『転生勇者の俺、家族に正体を隠さず話した結果、家族も最強になった件』

アルさんのシッポ

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第1部 第2章「冒険者への道」

第11話「圧倒的な力、そして報酬」

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第11話「圧倒的な力、そして報酬」


 ソフィア姉さんが素手で次々と盗賊を倒していく。
 パンチ一発で意識を奪い、蹴り一発で吹き飛ばす。
「すごい…武器なんていらないんだ…」
 姉さんが驚きながらも、次の盗賊に向かっていく。
 僕も剣を空間収納にしまった。
 そして素手で戦い始める。
 盗賊が剣を振り下ろしてくる。
 それを手で受け止め――剣が砕ける。
「な、何だこいつ…!」
 盗賊が驚愕する。
 僕のパンチが盗賊の腹に入る。
 ゴッ、という鈍い音と共に、盗賊が倒れる。
 マルク兄さんも高台から降りてきて、弓を空間収納にしまった。
「僕も素手でやってみる」
 兄さんが身体強化魔法で強化された脚力で走る。
 盗賊に近づき、回し蹴り。
 盗賊が回転しながら吹き飛ぶ。
「うわあああ!」
 そして――
 母さんだ。
 後方で待機していた母さんが、一人の盗賊が村人に近づこうとしているのを見つけた。
「させないわ!」
 母さんが走る。
 そして、パンチ。
 ドゴォン、という凄まじい音。
 盗賊が五メートルも吹き飛んで、地面に倒れ込んだ。意識はない。
「え…私…こんなに…」
 母さん自身が一番驚いている。
 周囲の村人たちも、唖然としている。
「あ、あの優しそうなお母さんが…」
「一発で…」
 盗賊たちが、恐怖に怯え始めた。
「化け物だ…!」
「こんなガキども相手に…勝てるわけない…!」
「逃げろ!」
 盗賊たちが逃げ出す。
 でも――
 身体強化魔法をかけた僕たち家族から、逃げられるわけがない。
「逃がさないよ」
 僕は地面を蹴って、一瞬で逃げる盗賊に追いつく。
 肩を掴んで、地面に叩きつける。
「ぐあっ!」
 ソフィア姉さんも、三人の盗賊を同時に追いかける。
「待ちなさい!」
 一人ずつ捕まえて、縄で縛っていく。
 マルク兄さんは、森に逃げ込もうとした盗賊を追いかける。
 木々の間を身体強化魔法で素早く移動し、盗賊の前に回り込む。
「行き止まりだよ」
 盗賊が諦めて、その場に座り込む。
 母さんも、二人の盗賊を捕まえていた。
「もう悪いことはしないでね」
 優しく諭すように言いながら、縄で縛る。
 十分後――
 全ての盗賊が捕縛されていた。
 三十二人全員、誰一人逃げることができなかった。
 リーダーの「血塗れのグレン」も、僕が素手で倒して縛り上げた。
「くそ…化け物どもめ…」
 グレンが悔しそうに呟く。
 村人たちが、信じられないという表情で僕たちを見ている。
「すごい…」
「三十人以上の盗賊団を…四人で…」
「しかも素手で…」
 村長らしき老人が、涙を流しながら近づいてきた。
「ありがとうございます…ありがとうございます…」
 深々と頭を下げる。
「いえ、当然のことをしただけです」
 僕は周囲を見回した。
「みなさん、怪我をされた方はいますか?」
「は、はい…何人か…」
「母さん、お願いできる?」
「ええ、もちろん」
 母さんが怪我をした村人たちの治療を始める。
 緑の光が傷を癒していく。
「すごい…治った…」
「魔法で…」
 村人たちが感謝の涙を流す。
 ソフィア姉さんは、燃えている家の消火を手伝っていた。
 マルク兄さんは、盗賊たちが持っていた財宝を一箇所に集めていた。
「アレン、これ見て。すごい量だよ」
 金貨の入った袋、宝石、装飾品、武器。
 盗賊たちが略奪してきた物だろう。
「後で兵士に確認してもらおう」
 数時間後、マルク兄さんが再びグランベルの町に向かい、兵士を呼んできた。
 十人ほどの兵士が、驚いた表情で盗賊たちを確認している。
「本当に…三十人以上の盗賊団を…」
 兵士の隊長――前回と同じ隊長だった――が僕を見る。
「また、あなたですか…」
 彼は半ば呆れ、半ば感心したような表情だ。
「今回は四人で?」
「はい」
「…信じられん」
 隊長が盗賊たちを一人一人確認していく。
 そして、賞金首の手配書と照らし合わせる。
「これは…『血塗れのグレン』…金貨百枚の賞金首…」
 次々と確認していく。
「『双剣のバルド』…金貨七十枚…」
「『毒蛇のゼノ』…金貨二十五枚…」
「『鉄拳ゴロー』『疾風のジン』『炎のレッド』…各金貨十五枚…」
「『狂犬ダン』『隻眼ロック』『山賊キース』『人斬りサム』『盗賊王の右腕ガルス』…各金貨十枚…」
 隊長が驚愕の表情で僕を見る。
「賞金首が…十一人も…」
 彼は計算する。
「金貨百枚が一人、金貨七十枚が一人、金貨二十五枚が一人、金貨十五枚が三人、金貨十枚が五人…」
「合計で金貨二百二十枚です」
 僕が言うと、隊長が頷く。
「その通りだ。二億二千万ルピナ…」
 周囲の兵士たちがざわつく。
「二億…!?」
「こんな大金…」
 隊長が続ける。
「そして、この国の法律では、盗賊を討伐した者に、盗賊の全ての所有権が譲渡される」
「盗賊自身も…ですか?」
「ああ。一般的には、鉱山奴隷として売却される。一人につき金貨一枚が相場だ」
 三十二人。
 金貨三十二枚。
「ただし…」
 隊長が真剣な表情で言う。
「レベル上げのために、命を奪う者もいる。法的には問題ない」
 僕は首を振った。
「僕たちは、鉱山奴隷として売却する方を選びます」
 隊長が安堵したような表情を見せる。
「わかった。こちらで手配しよう」
 そして、盗賊たちが持っていた財宝を確認する。
「これは…盗賊たちが略奪してきた物だな」
 金貨の袋、宝石、装飾品、武器。
「合計で…金貨三十枚相当、宝石類が金貨二十枚相当、その他の品が金貨十五枚相当…」
 隊長が言う。
「これらも、全てあなた方のものだ。討伐者の権利として」
 僕は少し考えた。
「財宝の一部は、この村に寄付したいです。村は大きな被害を受けましたから」
 村長が驚く。
「そ、そんな…」
「金貨十枚を、村の復興資金として受け取ってください」
 村長の目から涙が溢れる。
「ありがとうございます…ありがとうございます…」
 隊長が頷く。
「では、そのように記録する」
 彼は全てを計算する。
「賞金:金貨二百二十枚」
「鉱山奴隷売却:金貨三十二枚」
「財宝:金貨六十五枚から寄付金貨十枚を引いて、金貨五十五枚」
「合計…」
 隊長が計算書を確認する。
「あなた方が受け取るのは、金貨三百七枚になります」
 3億700万ルピナ。
 母さんが信じられないという表情だ。
「そんなに…」
 ソフィア姉さんとマルク兄さんも、呆然としている。
 隊長が言う。
「後日、必ずお届けします。それと…」
 彼は深々と頭を下げた。
「王国から、正式な感謝状が送られるでしょう。これほどの功績…王都にも報告が行きます」
「わかりました」
 夕方、僕たちはフォレストン村を後にした。
 村人たち全員が見送ってくれる。
「本当にありがとうございました」
「命の恩人です」
「また困ったことがあれば、必ずお願いします」
 村長が深々と頭を下げる。
「あなた方は、我々の英雄です。この恩は、一生忘れません」
「いえ、困っている人を助けるのは当然のことです」
 僕たちは自分の村に向かって歩き始めた。
 道中、家族が興奮気味に話していた。
「私…素手で盗賊を倒せるなんて…」
 ソフィア姉さんが自分の手を見つめる。
「身体強化魔法って、こんなにすごいんだね」
 マルク兄さんも言う。
「僕も。蹴り一発で吹き飛ばせた」
 母さんが少し恥ずかしそうに言う。
「私も…あんなに力が出るなんて…」
 僕は説明する。
「この時代、身体強化魔法を使える人がほとんどいないんだ。だから、僕たちは武器がなくても圧倒的に強い」
「でも…」
 ソフィア姉さんが言う。
「さっきのレジェンドクラスの剣、すごく使いやすかった。魔力の通りが全然違う」
「それもそうだね。武器は武器で便利だから、状況に応じて使い分ければいいよ」
 母さんが心配そうに言う。
「でも、こんなに強いって…みんなに知られたら…」
「大丈夫だよ、母さん。僕たちは、悪用するつもりはない。困っている人を助けるために使うだけだから」
 マルク兄さんが言う。
「それに、身体強化魔法を教えたことは、村の秘密だもんね」
「うん。誰彼構わず教えてしまえば、悪人の手にも渡る。その力で苦しむ人が増えてしまう」
 ソフィア姉さんが頷く。
「わかった。秘密を守る」
 村に戻ると、双子と村人たちが出迎えてくれた。
「お帰りなさい!」
「みんな無事!?」
「ただいま。無事だよ」
 村長や村人たちも駆けつけてくる。
 この一ヶ月で冒険者になった48人も。
「どうでしたか?」
「盗賊団は?」
「全員捕まえました。三十二人、誰一人逃がしませんでした」
 村人たちが歓声を上げる。
「すごい!」
「さすがヴァルトハイム家だ!」
「それも…素手で倒したんですか?」
 一人の若者が興味深そうに聞く。
 僕は頷く。
「身体強化魔法があれば、武器がなくても十分戦えるんだ」
 村人たちが驚く。
「そんなに…」
「俺たちが習った身体強化魔法って、そこまですごいのか…」
「でも、このことは村の秘密だよ。外では絶対に言わないでね」
 村人たちが真剣に頷く。
「わかった」
「秘密を守る」
 その夜、村では盛大な祝宴が開かれた。
 この一ヶ月で冒険者になった村人たちが、自分たちの稼ぎで食材を持ち寄ってくれた。
「乾杯! ヴァルトハイム家に!」
「乾杯!」
 温かな笑い声と歓声が、村の夜に響く。
 村人たちが次々と話しかけてくる。
「アレン、今月も銀貨四十枚稼げたよ」
「俺は銀貨五十枚だ」
「家族が喜んでくれた」
「子供たちに、ちゃんとした服を買ってやれた」
 村全体が、明るく、豊かになっていた。
 僕は家族を見回した。
 母さんの優しい笑顔。
 ソフィア姉さんの誇らしげな表情。
 マルク兄さんの満足そうな顔。
 双子の無邪気な笑い声。
 これが、僕の守りたかったもの。
 これが、僕の二度目の人生で手に入れた宝物。
「ありがとう、セレスティア」
 心の中で、女神に感謝する。
「この家族に出会わせてくれて。この村に生まれさせてくれて」
 夜空を見上げると、一つの星が特に明るく輝いていた。
 まるで、女神が微笑んでいるかのように。
 そして僕は思った。
 村を豊かにするための第一歩が、確実に進んでいる。
 村人たちが冒険者になり、収入が増え、生活が良くなっている。
 今回の報酬――金貨307枚――も、村のために使おう。
 共同の施設を作ったり、農具を揃えたり、種を買ったり。
 村全体がもっと豊かになれば、みんなもっと幸せになれる。
 それが、僕の目標だ。
 家族と村人たちと一緒に、幸せな未来を作る。
 それが、僕の二度目の人生の意味なんだ。
 村長が立ち上がって、皆に向かって言った。
「皆の衆、今日はヴァルトハイム家の活躍を祝って乾杯したが、これは我々全員の勝利でもある」
 村人たちが静かに聞く。
「この一ヶ月で、我々の村は変わった。貧困に苦しんでいた村が、今では希望に満ちている」
 村長がしみじみと言う。
「これも全て、アレンが示してくれた道のおかげだ。我々も冒険者になり、収入を得て、家族を養えるようになった」
 村人たちが頷く。
「そうだ」
「アレンのおかげだ」
「これからも、この道を進んでいこう。村全体で、もっと豊かに、もっと強くなろう」
 村人たちが拍手する。
 温かな、心からの拍手。
 僕は少し照れながら、でも嬉しく思った。
 この村が、本当に変わり始めている。
 そして、これからもっと良くなっていく。
 双子が僕に抱きついてくる。
「お兄ちゃん、かっこよかった!」
「僕も大きくなったら、お兄ちゃんみたいになる!」
「私も!」
 僕は二人の頭を撫でる。
「レオもリナも、きっと強くなれるよ。でも、強さだけじゃなくて、優しさも忘れないでね」
「うん!」
 祝宴は夜遅くまで続いた。
 村人たちの笑顔、家族の笑顔。
 それを見ていると、心が温かくなる。
 前世では、一人で戦い、一人で裏切られ、一人で苦しんだ。
 でも、この世界では違う。
 家族がいる。
 仲間がいる。
 支え合える人々がいる。
 そして、その輪は徐々に広がっている。
 これが、僕が望んでいた世界だ。
 これが、僕の二度目の人生なんだ。
 その夜、ベッドに入る前に、窓の外を見上げた。
 満天の星空。
 その中で、一つの星が特に明るく輝いていた。
「セレスティア、見てくれてる?」
 小さく呟く。
「家族みんなで、またみんなを助けられたよ。村も、どんどん良くなってる」
 星が優しく瞬く。
 女神の微笑みを、感じた気がした。
「これからも、頑張るね。この村を、この地域を、もっと良くしていく」
 そして、僕は安らかな眠りについた。
 明日も、家族と一緒に。
 そして村人たちと一緒に。
 新しい未来を、作っていく。

次回:第12話「報酬の使い道と村の発展」

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