだ。
クラーラさんが切れるはずです。
「案内係を作ってはどうですか?簡単な質問への対応はその人にお願いして、用紙への記入の説明や代筆もしてもらえば、受付の負担が減るのではありませんか?」
あとは、番号札を作ったり、受付窓口を用途別にしたりしたら少しはマシになるかな?
「なるほど、、、案内係か、、、」
「あ、それに、6日に1度くらい休みを取ってもらうといいと思います」
やっぱり定期的な休みは必要ですよね!
「いいんですか?!」
私の提案に無言で聞き入っていたクラーラさんは、「休み」という言葉に思い切り食い付いた。
私の肩をガクガクと揺さぶってきます。
だから、クラーラさん力が強いんですって!痛いから!
それに私に休みを決める権限はありませんよ?
「ふむ、考えてみる価値はあるかも知れんな」
互助組合長が興味深げに頻りに頷いている。
悪くない感触ですね!
これで少しは受付のお姉さん達の負担が軽減できればいいですね。
よし!というわけで、そろそろ登録に戻ってもいいですかね?
ヴィアベルとのお茶の時間までには帰りたいから、そんなにゆっくりもしていられないのです。
「ところで、お主は初めて見る気がするが?」
「あ、この方、新規登録に来られたんです」
クラーラさんがやっと私の当初の依頼を思い出してくれた。
「は?クラーラの知り合いじゃないのか!?お前は初対面の者を巻き込んで何を考えているんだ!」
「だって、皆文句ばっかりなのにこの人だけ優しく声を掛けてくれたんですよ!」
互助組合長の叱責に、クラーラさんが力説する。
いや、クラーラさん、私は「大変だろうな」としか言ってませんよ?
どれだけ心が弱ってるんですか?
変な男の人に騙されないようにくれぐれも気を付けてくださいね。本当に!
「あの、私登録に行きたいんですが、そろそろいいですか?」
「ああ、すまんな。時間を取らせた代わりにここで登録を済ませよう。用件は登録だけか?」
「いえ、ここで魔法の講習が受けられるって聞いてきたんですけど、受けられますか?」
良かった!ここで手続きしてくれるなら、早く終わりそうですね。
あまり遅くなると、ベルタが心配してここまで来るかも知れません。
「ふむ、魔法はどの程度使えるんだ?」
「いえ、使ったことはありません。全く初めてです」
「初めて?お主には魔力があるのか?魔力がなければ魔法は使えんぞ」
互助組合長が根本的な疑問を口にした。
それは任せてください!暴発するほど有り余ってます!ご安心を!
「大丈夫です。意識して使ったことはありませんが、感情が高ぶると魔力で家具調度が飛んだり壊れたりしますから」
「は?」「え?」
私が魔力があることを説明すると、互助組合長はあんぐりと口を開けて固まってしまい、クラーラさんは限界まで目を見開いてこちらを見ている。
あれ?何かおかしな事を言ったかな?
魔法についてのアマーリエの知識が無さ過ぎて、2人の反応の理由が分からない。
「えっと、、、この年まで魔法を習った事が無いのには少し事情がありまして、、、危険な事は分かっていたのですが、、、」
「そうじゃない!いや、そのことも問題だと思うが違うぞ!」
復活した互助組合長が私の言い訳を遮った。
「体内にある魔力の流れを意識し体外に発現させる、それが魔法の根本だ。意識せずに魔力が体外に放出されるなど普通ではありえない。そんな魔力量は異常だ!」
い、異常ですか、、、地味に落ち込みますね。
アマーリエが自分の力を恐れるようになった理由の発端なのだろう。
子供の頃から周りに奇異な目で見られれば、それは傷付きますよね。
「ああ、すまん、言い方が悪かった、、、」
私が暗い顔をしたせいか、互助組合長が謝ってきた。
「だが、お主の魔力量がかなり多いのは事実だ。魔力が体外に放出されるだけでなく、その魔力が力を持つとは、、、魔法の形を取らねば、普通魔力は力を発揮しないのだ」
「そうですよ!お城の魔術師団長か建国の英雄の魔法使い並みです!」
クラーラさんが大袈裟な事を言い出した。
流石に英雄はないでしょう。
「まあ、魔力量だけ多くても何も出来ませんので、、、」
「それでここに学びに来たという訳か。何か事情があるようだし詳しくは聞かんが、ここでは田舎から出て来た我流で魔法を使っていた者に基礎を教えているに過ぎない。魔力があるのに全く使った事がない者なんてほとんどおらんぞ」
え?習わないと魔法使っちゃ駄目だって本に書いてあったよね?いいの?!
「習わなくても使っていいんですか?!」
「まあ、良くはないが、田舎には学校などないからな」
そっか、じゃあ私も本見て練習すれば問題ないのかな?
「お主は駄目だぞ」
互助組合長が私の考えを読んで止めてくる。
「魔力量が多過ぎて下手に使用すると暴走する恐れもある。ここの講習で基礎を学んだら、ある程度のところまで俺が教える。野放しにして大変な事になったら困るからな」
野放し、、、なぜか最近よく言われますね。
まあ、互助組合長が直々に教えてくれると言うなら有難い話です。
「ご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします」
では、いろいろありましたが帰るとしましょう。
登録と講習の予約をして別室を後にする。
名前はイーナで登録した。
兎耳に仮面に従魔、という悪目立ちしまくりの私を何も聞かずに登録させてくれました。
ホッとして戸口に向かっていると、先程の騒ぎの影響か、明らかに周りの視線を感じる。
ザワザワと私の事を話しているようで、「兎仮面と魔獣」とか「クラーラを泣かせた」とか聞こえてくる。
やっぱり目立ってますね、、、自業自得感が半端ないです。
確実に兎耳は必要ありませんでした。
ベルタと深夜にこっそり変装グッズを見ていたら妙なテンションになってきて、仮面に耳が付いてるよ!?しかも聞こえるの!?凄い!これに決まりでしょ!と、なぜか2人とも思ってしまいました。
馬鹿ですね、、、深夜は魔の時間です。
でも、こんなに怪しさ満点でも意外と絡まれたりはしないんですね?
ん?皆私の足元を見てビクッとしてる?
下を見ると、冷たい目で辺りの人々を睥睨するディーターがいた。
コワッ!ディーター君、冷気出てるよ!
ハァ、なんだか凄く疲れました。
癒し(ヴィアベル)のために早く帰りましょう。
別室に入ると、私と互助組合受付のクラーラさんをソファーに座らせ、互助組合長が騒ぎの理由を聞いてきた。
漸く泣き止んだクラーラさんは、ボソボソと訳を話す。
「、、、受付が混み過ぎて大変だって、以前からお話ししてますよね?」
「ああ、その件か、大変なのは分かるが泣かんでもいいだろう。仕事中だぞ」
互助組合長が呆れたようにクラーラさんを見る。
「でも、本当に大変なんです!!ねえ?!」
なぜか、クラーラさんが私に同意を求める。
いや、今日初めてお会いしましたよね?
よく知ってる常連さんみたいに扱われても困ります。
「いや、、う、はい、そうですね」
無関係を主張しようとしたが、クラーラさんの圧力が凄すぎて無理でした。
同意しか許されないみたいです。
「そうは言ってもなぁ、受付窓口は最大限増やしたし、もうこれ以上どうにもできんだろう。この王都は物資も豊富で道も整備されている。冒険者が拠点とするにはいいところなのだ。これからも人は増える一方だろう」
互助組合長の言葉に、クラーラさんは項垂れてしまう。
辺りにどんよりした空気が漂う。
う、息苦しいです。
「あの、一ついいですか?」
「なんだ?」
「なぜ、受付で用紙を記入させるのですか?」
空気を変えるために気になっていたことを聞いてみる。
「は?受付以外どこで書くって言うんだ?」
私の問いかけに、互助組合長は怪訝そうな顔をする。
「用紙を記入してから並んでもらえば、受付で時間を使わないのではありませんか?」
「ふむ、まあそうだが、用紙に記入するのは初めての者と依頼者だが、字が書けん者も多いから代筆も受付の仕事なのだ。それ以外に依頼を受ける手続きや依頼達成の手続きもしなくちゃならんし、互助組合への質問や仕事の相談に答えるのも受付の仕事だ」
なるほど、互助組合の受付はかなり大変な仕事のようだ。
クラーラさんが切れるはずです。
「案内係を作ってはどうですか?簡単な質問への対応はその人にお願いして、用紙への記入の説明や代筆もしてもらえば、受付の負担が減るのではありませんか?」
あとは、番号札を作ったり、受付窓口を用途別にしたりしたら少しはマシになるかな?
「なるほど、、、案内係か、、、」
「あ、それに、6日に1度くらい休みを取ってもらうといいと思います」
やっぱり定期的な休みは必要ですよね!
「いいんですか?!」
私の提案に無言で聞き入っていたクラーラさんは、「休み」という言葉に思い切り食い付いた。
私の肩をガクガクと揺さぶってきます。
だから、クラーラさん力が強いんですって!痛いから!
それに私に休みを決める権限はありませんよ?
「ふむ、考えてみる価値はあるかも知れんな」
互助組合長が興味深げに頻りに頷いている。
悪くない感触ですね!
これで少しは受付のお姉さん達の負担が軽減できればいいですね。
よし!というわけで、そろそろ登録に戻ってもいいですかね?
ヴィアベルとのお茶の時間までには帰りたいから、そんなにゆっくりもしていられないのです。
「ところで、お主は初めて見る気がするが?」
「あ、この方、新規登録に来られたんです」
クラーラさんがやっと私の当初の依頼を思い出してくれた。
「は?クラーラの知り合いじゃないのか!?お前は初対面の者を巻き込んで何を考えているんだ!」
「だって、皆文句ばっかりなのにこの人だけ優しく声を掛けてくれたんですよ!」
互助組合長の叱責に、クラーラさんが力説する。
いや、クラーラさん、私は「大変だろうな」としか言ってませんよ?
どれだけ心が弱ってるんですか?
変な男の人に騙されないようにくれぐれも気を付けてくださいね。本当に!
「あの、私登録に行きたいんですが、そろそろいいですか?」
「ああ、すまんな。時間を取らせた代わりにここで登録を済ませよう。用件は登録だけか?」
「いえ、ここで魔法の講習が受けられるって聞いてきたんですけど、受けられますか?」
良かった!ここで手続きしてくれるなら、早く終わりそうですね。
あまり遅くなると、ベルタが心配してここまで来るかも知れません。
「ふむ、魔法はどの程度使えるんだ?」
「いえ、使ったことはありません。全く初めてです」
「初めて?お主には魔力があるのか?魔力がなければ魔法は使えんぞ」
互助組合長が根本的な疑問を口にした。
それは任せてください!暴発するほど有り余ってます!ご安心を!
「大丈夫です。意識して使ったことはありませんが、感情が高ぶると魔力で家具調度が飛んだり壊れたりしますから」
「は?」「え?」
私が魔力があることを説明すると、互助組合長はあんぐりと口を開けて固まってしまい、クラーラさんは限界まで目を見開いてこちらを見ている。
あれ?何かおかしな事を言ったかな?
魔法についてのアマーリエの知識が無さ過ぎて、2人の反応の理由が分からない。
「えっと、、、この年まで魔法を習った事が無いのには少し事情がありまして、、、危険な事は分かっていたのですが、、、」
「そうじゃない!いや、そのことも問題だと思うが違うぞ!」
復活した互助組合長が私の言い訳を遮った。
「体内にある魔力の流れを意識し体外に発現させる、それが魔法の根本だ。意識せずに魔力が体外に放出されるなど普通ではありえない。そんな魔力量は異常だ!」
い、異常ですか、、、地味に落ち込みますね。
アマーリエが自分の力を恐れるようになった理由の発端なのだろう。
子供の頃から周りに奇異な目で見られれば、それは傷付きますよね。
「ああ、すまん、言い方が悪かった、、、」
私が暗い顔をしたせいか、互助組合長が謝ってきた。
「だが、お主の魔力量がかなり多いのは事実だ。魔力が体外に放出されるだけでなく、その魔力が力を持つとは、、、魔法の形を取らねば、普通魔力は力を発揮しないのだ」
「そうですよ!お城の魔術師団長か建国の英雄の魔法使い並みです!」
クラーラさんが大袈裟な事を言い出した。
流石に英雄はないでしょう。
「まあ、魔力量だけ多くても何も出来ませんので、、、」
「それでここに学びに来たという訳か。何か事情があるようだし詳しくは聞かんが、ここでは田舎から出て来た我流で魔法を使っていた者に基礎を教えているに過ぎない。魔力があるのに全く使った事がない者なんてほとんどおらんぞ」
え?習わないと魔法使っちゃ駄目だって本に書いてあったよね?いいの?!
「習わなくても使っていいんですか?!」
「まあ、良くはないが、田舎には学校などないからな」
そっか、じゃあ私も本見て練習すれば問題ないのかな?
「お主は駄目だぞ」
互助組合長が私の考えを読んで止めてくる。
「魔力量が多過ぎて下手に使用すると暴走する恐れもある。ここの講習で基礎を学んだら、ある程度のところまで俺が教える。野放しにして大変な事になったら困るからな」
野放し、、、なぜか最近よく言われますね。
まあ、互助組合長が直々に教えてくれると言うなら有難い話です。
「ご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします」
では、いろいろありましたが帰るとしましょう。
登録と講習の予約をして別室を後にする。
名前はイーナで登録した。
兎耳に仮面に従魔、という悪目立ちしまくりの私を何も聞かずに登録させてくれました。
ホッとして戸口に向かっていると、先程の騒ぎの影響か、明らかに周りの視線を感じる。
ザワザワと私の事を話しているようで、「兎仮面と魔獣」とか「クラーラを泣かせた」とか聞こえてくる。
やっぱり目立ってますね、、、自業自得感が半端ないです。
確実に兎耳は必要ありませんでした。
ベルタと深夜にこっそり変装グッズを見ていたら妙なテンションになってきて、仮面に耳が付いてるよ!?しかも聞こえるの!?凄い!これに決まりでしょ!と、なぜか2人とも思ってしまいました。
馬鹿ですね、、、深夜は魔の時間です。
でも、こんなに怪しさ満点でも意外と絡まれたりはしないんですね?
ん?皆私の足元を見てビクッとしてる?
下を見ると、冷たい目で辺りの人々を睥睨するディーターがいた。
コワッ!ディーター君、冷気出てるよ!
ハァ、なんだか凄く疲れました。
癒し(ヴィアベル)のために早く帰りましょう。
応援ありがとうございます!
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