『転生勇者の俺、家族に正体を隠さず話した結果、家族も最強になった件』

アルさんのシッポ

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第1部 第2章「冒険者への道」

第10話「村の発展と新たな脅威」

第10話「村の発展と新たな脅威」


 僕は村長の家を訪ねた。
 村全体を豊かにするための、重要な提案があったからだ。
「村長さん、お時間いいですか?」
「おお、アレン。どうしたんだ?」
 村長が笑顔で迎えてくれる。
「実は、村のみんなのために提案があるんです」
 僕は真剣な表情で切り出した。
「村の各家庭から、最低一人は冒険者になってもらいたいんです」
 村長が驚く。
「冒険者に…?」
「はい。僕が魔の森に連れて行って、レベル上げを手伝います。冒険者になれば、依頼で収入を得られるようになるんです」
 村長が目を見開く。
「それは…しかし…」
「この村は貧しいです。でも、村人のみんなが冒険者として働けるようになれば、収入が増えて、生活が楽になります」
 僕は続ける。
「訓練は僕が責任を持ちます。危険な場所には僕が同行します。少しずつでいいから、村全体を強く、豊かにしたいんです」
 村長の目に涙が浮かぶ。
「アレン…お前は…」
「これが、僕にできる恩返しです」
 その日の夕方、村長が鐘を鳴らした。
 カンカンカン、と大きな音が村中に響く。
 村人たちが中央広場に集まってくる。約200人弱の村人たち。
「皆の衆、聞いてくれ」
 村長が前に出る。
「アレンが、素晴らしい提案をしてくれた」
 村人たちが僕を見る。
「アレンは、我々を冒険者にしてくれると言ってくれている」
 ざわつく村人たち。
「冒険者…?」
「俺たちが…?」
 僕が前に出た。
「各家庭から最低一人、冒険者になってほしいんです」
 村人たちが驚いた表情を見せる。
「訓練は僕が教えます。魔の森でのレベル上げも、僕が同行して安全を確保します」
 一人の中年男性が聞く。
「でも、俺たちみたいな農民が…冒険者になれるのか?」
「なれます。僕が直接教えれば、必ず強くなれます」
 僕は説明する。
「ただし、一つ言っておきたいことがあります。訓練だけでは、レベルはほとんど上がりません」
 村人たちがざわつく。
「レベルを上げるには、魔物などの命を断つ行為が必要だと広く信じられています。実際のところ、完全にそうとも言い切れないんですが…確かに魔物討伐が最も効率的なレベル上げ方法であることは間違いないです」
 別の若者が言う。
「でも…危険じゃないか?」
「最初は安全な場所から始めます。スライムやゴブリンなど、弱い魔物から。徐々に慣れていけば大丈夫です」
 僕は村人たちを見回した。
「この村を豊かにしたいんです。みんなが幸せに暮らせる村にしたい。そのためには、収入を増やす必要がある。冒険者なら、それができます」
 村人たちが顔を見合わせる。
 そして、一人、また一人と手を挙げ始めた。
「俺、やります」
「私も」
「家族のために、頑張りたい」
 最終的に、約50家族から48人が手を挙げた。
 村長が深々と頭を下げる。
「アレン…本当にありがとう…」
 村人たちも、次々と頭を下げる。
「ありがとうございます」
「この恩は忘れません」
 僕は慌てて手を振る。
「頭を下げないでください。僕も、この村で育ったんです。みんなで一緒に、村を良くしていきましょう」
 翌日から、村人たちへの訓練が始まった。
 まずは基礎体力作りと、魔力の感覚を掴む練習。
 僕は一人一人の背中に手を当て、魔力を流し込んでいく。
「これが魔力だよ。自分の中にも同じものが流れているから、感じてみて」
 村人たちが次々と、自分の魔力を感じ取れるようになっていく。
「おお…これが…」
「本当に感じる…」
 そして、身体強化魔法と空間収納魔法を教える。
 これらは無属性魔法だから、誰でも習得できる。
「この二つの魔法を教えることは、村の秘密にしてください」
 僕は真剣な表情で言った。
「誰彼構わず教えてしまえば、悪人の手にも渡る可能性があります。そうなれば、その力で苦しむ人が増えてしまう」
 村人たちが真剣に頷く。
「わかった」
「誰にも言わない」
「村の秘密だな」
 一週間後、48人全員が基礎的な魔法を使えるようになっていた。
「すごい…俺にも魔法が使える…」
「こんなに身体が軽くなるなんて…」
 次の段階は、実戦訓練。
 僕は村人たちを十人ずつのグループに分け、交代で魔の森に連れて行った。
「今日は、スライムとゴブリンを狩るよ。まずは僕が実演するから、よく見ててね」
 魔の森の入口付近には、レベルの低い魔物がいる。
 スライム、ゴブリン、ホーネット。
 初心者が経験を積むには丁度いい相手だ。
「スライムは動きが遅いから、初心者でも倒しやすいよ」
 実演して見せると、村人たちが挑戦する。
 最初は怖がっていたけど、徐々に慣れていく。
「やった! 倒せた!」
「俺も!」
 魔石を回収し、レベルが上がっていく。
 一人、また一人と、レベル5、レベル10と成長していく。
「すごい…俺、強くなってる…」
「これなら、冒険者として働けそうだ」
 二週間後、48人全員がレベル15以上になっていた。
 ただ、この時アレンは1つ気になる事があった。
 明らかに、家族と比べて、村人達は弱かったのだ。
 決して手を抜いて教えている訳では無かったが、何故かそれは明らかだった。
 兄の放つ風をまとった矢は大木でも貫通するが、村人の風の適性者達にそんな威力の者はいなかった。
 その他にも、無属性魔法の身体強化魔法で強化しても、アレンの家族達とは明らかに差があった。
 今回の指導から、双子の弟妹達にも身体強化魔法を教える事になったのだか、まあ理由は、珍しく双子が泣きながら頼んで来たので、母も兄姉も僕も、とてもじゃないが断れなかったからだ。
 その結果初めて身体強化魔法をかけた状態で、外周5キロを3周する朝のランニングに、最初からついて来られたのは、村人達ではなく、弟妹達だけだったのだ。 
 とは言え、村人達だけでイビルボアでも、討伐出来るようになったし、危険な魔獣が居ないかを確認するための、無属性魔法のサーチ魔法も教えた。
 そこまで配慮してくれたアレンに対して、村長は村人達を集めて、これから後の責任は本人次第だと、村人達に話してくれた。
 今後の事はアレンの責任をとうものではないと、説明してくれたのだ。
 村人達は真剣な顔で全員納得してくれた。
 そして、数日後村人達はグランベルの冒険者ギルドに登録。
 全員がFランクからスタートしたけど、それでも立派な冒険者だ。
「俺たち…冒険者になれた…」
「ありがとう、アレン…」
 村人たちは、簡単な依頼をこなし始めた。
 薬草採取、スライム討伐、荷物運搬。
 Fランクの依頼でも、報酬は一件につき銅貨五十枚から銀貨十枚。
 農業だけの収入と比べれば、格段に多い。
「今月、銀貨三十枚も稼げた…」
「家族が喜んでくれた…」
 村全体の雰囲気が、明るくなっていった。
 それと余談では有るが、冒険者を出せなかった家の者には、村からの補助金が出る事になった。
 実はアレンが村長に言って、そうしてもらったのだ。
 勿論負担はアレンが行っている。
 一ヶ月後、村長が再び僕を訪ねてきた。
「アレン、本当にありがとう。村が…変わった」
 彼の表情は、明るかった。
「村人たちの収入が増えて、食べ物に困る家がなくなった。子供たちも元気になった」
「良かったです」
「これも、全てお前のおかげだ」
 村長が深々と頭を下げる。
「これから、この村はもっと良くなる。お前が示してくれた道を、我々も進んでいく」
 僕は微笑んだ。
「村長さん、これが最初の一歩です。これから、もっとこの村を豊かにしていきましょう」
 その夜、家族で夕食を囲んでいると、村長が慌てて駆け込んできた。
「アレン! 大変なんだ!」
 村長の表情は深刻だった。
「隣村のフォレストンから、助けを求める使者が来た」
「フォレストン…?」
「ああ。盗賊団が村を襲っているらしい」
 村長が息を切らしながら説明する。
「盗賊団の規模は三十人ほど。村人たちでは太刀打ちできない」
「役人には通報したんですか?」
「したそうだが、兵士が到着するまで三日かかるという」
「三日…それまで持たないかもしれない」
「そうなんだ。それで…君たちに頼めないかと」
 僕は家族を見た。
 母さん、ソフィア姉さん、マルク兄さん。みんな真剣な表情で頷いている。
「行きましょう」
 母さんが言う。
「困っている人を助けるのが、冒険者でしょう」
 ソフィア姉さんも立ち上がる。
「私たちの力、試す時だね」
 マルク兄さんも決意の表情だ。
「みんなを守る」
 僕は村長に告げた。
「わかりました。今から隣村に向かいます」
「ありがとう…本当にありがとう…」
 村長が深々と頭を下げる。
 僕たちは装備を整え始めた。
 そして、僕は空間収納から特別な武器を取り出した。
 ミスリル製のレジェンドクラスの剣。前世で手に入れた、伝説級の武器だ。
「姉さん、これを使って」
 ソフィア姉さんに剣を渡す。
「え…これ…すごく綺麗…」
 剣は美しい銀色に輝き、魔力が宿っているのがわかる。
「ミスリル製のレジェンドクラスだよ。姉さんの炎魔法との相性も抜群なはずだ」
 次に、ミスリル製のレア短剣を二本取り出す。
「母さんと兄さんも、これを」
「私たちも…?」
「うん。万が一に備えてだよ。この時代、身体強化魔法を使えるものがほとんどいないから、それだけでも盗賊程度に負けるはずはないんだけど…僕は常に万が一に備えておきたいんだ」
 母さんとマルク兄さんが短剣を受け取る。
「ありがとう、アレン」
 そして僕は、家族全員に魔法をかけた。
「バリア・フィールド」
 家族を包む透明な結界が展開される。
「これは結界魔法だよ。敵の攻撃を防いでくれる」
 ソフィア姉さんが驚く。
「こんな魔法まで…」
「これで準備完了だね。行こう」
 双子は村長に預けて、僕たち四人はフォレストン村へ向かった。
 村人たちが見送ってくれる。
 この一ヶ月で冒険者になった48人も。
「アレン、どうかご無事で」
「必ず、みんなを助けてください」
 僕たちは村を出発した。
 フォレストンまでは、徒歩で二時間ほど。
 みんなで身体強化魔法をかけて、急ぐ。
「ブースト・アップ、マイルド」
 柔らかな光が家族を包む。
 道中、僕は作戦を考えていた。
 フォレストンが見えてきた所で、一度止まり神眼で確認した情報では、三十人の盗賊。
 リーダーがレベル42、幹部が5人でレベル30前後、残りはレベル15から25。
 戦術と連携が必要になる。
「姉さん、兄さん、母さん、聞いて」
 僕は三人に作戦を説明した。
「まず、兄さんが高所から狙撃。敵を分散させて」
「わかった」
「姉さんは僕と一緒に前衛。炎魔法で敵を牽制しながら、一人ずつ確実に倒していくよ」
「了解」
「母さんは後方で回復と支援。絶対に前に出ないでね」
 母さんが頷く。
「わかったわ」
「そして何より、無理はしない。危なくなったら、すぐに撤退するよ」
 三人が頷く。
 30分後、フォレストンの村が見えてきた。
 そして、煙が上がっているのが見えた。
「急ごう」
 村に近づくと、悲鳴が聞こえる。
 盗賊たちが、村人たちを脅している。
「金を出せ!」
「食料も全部だ!」
 村人たちが怯えている。
 僕は家族を見た。
「行くよ」
 三人が頷く。
 ヴァルトハイム家の、最大の戦いが始まろうとしていた。
 でも、僕たちには恐れはなかった。
 なぜなら――
 僕たちは家族だから。
 絆で結ばれた、最強の家族だから。
 フォレストン村の入口に到着すると、目の前には地獄絵図が広がっていた。
 家々からは煙が上がり、村人たちが広場に集められている。子供たちの泣き声、女性たちの悲鳴、男たちの怒号。
 そして、それを取り囲む盗賊たち。
 粗末な鎧を身に纏い、剣や斧を手にした男たち。顔には欲望と暴力が刻まれている。
「金を出せ!」
「食料も家畜も、全部だ!」
「逆らえば、どうなるかわかってるだろうな!」
 盗賊たちが村人を脅している。
 僕は神眼で敵の数と配置を確認した。
 盗賊は全部で三十二人。
 リーダーらしき男がいる。大柄で、傷だらけの顔。レベルは42。この男は賞金首で「血塗れのグレン」。金貨百枚の賞金がかかっている。
 幹部が五人、レベル30前後。全員が賞金首だ。
 残りはレベル15から25。その中にも賞金首が何人かいる。
 全部で賞金首は十一人。
 厄介だけど、不可能ではない。
「姉さん、兄さん、母さん」
 僕は家族を見た。
「作戦通りに行くよ。兄さんは村の外れの高台へ。そこから狙撃して、敵を混乱させて」
「わかった」
 マルク兄さんがミスリルの短剣を腰に差し、弓を手に、素早く移動していく。
「姉さんは僕と一緒に前衛。炎魔法で派手に攻撃して、敵の注意を引くよ」
「任せて」
 ソフィア姉さんがレジェンドクラスの剣を抜く。剣が美しく輝き、炎が剣身を包み始める。
「すごい…この剣…魔力がすごく通りやすい…」
「それがレジェンドクラスの力だよ」
「母さんは後方で待機。村人の治療と、僕たちの回復を頼むね」
「わかったわ。でも、無理はしないでね」
 母さんが心配そうに言う。
「大丈夫。僕たちは家族だよ」
 僕はソフィア姉さんと共に、村の広場に向かって歩き出した。
 盗賊たちが僕たちに気づく。
「おい、何だあのガキは」
「子供が二人…」
「迷子か? なら、捕まえて売り飛ばすか」
 盗賊たちが下卑た笑いを浮かべる。
 その瞬間――
 ヒュン。
 風を切る音と共に、一人の盗賊が倒れた。
 額に矢が刺さっている。
「な、何だ!?」
「狙撃だ!」
 盗賊たちが慌てる。
 マルク兄さんの狙撃が始まった。
 ヒュン、ヒュン、ヒュン。
 次々と矢が飛び、盗賊たちが倒れていく。
「どこから撃ってる!」
「見えねぇ!」
 混乱する盗賊たち。
 その隙を、僕は見逃さなかった。
「姉さん、行くよ!」
「うん!」
 二人で広場に飛び込む。
 ソフィア姉さんが大きく剣を振るう。
「フレイムスラッシュ!」
 レジェンドクラスの剣から放たれる炎の斬撃は、普段の倍以上の威力だ。
 五人の盗賊が一度に吹き飛ばされる。
「ぐあっ!」
「な、何だこの威力…!」
「炎魔法だと!?」
 盗賊たちの注意が、完全に僕たちに向く。
「ガキが! 舐めやがって!」
 十人ほどの盗賊が、僕たちに向かって突進してくる。
 僕は冷静に剣を構える。
「姉さん、左側頼むね」
「了解!」
 ソフィア姉さんが左側の盗賊五人と対峙。
 僕は右側の五人を相手にする。
 最初の盗賊が斧を振り下ろす。
 それを避けて、カウンター。
 一閃。
 盗賊の剣が折れ、倒れる。
 次の盗賊が剣で斬りかかる。
 それを受け流し、返す刀で胸を斬る。
 三人目、四人目、五人目。
 全て、一撃で倒していく。
 同時に、ソフィア姉さんも戦っている。
「フレイムブレード!」
 レジェンドクラスの剣に纏わせた炎は、通常よりも遥かに強力だ。
 盗賊の武器が溶け、鎧が焼ける。
「ぎゃあ!」
「熱い、熱い!」
 ソフィア姉さんが次々と敵を倒していく。
 一ヶ月の訓練と実戦の成果が、存分に発揮されていた。
 そして、マルク兄さんの狙撃も続く。
 ヒュン、ヒュン。
 高台から放たれる矢が、盗賊たちを正確に射抜く。
 わずか数分で、盗賊の数は半分になっていた。
 そして――
 ソフィア姉さんが、一人の盗賊を殴り飛ばした。
「えっ…?」
 姉さん自身が驚いている。
 その盗賊は、姉さんのパンチ一発で意識を失って倒れた。
 武器を使わず、素手で。
 僕も気づいた。
 身体強化魔法をかけた状態での、僕たちの身体能力。
 この時代、身体強化魔法を使える者がほとんどいない。
 つまり――
 僕たちは、武器がなくても圧倒的に強いんだ。
「姉さん、兄さん、母さん!」
 僕は叫んだ。
「武器をしまって! 素手で大丈夫だよ!」
 家族が驚く。
「えっ!?」
「身体強化魔法だけで、十分すぎるくらい強いんだ! 試してみて!」
 ソフィア姉さんがレジェンドクラスの剣を空間収納にしまう。
 そして、素手で盗賊に向かっていく。
 パンチ一発。
 盗賊が吹き飛んで、壁に激突。意識を失う。
「本当だ…!」


次回:第11話「圧倒的な力、そして報酬」


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