呪いから始まる恋

めぐみ

文字の大きさ
12 / 52

11

しおりを挟む

「もう少し君の表情を見ながら話がしたい…ダメか?」

低くてそれでいて甘さを帯びた声に心臓を鷲掴みにされたような緊張感が走る。怖い、とかではなくロックスさんからこんな声を発されている、そしてそれが自分に向けられているという事実に圧倒されてしまう。

「俺を怖がらないで…そうやってコロコロ変わる表情を見ていたいんだ」

ロックスさんはそんな気はないんだろうけど異性への免疫がない私には彼の言葉、動作、声色全てに過剰に反応して耳から熱くなる。

「も、もう…のぼせちゃいそうだから…お風呂、上がってからでいいですか?」

「ん、すまない。もうそんなに浸かってたか。つい夢中になってたな」

せめてこの裸で密着してる状態からは逃れようとそれらしい言い訳をする。そうすると私の体は軽々と抱き上げられて湯船から出された。

「じゃあ…髪だけ拭くから、体と着替えは大丈夫か?」

「…お願いします」

「あぁ、任せてくれ」

ロックスさんは洗い場に私を下ろすと、脱衣所への扉を開け、バスタオルに腕を伸ばす。そうして髪を洗ったとき同様丁寧な手つきで髪の水気を拭き取ってくれる。そしてタオルを手渡して脱衣所に戻るように促され、彼に言われるまま従った。

「着替えたら寝室に戻って…包帯を巻き直そう。君が着替え終わったら俺も向かうから」

「はい」

そうしてようやく1人になるが、今までの流れ───自分の家での出来事なのに彼がいるだけでまるで別の場所のように感じる。私にとって彼と過ごしている時間はそれくらい現実味を帯びていなかった。

(男の人とお付き合いくらいしておけばよかった…)

今の今まで経験を経てこなかったことを今になって後悔するハメになる。だってまさか突然看病と称して男の人にほぼ裸を晒すなんて思わないじゃないか。それに彼の甘やかすような仕草や声色にどうしていいかわからなくなる。しかしその一方で彼の体つきや触れ合いに欲情してしまう瞬間もある。チグハグな自分に頭を悩ませながら下着に足を通す。

(でもあの体つきは本当に凄かった…)

盛り上がった全身の筋肉が、血管の浮き出た筋張った腕が、厚い胸板が、私を甘やかすような大きな手が、思い出しては悶々とする。首を振って頭からそれを振り払うと服を着て寝室へと戻ろうとノブを回すところで手のひらに痛みが走る。ケガの存在を忘れていて油断していた分余計痛く感じた。

「った!」

思わず出た声に、勢いよく浴室のドアが開く。反射的とも言ってもいいその速さに驚きながらも、その音の主に目を向けると動揺した表情のロックスさんがいて私を見ると状況を察したようだった。

「大丈夫か?手のひら痛かっただろう。」

そっと私の手を取って優しい感触が包み込んだ。私の掌を確認して水ぶくれが潰れてしまってないか丁寧に確認する。

「大丈夫です、そんな…大したことないので…っ、ごめんなさい騒いだりして」

「怪我人なんだから遠慮することない、ごめんな。1日に治療できる力にも限度があって今日はそこまでしか治せなくて不便をかける」

「いいえ!ありがとうございます。あのケガじゃ普通ならきっと治療に一ヶ月以上かかってました」

ロックスさんは脱衣所から廊下への扉を開けて困ったように眉を下げて口元だけ弧を描いていた。どういう感情なんだろうかと首を傾げると彼の表情は意地悪な笑みへと変わる。

「さ、今から俺は着替えるが…まだここにいるか?


ロックスさんが腰に巻いたタオルに手をかけたところで慌てて脱衣所を抜け出した。背後から聞こえる揶揄うような笑い声に顔を赤らめながらその場を立ち去ることしか出来なかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...