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翌日の治療で水ぶくれは治り、彼から甲斐甲斐しくお世話をしてもらう必要は無くなった。しかし、呪いが解けるまでは下手に動かないほうがいいと念押しをされる。
「3日前あの組織の人間はある程度始末したが残党がいてもおかしくはない。呪いの効果を後援者に公開するため呪いにかかった君を攫いにくるかもしれない。呪いのこともあるが君の身の安全のためにも君をそばで守らせてほしい。」
「どうしてそんなに良くしてくれるんですか…?私は、王子様と王女様…いってしまえばあなたの主君を殺した張本人なのに…」
自分で口にすると改めて事実としてのしかかる。そうだ、私は人殺し。罪のない子供を殺してのうのうと生きている。
「あれは君のせいじゃないと言っているだろう。君には殺す意思なんて無かった」
「だけどやった事実は変わりません…っ、あの子達の未来を奪ってしまった」
きっと美しい人生が待っていたはずなのだ。王族として日々学び、遊んで、そしていつかは素敵な人と出会い、充実した人生を送る。それを私の手はたった一つ、放る動作で奪ってしまった。
「それを言ったら俺だって毎晩考えてる。1番大事な任務だったのに…生まれてからずっと近くで見てきた大事な命を救うことができなかった。」
ロックスさんの沈んだ声に俯いた顔を上げると眉間に深く皺を刻んでひどく傷ついた顔をしていた。二週間ほど一緒に過ごしてきた私でさえこんなに罪悪感に蝕まれているのに彼らが生まれてきた時から仕えてきた彼の心労は窺い知ることもできない。
「でもそれはロックスさんのせいじゃ…」
「いや、俺は任務に失敗した。それだけで本来なら処刑ものだ…これほどの罪だ、どんな処罰だって甘んじて受けるつもりだ」
「それだってそもそもは私が火に投げ入れなきゃ…」
「君が拒否してたらそれはそれで君が殺されていた。王子達が助かろうが俺の責任で君が殺されてしまうことには変わりない。俺の任務は組織にさらわれた王子達の奪還と巻き込まれた一般人の救出だ。到着が遅かった時点で俺はもう詰んでいたんだ」
ロックスさんの自嘲的な言葉に私はそれ以上何も言えなくなってしまった。そんな私を見てロックスさんはフと笑って私の頭を撫でた。
「とは言っても君は納得しなさそうな顔だな。…なら、そうだな。今回の罪は君と俺とで一緒に背負おう…それならいいか?」
私がロックスさんに君のせいじゃないと言われても罪悪感が消えないように、私が彼にあなたのせいじゃないと言っても罪悪感は消えないのだ。その気持ちはお互いがお互い痛いほどに理解している。だからその痛みを分け合うという言葉は救いのようにも思えた。私の罪は消えない、彼の罪も。だけどそれを分け合おうと言ってくれたロックスさんの言葉と存在はありがたく感じた。瞳の奥が熱くなってそれを堪えるように奥歯を噛み締め、頷いた。
「それはそれとして…君に良くする理由か。それは君に恩があるから…とでも言えばいいかな」
ロックスさんの言葉に目を丸くした。助けてもらった私が恩を感じるならともかく彼が私に恩を感じてもらうようなことなんてしただろうか。
「まぁそれについては状況が落ち着いてから話そう。今は呪いを解くことが第一だ。君を攫った組織も万が一の際のために呪いを解く方法を掴んでいるかもしれない。もう少し彼らの建物内の資料を漁ってみる。それが片付くまではここを拠点にさせてもらってもいいか?俺たちの国はここからだいぶ離れていてな…円滑に作業をするためにもそうさせてもらえると助かる」
「それは、勿論です。私のためにしてくれているんですから…私ができることはなんでも言ってください」
「ありがとな…俺が留守にしてる間は俺の2人の部下が警護をしているから安心するといい。1人はセスという男でもう1人はフライヤという女騎士だ。」
護衛なんてつけられるのは初めての経験で妙に緊張してしまう。
「最初は王から君と接触するのは俺だけだと命じられていたが…彼らなら優秀な部下だからいいということだ。今呼んでるから…入ってくれ」
ロックスさんがドアに向かって声をかけると2人の男女が部屋に入る。1人は白髪で短髪の口に傷のある男の人だ。片目は眼帯をして、ガタイがよい彼に圧倒されているとニカっと無邪気な笑みを浮かべた。
「アンタが殿下の保護対象の人間のお姉ちゃんか。俺はセス・ファラク。殿下の下で兵を纏めさせてもらってる。」
分厚い手を差し出されるがその手も傷だらけでどんな過激な任務をこなしているのだろうと恐る恐る手を握った。ささくれだった男の人の手はロックスさんとはまた別の感触だった。
「セス、怖がらせてどうすんのよ。どうもレディ。殿下の下で女騎士を取り纏めているフライヤ・シュガールと申します。お困りの際はこの野蛮な男ではなく私をお頼りください」
もう1人の女性はセスさんを睨むと私にひざまづいて手の甲にキスを落とした。白銀の軍服に身を包んだ彼女は可愛いというより美人でかっこいい印象を受けた。後ろに一本に結んだ金髪はシルクのように滑らかだ。
「何がレディだ、ガサツ女のくせしといて猫被りやがって。すぐボロが出るのが目に見えてるだろ」
「あぁ!?なんつった?ガサツさはアンタには負けるわよセス!」
「おいいい加減にしろ2人とも。ベラが困惑している。すまないな…2人とも腕っぷしに関しては一級品なんだが仲がすこぶる悪くて」
取っ組み合いになりかねない気迫にロックスさんは深いため息をついた。
「2人とも君と同じく28歳だ。気楽に色々頼んだり聞けばいい。」
「ベラ・グリーンです。あの…今回はありがとうございます」
「気にするこたぁねぇよ…この度は気の毒だったな。怖い思いをしただろ」
「私たちがいる限り誰もあなたに手出しはさせません。安心して過ごしてください」
2人の優しくも心強い言葉はロックスさんの下で働いている人なんだと改めて実感する。知らぬ間に気を張っていたのか体の力が抜けてその場にへたり込んでしまう。
「べ、ベラさん!?大丈夫ですか?」
「すみません。安心、して…」
「3日前あの組織の人間はある程度始末したが残党がいてもおかしくはない。呪いの効果を後援者に公開するため呪いにかかった君を攫いにくるかもしれない。呪いのこともあるが君の身の安全のためにも君をそばで守らせてほしい。」
「どうしてそんなに良くしてくれるんですか…?私は、王子様と王女様…いってしまえばあなたの主君を殺した張本人なのに…」
自分で口にすると改めて事実としてのしかかる。そうだ、私は人殺し。罪のない子供を殺してのうのうと生きている。
「あれは君のせいじゃないと言っているだろう。君には殺す意思なんて無かった」
「だけどやった事実は変わりません…っ、あの子達の未来を奪ってしまった」
きっと美しい人生が待っていたはずなのだ。王族として日々学び、遊んで、そしていつかは素敵な人と出会い、充実した人生を送る。それを私の手はたった一つ、放る動作で奪ってしまった。
「それを言ったら俺だって毎晩考えてる。1番大事な任務だったのに…生まれてからずっと近くで見てきた大事な命を救うことができなかった。」
ロックスさんの沈んだ声に俯いた顔を上げると眉間に深く皺を刻んでひどく傷ついた顔をしていた。二週間ほど一緒に過ごしてきた私でさえこんなに罪悪感に蝕まれているのに彼らが生まれてきた時から仕えてきた彼の心労は窺い知ることもできない。
「でもそれはロックスさんのせいじゃ…」
「いや、俺は任務に失敗した。それだけで本来なら処刑ものだ…これほどの罪だ、どんな処罰だって甘んじて受けるつもりだ」
「それだってそもそもは私が火に投げ入れなきゃ…」
「君が拒否してたらそれはそれで君が殺されていた。王子達が助かろうが俺の責任で君が殺されてしまうことには変わりない。俺の任務は組織にさらわれた王子達の奪還と巻き込まれた一般人の救出だ。到着が遅かった時点で俺はもう詰んでいたんだ」
ロックスさんの自嘲的な言葉に私はそれ以上何も言えなくなってしまった。そんな私を見てロックスさんはフと笑って私の頭を撫でた。
「とは言っても君は納得しなさそうな顔だな。…なら、そうだな。今回の罪は君と俺とで一緒に背負おう…それならいいか?」
私がロックスさんに君のせいじゃないと言われても罪悪感が消えないように、私が彼にあなたのせいじゃないと言っても罪悪感は消えないのだ。その気持ちはお互いがお互い痛いほどに理解している。だからその痛みを分け合うという言葉は救いのようにも思えた。私の罪は消えない、彼の罪も。だけどそれを分け合おうと言ってくれたロックスさんの言葉と存在はありがたく感じた。瞳の奥が熱くなってそれを堪えるように奥歯を噛み締め、頷いた。
「それはそれとして…君に良くする理由か。それは君に恩があるから…とでも言えばいいかな」
ロックスさんの言葉に目を丸くした。助けてもらった私が恩を感じるならともかく彼が私に恩を感じてもらうようなことなんてしただろうか。
「まぁそれについては状況が落ち着いてから話そう。今は呪いを解くことが第一だ。君を攫った組織も万が一の際のために呪いを解く方法を掴んでいるかもしれない。もう少し彼らの建物内の資料を漁ってみる。それが片付くまではここを拠点にさせてもらってもいいか?俺たちの国はここからだいぶ離れていてな…円滑に作業をするためにもそうさせてもらえると助かる」
「それは、勿論です。私のためにしてくれているんですから…私ができることはなんでも言ってください」
「ありがとな…俺が留守にしてる間は俺の2人の部下が警護をしているから安心するといい。1人はセスという男でもう1人はフライヤという女騎士だ。」
護衛なんてつけられるのは初めての経験で妙に緊張してしまう。
「最初は王から君と接触するのは俺だけだと命じられていたが…彼らなら優秀な部下だからいいということだ。今呼んでるから…入ってくれ」
ロックスさんがドアに向かって声をかけると2人の男女が部屋に入る。1人は白髪で短髪の口に傷のある男の人だ。片目は眼帯をして、ガタイがよい彼に圧倒されているとニカっと無邪気な笑みを浮かべた。
「アンタが殿下の保護対象の人間のお姉ちゃんか。俺はセス・ファラク。殿下の下で兵を纏めさせてもらってる。」
分厚い手を差し出されるがその手も傷だらけでどんな過激な任務をこなしているのだろうと恐る恐る手を握った。ささくれだった男の人の手はロックスさんとはまた別の感触だった。
「セス、怖がらせてどうすんのよ。どうもレディ。殿下の下で女騎士を取り纏めているフライヤ・シュガールと申します。お困りの際はこの野蛮な男ではなく私をお頼りください」
もう1人の女性はセスさんを睨むと私にひざまづいて手の甲にキスを落とした。白銀の軍服に身を包んだ彼女は可愛いというより美人でかっこいい印象を受けた。後ろに一本に結んだ金髪はシルクのように滑らかだ。
「何がレディだ、ガサツ女のくせしといて猫被りやがって。すぐボロが出るのが目に見えてるだろ」
「あぁ!?なんつった?ガサツさはアンタには負けるわよセス!」
「おいいい加減にしろ2人とも。ベラが困惑している。すまないな…2人とも腕っぷしに関しては一級品なんだが仲がすこぶる悪くて」
取っ組み合いになりかねない気迫にロックスさんは深いため息をついた。
「2人とも君と同じく28歳だ。気楽に色々頼んだり聞けばいい。」
「ベラ・グリーンです。あの…今回はありがとうございます」
「気にするこたぁねぇよ…この度は気の毒だったな。怖い思いをしただろ」
「私たちがいる限り誰もあなたに手出しはさせません。安心して過ごしてください」
2人の優しくも心強い言葉はロックスさんの下で働いている人なんだと改めて実感する。知らぬ間に気を張っていたのか体の力が抜けてその場にへたり込んでしまう。
「べ、ベラさん!?大丈夫ですか?」
「すみません。安心、して…」
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