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しおりを挟む「もう少し君の表情を見ながら話がしたい…ダメか?」
低くてそれでいて甘さを帯びた声に心臓を鷲掴みにされたような緊張感が走る。怖い、とかではなくロックスさんからこんな声を発されている、そしてそれが自分に向けられているという事実に圧倒されてしまう。
「俺を怖がらないで…そうやってコロコロ変わる表情を見ていたいんだ」
ロックスさんはそんな気はないんだろうけど異性への免疫がない私には彼の言葉、動作、声色全てに過剰に反応して耳から熱くなる。
「も、もう…のぼせちゃいそうだから…お風呂、上がってからでいいですか?」
「ん、すまない。もうそんなに浸かってたか。つい夢中になってたな」
せめてこの裸で密着してる状態からは逃れようとそれらしい言い訳をする。そうすると私の体は軽々と抱き上げられて湯船から出された。
「じゃあ…髪だけ拭くから、体と着替えは大丈夫か?」
「…お願いします」
「あぁ、任せてくれ」
ロックスさんは洗い場に私を下ろすと、脱衣所への扉を開け、バスタオルに腕を伸ばす。そうして髪を洗ったとき同様丁寧な手つきで髪の水気を拭き取ってくれる。そしてタオルを手渡して脱衣所に戻るように促され、彼に言われるまま従った。
「着替えたら寝室に戻って…包帯を巻き直そう。君が着替え終わったら俺も向かうから」
「はい」
そうしてようやく1人になるが、今までの流れ───自分の家での出来事なのに彼がいるだけでまるで別の場所のように感じる。私にとって彼と過ごしている時間はそれくらい現実味を帯びていなかった。
(男の人とお付き合いくらいしておけばよかった…)
今の今まで経験を経てこなかったことを今になって後悔するハメになる。だってまさか突然看病と称して男の人にほぼ裸を晒すなんて思わないじゃないか。それに彼の甘やかすような仕草や声色にどうしていいかわからなくなる。しかしその一方で彼の体つきや触れ合いに欲情してしまう瞬間もある。チグハグな自分に頭を悩ませながら下着に足を通す。
(でもあの体つきは本当に凄かった…)
盛り上がった全身の筋肉が、血管の浮き出た筋張った腕が、厚い胸板が、私を甘やかすような大きな手が、思い出しては悶々とする。首を振って頭からそれを振り払うと服を着て寝室へと戻ろうとノブを回すところで手のひらに痛みが走る。ケガの存在を忘れていて油断していた分余計痛く感じた。
「った!」
思わず出た声に、勢いよく浴室のドアが開く。反射的とも言ってもいいその速さに驚きながらも、その音の主に目を向けると動揺した表情のロックスさんがいて私を見ると状況を察したようだった。
「大丈夫か?手のひら痛かっただろう。」
そっと私の手を取って優しい感触が包み込んだ。私の掌を確認して水ぶくれが潰れてしまってないか丁寧に確認する。
「大丈夫です、そんな…大したことないので…っ、ごめんなさい騒いだりして」
「怪我人なんだから遠慮することない、ごめんな。1日に治療できる力にも限度があって今日はそこまでしか治せなくて不便をかける」
「いいえ!ありがとうございます。あのケガじゃ普通ならきっと治療に一ヶ月以上かかってました」
ロックスさんは脱衣所から廊下への扉を開けて困ったように眉を下げて口元だけ弧を描いていた。どういう感情なんだろうかと首を傾げると彼の表情は意地悪な笑みへと変わる。
「さ、今から俺は着替えるが…まだここにいるか?
」
ロックスさんが腰に巻いたタオルに手をかけたところで慌てて脱衣所を抜け出した。背後から聞こえる揶揄うような笑い声に顔を赤らめながらその場を立ち去ることしか出来なかった。
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