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第1部 第3章「村の繁栄」
第14話「ノエルの成長とクラフト魔法の可能性」
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第14話「ノエルの成長とクラフト魔法の可能性」
ノエルが家族になってから一ヶ月が経った。
その一ヶ月で、ノエルは驚くほど成長していた。
毎朝、家族全員で外周5キロを3周するランニング。
双子はまだ僕がバフをかけないとついてこられないけど、ノエルは最初から自分の身体強化魔法だけでついてきた。
訓練の後は、槍術の練習。
「えい!」
ノエルが槍を振るう。
その動きは、一ヶ月前とは比べ物にならないほど鋭い。
「いいよ、ノエル。槍の軌道が安定してる」
「本当?」
ノエルが嬉しそうに微笑む。
「うん。お父さんから教わった基礎がしっかりしてるからだね」
ノエルの表情が少し曇る。
でも、すぐに笑顔になる。
「お父さんとお母さんの分まで、強くなる」
その決意に満ちた瞳を見て、僕は胸が熱くなった。
「ノエル、今日グランベルに行って、冒険者ギルドに登録しようか」
「本当!?」
ノエルが目を輝かせる。
「うん。もう十分実力があるよ」
その日の午後、僕とノエルと母さんの三人で、グランベルの町に向かった。
ソフィア姉さんとマルク兄さんは、フォレストン村での訓練指導に行っている。
双子は村長に預けた。
冒険者ギルドに入ると、受付のミラさんが笑顔で迎えてくれた。
「あら、アレン様。今日は…」
ミラさんがノエルを見る。
「こちらの方の登録ですか?」
「はい。家族になったノエルです」
「家族…ですか」
ミラさんが少し驚く。
「はじめまして。ノエルです」
ノエルが丁寧に頭を下げる。
「では、ギルドマスターに確認してきますね」
しばらくして、ガルムさんが現れた。
「アレン、また家族が増えたのか」
「はい。幼馴染のノエルです」
ガルムさんがノエルを見る。鋭い目つきで、値踏みするように。
「いくつだ?」
「七歳です」
「七歳…アレンと同じか」
ガルムさんが腕を組む。
「では、実技試験を行う。訓練場に来い」
訓練場では、木製の人形が設置されていた。
「あの人形を、武器で破壊しろ」
ノエルが槍を構える。
町で買った、ノエル用の軽量の槍だ。
深呼吸。
そして、身体強化魔法を発動する。
「ブースト・アップ、マイルド」
柔らかな光がノエルを包む。
ノエルが駆け出す。
速い。
人形の前で槍を構え――突き。
ドンッ、という音と共に、人形の胴体に大きな穴が開いた。
貫通している。
ガルムさんが驚く。
「身体強化魔法…それも、かなりのレベルだ…」
彼は人形に近づき、穴を確認する。
「この威力…Eランク相当はある」
ノエルに向き直る。
「お前、いつから訓練を?」
「一ヶ月前からです」
「一ヶ月で…このレベルに…」
ガルムさんが僕を見る。
「お前が教えたのか」
「はい」
「…やはり、お前は普通ではないな」
ガルムさんが頷く。
「合格だ。Fランクを与える」
ノエルが嬉しそうに微笑む。
「ありがとうございます!」
「ただし」
ガルムさんが真剣な表情で言う。
「最初の一ヶ月は、アレンと一緒でなければ依頼を受けられない。いいな?」
「はい、わかりました」
ギルドを出ると、ノエルが嬉しそうに飛び跳ねた。
「やった! 私、冒険者になれた!」
「おめでとう、ノエル」
母さんも優しく微笑む。
「これから、家族みんなで冒険できるわね」
僕たちは村への帰路についた。
道中、ノエルが言った。
「アレン、クラフト魔法の訓練、もっとしたいな」
「うん、僕も。実は、考えてることがあるんだ」
「何?」
「村に、新しい建物を作りたいんだ。クラフト魔法で」
ノエルが目を輝かせる。
「本当!? 私も手伝う!」
「ありがとう。二人でやれば、きっとすごいものが作れるよ」
村に戻ると、村長に相談した。
「村長さん、クラフト魔法で建物を作ってみたいんです」
「クラフト魔法…?」
「はい。土魔法と生産系魔法を組み合わせた魔法です。これを使えば、短期間で建物を建てられます」
村長が驚く。
「そんな魔法が…」
「まだ練習段階ですけど、小さな建物なら作れると思います」
僕は提案する。
「まず、試しに小さな物置を作ってみます。それが成功したら、もっと大きなものに挑戦したいです」
「わかった。好きにやってくれ」
村長が頷く。
翌日、僕とノエルは村の外れに、小さな物置を作ることにした。
村人たちが興味深そうに見守っている。
「まず、設計図をイメージするんだ」
僕は説明する。
「高さ2メートル、幅3メートル、奥行き2メートルの物置」
「うん」
ノエルが頷く。
「次に、必要な土を集める」
僕たちは同時に土魔法を発動する。
周囲の土が集まってくる。
「そして、魔力で成形する」
集まった土が、魔力によって固まり、形を成していく。
壁、床、天井。
徐々に物置の形ができあがっていく。
村人たちが驚きの声を上げる。
「おお…」
「魔法で建物が…」
三十分後――
小さな物置が完成した。
土でできた、頑丈な物置。
扉も、土で作った。
「できた!」
ノエルが嬉しそうに叫ぶ。
「すごいよ、ノエル!」
僕も嬉しくなった。
村人たちが物置に近づいて、確認する。
「本当に…建物ができてる…」
「しかも、頑丈だ」
「これ、どれくらい持つんだ?」
「魔力で固めてあるから、普通の土壁よりずっと頑丈だよ。何十年も持つと思う」
村長が驚愕している。
「こんな魔法が…これがあれば…」
「はい。村の建物を、どんどん作れます」
僕は説明する。
「ただし、僕とノエル二人だけだと時間がかかります。だから…」
「だから?」
「村の中で、クラフト魔法の適性がある人を探したいんです」
その日の午後、村人全員に魔法適性の検査を行った。
水晶球に手を当てて、光の色を確認する。
約200人の村人の中で――
土属性と生産系の両方の適性を持つ者が、五人見つかった。
「すごい! 五人も!」
ノエルが嬉しそうだ。
「これなら、クラフト魔法のチームが作れる」
僕はその五人に声をかけた。
「みなさん、クラフト魔法を学びたいですか?」
五人とも、目を輝かせて頷いた。
「もちろんだ!」
「建物を作る魔法なんて、すごい!」
「俺たちにもできるのか?」
「できるよ。僕とノエルが教えるから」
翌日から、クラフト魔法の訓練が始まった。
五人の村人――
中年男性二人、若者二人、中年女性一人。
みんな真剣な表情で訓練に取り組む。
「まずは、土の塊を作ることから始めます」
僕が実演する。
「土魔法で土を集めて、魔力で固める」
五人が挑戦する。
最初は上手くいかなかったけど、一週間後には全員が基礎をマスターした。
「すごい! みんな上達が早い!」
ノエルが嬉しそうだ。
そして、二週間後――
僕たちは、七人で協力して、小さな家を建てることに挑戦した。
「設計図を共有します。みんな、イメージして」
僕が設計図を説明する。
一階建て、二部屋の小さな家。
「では、始めます」
七人で同時に魔法を発動する。
土が集まり、形を成していく。
でも――
途中で魔力が切れる者が出てくる。
「すみません…もう魔力が…」
「大丈夫。交代しよう」
僕とノエルが引き継ぐ。
そして、また別の人が魔力を回復したら交代。
こうして、交代しながら作業を進めることで――
三時間後、小さな家が完成した。
「できた…!」
「本当に家が…!」
村人たちが歓声を上げる。
その家は、土でできているけど、とても頑丈だった。
「これなら、普通の家と同じくらい使えるぞ」
「しかも、三時間で完成した」
「普通なら、何日もかかるのに」
僕は考えた。
この方法なら、村全体の家を短期間で建て替えられる。
そして、もっと大きな建物も作れる。
「村長さん」
僕は村長に提案した。
「このクラフト魔法のチームで、村の建物を作り直したいです」
村長が驚く。
「村全体を…?」
「はい。古くなった家を新しくしたり、共同施設を作ったり」
「それは…素晴らしいが…」
「費用は僕が出します。材料費だけなら、そんなにかかりません」
村長が深々と頭を下げる。
「ありがとう…本当にありがとう…」
その夜、家族で話し合った。
「アレン、村全体を作り直すなんて、大丈夫?」
母さんが心配そうに言う。
「大丈夫だよ、母さん。クラフト魔法なら、材料は土だけでいいんだ。魔力で固めるから、とても頑丈になる」
ノエルも言う。
「私も手伝う! 村のみんなのために!」
ソフィア姉さんが言う。
「私たちも手伝えることがあったら、言ってね」
マルク兄さんも頷く。
「うん。家族みんなで協力しよう」
双子も元気よく叫ぶ。
「僕たちも!」
「私たちも!」
僕は家族を見回した。
温かな笑顔。
支え合う絆。
「ありがとう、みんな。じゃあ、明日から本格的に始めよう」
翌日から、村の大建設プロジェクトが始まった。
まず、古くなった家から順番に建て替えていく。
僕とノエルと、五人のクラフト魔法使いのチームで。
最初の家は、村で一番古い、倒れかけの家だった。
「まず、古い家を解体します」
土魔法で、古い家を崩す。
そして、新しい家を建てる。
七人で交代しながら、魔力を注ぎ込む。
四時間後――
新しい、頑丈な家が完成した。
「すごい…新しい家が…」
その家の住人が涙を流す。
「ありがとうございます…」
「いえ、これからもどんどん建てていきますよ」
二軒目、三軒目、四軒目。
一日に二軒ずつ建てていく。
村人たちも驚いている。
「こんなに早く…」
「魔法ってすごいんだな」
一週間後、十軒の家が新しくなった。
村の景観が、徐々に変わっていく。
ある日、ノエルが提案した。
「アレン、建材も使ってみない?」
「建材?」
「うん。土だけじゃなくて、木や石も組み合わせたら、もっと綺麗な家が作れるかも」
「それはいいアイデアだね」
僕たちは次の家で、実験してみた。
土で基礎を作り、木材で柱を立て、石で装飾を加える。
クラフト魔法で、これらを一体化させる。
結果――
とても美しい家が完成した。
「わあ…すごく綺麗…」
村人たちが感嘆の声を上げる。
「これなら、町の家にも負けない」
「まるで貴族の家みたいだ」
ノエルが嬉しそうに微笑む。
「私、クラフト魔法が大好き!」
「僕も。すごく楽しいよね」
僕たちは、建築の可能性に夢中になっていた。
一ヶ月後、村の半分の家が新しくなった。
そして、僕たちは次の大きなプロジェクトに取り組むことにした。
「村長さん、城壁を作りたいです」
「城壁…?」
「はい。村を守るための、頑丈な城壁です」
僕は設計図を見せる。
「高さ5メートル、厚さ1メートルの石壁。村全体を囲みます」
村長が驚く。
「そんな大きなものを…」
「クラフト魔法なら、できます。時間はかかりますけど」
「それと、堀も掘ります。幅3メートル、深さ2メートル」
「堀まで…」
「はい。そして、跳ね橋も作ります。これで、村は魔物や盗賊から完全に守られます」
村長が深々と頭を下げる。
「頼む…この村を、守ってくれ…」
城壁の建設は、壮大なプロジェクトだった。
僕とノエルと、五人のクラフト魔法使い。
そして、村人たちも手伝ってくれる。
石を運んだり、土を掘ったり。
まず、堀を掘る。
土魔法で土を移動させる。
村全体を囲む、大きな堀。
一週間かけて、完成した。
次に、城壁。
石と土を組み合わせて、頑丈な壁を作る。
高さ5メートル、厚さ1メートル。
七人で交代しながら、少しずつ作っていく。
一日に20メートルずつ。
村の外周は約800メートル。
単純計算で、40日かかる。
でも――
途中から、村人たちが材料を準備してくれたり、簡単な部分を手伝ってくれたりして、効率が上がった。
三十日後――
ついに、城壁が完成した。
村全体を囲む、立派な石壁。
「すごい…本当に城みたいだ…」
村人たちが感動している。
「これなら、魔物が来ても安心だ」
「盗賊も入れない」
そして、跳ね橋も完成した。
堀を渡るための、木製の橋。
普段は下ろしておいて、緊急時には上げる。
これで、村の防衛は完璧だ。
その夜、僕とノエルは城壁の上に立っていた。
夕日が、村全体を照らしている。
「綺麗だね…」
ノエルが呟く。
「うん。僕たちが作った城壁から見る景色は、特別だね」
「アレン、ありがとう」
ノエルが急に言った。
「え?」
「私を家族にしてくれて。魔法を教えてくれて。生きる理由をくれて」
ノエルの目から、涙が溢れる。
「お父さんとお母さんがいなくなって…もう何もかも終わりだと思った。でも…」
「でも?」
「アレンと家族のみんなが、私を受け入れてくれた。新しい家族になってくれた」
ノエルが微笑む。
「だから、私、頑張る。この村を、みんなを守れるくらい強くなる」
僕はノエルの肩を叩いた。
「ノエルはもう十分強いよ。そして、優しい。それが一番大事なんだ」
「アレン…」
「一緒に、この村を守ろうね。家族みんなで」
「うん!」
二人で城壁の上から、村を見下ろす。
新しい家々、綺麗な井戸、立派な倉庫、診療所、学校。
そして、それを囲む頑丈な城壁。
この村は、確実に変わっていた。
貧困と絶望の村から、希望と繁栄の村へ。
そして、これはまだ始まりに過ぎない。
これから、もっと良くなっていく。
その夜、窓の外を見上げると、一つの星が特に明るく輝いていた。
「セレスティア、見てくれてる?」
小さく呟く。
「クラフト魔法で、村がすごく良くなったよ。ノエルも、すごく頑張ってるよ」
星が優しく瞬く。
女神の微笑みを、感じた気がした。
「これからも、頑張るね。もっともっと、みんなを幸せにするために」
そして、僕は安らかな眠りについた。
明日も、家族と一緒に。
村人たちと一緒に。
新しい未来を、作っていく。
次回:第15話「村の代表、そして新たな挑戦」
ノエルが家族になってから一ヶ月が経った。
その一ヶ月で、ノエルは驚くほど成長していた。
毎朝、家族全員で外周5キロを3周するランニング。
双子はまだ僕がバフをかけないとついてこられないけど、ノエルは最初から自分の身体強化魔法だけでついてきた。
訓練の後は、槍術の練習。
「えい!」
ノエルが槍を振るう。
その動きは、一ヶ月前とは比べ物にならないほど鋭い。
「いいよ、ノエル。槍の軌道が安定してる」
「本当?」
ノエルが嬉しそうに微笑む。
「うん。お父さんから教わった基礎がしっかりしてるからだね」
ノエルの表情が少し曇る。
でも、すぐに笑顔になる。
「お父さんとお母さんの分まで、強くなる」
その決意に満ちた瞳を見て、僕は胸が熱くなった。
「ノエル、今日グランベルに行って、冒険者ギルドに登録しようか」
「本当!?」
ノエルが目を輝かせる。
「うん。もう十分実力があるよ」
その日の午後、僕とノエルと母さんの三人で、グランベルの町に向かった。
ソフィア姉さんとマルク兄さんは、フォレストン村での訓練指導に行っている。
双子は村長に預けた。
冒険者ギルドに入ると、受付のミラさんが笑顔で迎えてくれた。
「あら、アレン様。今日は…」
ミラさんがノエルを見る。
「こちらの方の登録ですか?」
「はい。家族になったノエルです」
「家族…ですか」
ミラさんが少し驚く。
「はじめまして。ノエルです」
ノエルが丁寧に頭を下げる。
「では、ギルドマスターに確認してきますね」
しばらくして、ガルムさんが現れた。
「アレン、また家族が増えたのか」
「はい。幼馴染のノエルです」
ガルムさんがノエルを見る。鋭い目つきで、値踏みするように。
「いくつだ?」
「七歳です」
「七歳…アレンと同じか」
ガルムさんが腕を組む。
「では、実技試験を行う。訓練場に来い」
訓練場では、木製の人形が設置されていた。
「あの人形を、武器で破壊しろ」
ノエルが槍を構える。
町で買った、ノエル用の軽量の槍だ。
深呼吸。
そして、身体強化魔法を発動する。
「ブースト・アップ、マイルド」
柔らかな光がノエルを包む。
ノエルが駆け出す。
速い。
人形の前で槍を構え――突き。
ドンッ、という音と共に、人形の胴体に大きな穴が開いた。
貫通している。
ガルムさんが驚く。
「身体強化魔法…それも、かなりのレベルだ…」
彼は人形に近づき、穴を確認する。
「この威力…Eランク相当はある」
ノエルに向き直る。
「お前、いつから訓練を?」
「一ヶ月前からです」
「一ヶ月で…このレベルに…」
ガルムさんが僕を見る。
「お前が教えたのか」
「はい」
「…やはり、お前は普通ではないな」
ガルムさんが頷く。
「合格だ。Fランクを与える」
ノエルが嬉しそうに微笑む。
「ありがとうございます!」
「ただし」
ガルムさんが真剣な表情で言う。
「最初の一ヶ月は、アレンと一緒でなければ依頼を受けられない。いいな?」
「はい、わかりました」
ギルドを出ると、ノエルが嬉しそうに飛び跳ねた。
「やった! 私、冒険者になれた!」
「おめでとう、ノエル」
母さんも優しく微笑む。
「これから、家族みんなで冒険できるわね」
僕たちは村への帰路についた。
道中、ノエルが言った。
「アレン、クラフト魔法の訓練、もっとしたいな」
「うん、僕も。実は、考えてることがあるんだ」
「何?」
「村に、新しい建物を作りたいんだ。クラフト魔法で」
ノエルが目を輝かせる。
「本当!? 私も手伝う!」
「ありがとう。二人でやれば、きっとすごいものが作れるよ」
村に戻ると、村長に相談した。
「村長さん、クラフト魔法で建物を作ってみたいんです」
「クラフト魔法…?」
「はい。土魔法と生産系魔法を組み合わせた魔法です。これを使えば、短期間で建物を建てられます」
村長が驚く。
「そんな魔法が…」
「まだ練習段階ですけど、小さな建物なら作れると思います」
僕は提案する。
「まず、試しに小さな物置を作ってみます。それが成功したら、もっと大きなものに挑戦したいです」
「わかった。好きにやってくれ」
村長が頷く。
翌日、僕とノエルは村の外れに、小さな物置を作ることにした。
村人たちが興味深そうに見守っている。
「まず、設計図をイメージするんだ」
僕は説明する。
「高さ2メートル、幅3メートル、奥行き2メートルの物置」
「うん」
ノエルが頷く。
「次に、必要な土を集める」
僕たちは同時に土魔法を発動する。
周囲の土が集まってくる。
「そして、魔力で成形する」
集まった土が、魔力によって固まり、形を成していく。
壁、床、天井。
徐々に物置の形ができあがっていく。
村人たちが驚きの声を上げる。
「おお…」
「魔法で建物が…」
三十分後――
小さな物置が完成した。
土でできた、頑丈な物置。
扉も、土で作った。
「できた!」
ノエルが嬉しそうに叫ぶ。
「すごいよ、ノエル!」
僕も嬉しくなった。
村人たちが物置に近づいて、確認する。
「本当に…建物ができてる…」
「しかも、頑丈だ」
「これ、どれくらい持つんだ?」
「魔力で固めてあるから、普通の土壁よりずっと頑丈だよ。何十年も持つと思う」
村長が驚愕している。
「こんな魔法が…これがあれば…」
「はい。村の建物を、どんどん作れます」
僕は説明する。
「ただし、僕とノエル二人だけだと時間がかかります。だから…」
「だから?」
「村の中で、クラフト魔法の適性がある人を探したいんです」
その日の午後、村人全員に魔法適性の検査を行った。
水晶球に手を当てて、光の色を確認する。
約200人の村人の中で――
土属性と生産系の両方の適性を持つ者が、五人見つかった。
「すごい! 五人も!」
ノエルが嬉しそうだ。
「これなら、クラフト魔法のチームが作れる」
僕はその五人に声をかけた。
「みなさん、クラフト魔法を学びたいですか?」
五人とも、目を輝かせて頷いた。
「もちろんだ!」
「建物を作る魔法なんて、すごい!」
「俺たちにもできるのか?」
「できるよ。僕とノエルが教えるから」
翌日から、クラフト魔法の訓練が始まった。
五人の村人――
中年男性二人、若者二人、中年女性一人。
みんな真剣な表情で訓練に取り組む。
「まずは、土の塊を作ることから始めます」
僕が実演する。
「土魔法で土を集めて、魔力で固める」
五人が挑戦する。
最初は上手くいかなかったけど、一週間後には全員が基礎をマスターした。
「すごい! みんな上達が早い!」
ノエルが嬉しそうだ。
そして、二週間後――
僕たちは、七人で協力して、小さな家を建てることに挑戦した。
「設計図を共有します。みんな、イメージして」
僕が設計図を説明する。
一階建て、二部屋の小さな家。
「では、始めます」
七人で同時に魔法を発動する。
土が集まり、形を成していく。
でも――
途中で魔力が切れる者が出てくる。
「すみません…もう魔力が…」
「大丈夫。交代しよう」
僕とノエルが引き継ぐ。
そして、また別の人が魔力を回復したら交代。
こうして、交代しながら作業を進めることで――
三時間後、小さな家が完成した。
「できた…!」
「本当に家が…!」
村人たちが歓声を上げる。
その家は、土でできているけど、とても頑丈だった。
「これなら、普通の家と同じくらい使えるぞ」
「しかも、三時間で完成した」
「普通なら、何日もかかるのに」
僕は考えた。
この方法なら、村全体の家を短期間で建て替えられる。
そして、もっと大きな建物も作れる。
「村長さん」
僕は村長に提案した。
「このクラフト魔法のチームで、村の建物を作り直したいです」
村長が驚く。
「村全体を…?」
「はい。古くなった家を新しくしたり、共同施設を作ったり」
「それは…素晴らしいが…」
「費用は僕が出します。材料費だけなら、そんなにかかりません」
村長が深々と頭を下げる。
「ありがとう…本当にありがとう…」
その夜、家族で話し合った。
「アレン、村全体を作り直すなんて、大丈夫?」
母さんが心配そうに言う。
「大丈夫だよ、母さん。クラフト魔法なら、材料は土だけでいいんだ。魔力で固めるから、とても頑丈になる」
ノエルも言う。
「私も手伝う! 村のみんなのために!」
ソフィア姉さんが言う。
「私たちも手伝えることがあったら、言ってね」
マルク兄さんも頷く。
「うん。家族みんなで協力しよう」
双子も元気よく叫ぶ。
「僕たちも!」
「私たちも!」
僕は家族を見回した。
温かな笑顔。
支え合う絆。
「ありがとう、みんな。じゃあ、明日から本格的に始めよう」
翌日から、村の大建設プロジェクトが始まった。
まず、古くなった家から順番に建て替えていく。
僕とノエルと、五人のクラフト魔法使いのチームで。
最初の家は、村で一番古い、倒れかけの家だった。
「まず、古い家を解体します」
土魔法で、古い家を崩す。
そして、新しい家を建てる。
七人で交代しながら、魔力を注ぎ込む。
四時間後――
新しい、頑丈な家が完成した。
「すごい…新しい家が…」
その家の住人が涙を流す。
「ありがとうございます…」
「いえ、これからもどんどん建てていきますよ」
二軒目、三軒目、四軒目。
一日に二軒ずつ建てていく。
村人たちも驚いている。
「こんなに早く…」
「魔法ってすごいんだな」
一週間後、十軒の家が新しくなった。
村の景観が、徐々に変わっていく。
ある日、ノエルが提案した。
「アレン、建材も使ってみない?」
「建材?」
「うん。土だけじゃなくて、木や石も組み合わせたら、もっと綺麗な家が作れるかも」
「それはいいアイデアだね」
僕たちは次の家で、実験してみた。
土で基礎を作り、木材で柱を立て、石で装飾を加える。
クラフト魔法で、これらを一体化させる。
結果――
とても美しい家が完成した。
「わあ…すごく綺麗…」
村人たちが感嘆の声を上げる。
「これなら、町の家にも負けない」
「まるで貴族の家みたいだ」
ノエルが嬉しそうに微笑む。
「私、クラフト魔法が大好き!」
「僕も。すごく楽しいよね」
僕たちは、建築の可能性に夢中になっていた。
一ヶ月後、村の半分の家が新しくなった。
そして、僕たちは次の大きなプロジェクトに取り組むことにした。
「村長さん、城壁を作りたいです」
「城壁…?」
「はい。村を守るための、頑丈な城壁です」
僕は設計図を見せる。
「高さ5メートル、厚さ1メートルの石壁。村全体を囲みます」
村長が驚く。
「そんな大きなものを…」
「クラフト魔法なら、できます。時間はかかりますけど」
「それと、堀も掘ります。幅3メートル、深さ2メートル」
「堀まで…」
「はい。そして、跳ね橋も作ります。これで、村は魔物や盗賊から完全に守られます」
村長が深々と頭を下げる。
「頼む…この村を、守ってくれ…」
城壁の建設は、壮大なプロジェクトだった。
僕とノエルと、五人のクラフト魔法使い。
そして、村人たちも手伝ってくれる。
石を運んだり、土を掘ったり。
まず、堀を掘る。
土魔法で土を移動させる。
村全体を囲む、大きな堀。
一週間かけて、完成した。
次に、城壁。
石と土を組み合わせて、頑丈な壁を作る。
高さ5メートル、厚さ1メートル。
七人で交代しながら、少しずつ作っていく。
一日に20メートルずつ。
村の外周は約800メートル。
単純計算で、40日かかる。
でも――
途中から、村人たちが材料を準備してくれたり、簡単な部分を手伝ってくれたりして、効率が上がった。
三十日後――
ついに、城壁が完成した。
村全体を囲む、立派な石壁。
「すごい…本当に城みたいだ…」
村人たちが感動している。
「これなら、魔物が来ても安心だ」
「盗賊も入れない」
そして、跳ね橋も完成した。
堀を渡るための、木製の橋。
普段は下ろしておいて、緊急時には上げる。
これで、村の防衛は完璧だ。
その夜、僕とノエルは城壁の上に立っていた。
夕日が、村全体を照らしている。
「綺麗だね…」
ノエルが呟く。
「うん。僕たちが作った城壁から見る景色は、特別だね」
「アレン、ありがとう」
ノエルが急に言った。
「え?」
「私を家族にしてくれて。魔法を教えてくれて。生きる理由をくれて」
ノエルの目から、涙が溢れる。
「お父さんとお母さんがいなくなって…もう何もかも終わりだと思った。でも…」
「でも?」
「アレンと家族のみんなが、私を受け入れてくれた。新しい家族になってくれた」
ノエルが微笑む。
「だから、私、頑張る。この村を、みんなを守れるくらい強くなる」
僕はノエルの肩を叩いた。
「ノエルはもう十分強いよ。そして、優しい。それが一番大事なんだ」
「アレン…」
「一緒に、この村を守ろうね。家族みんなで」
「うん!」
二人で城壁の上から、村を見下ろす。
新しい家々、綺麗な井戸、立派な倉庫、診療所、学校。
そして、それを囲む頑丈な城壁。
この村は、確実に変わっていた。
貧困と絶望の村から、希望と繁栄の村へ。
そして、これはまだ始まりに過ぎない。
これから、もっと良くなっていく。
その夜、窓の外を見上げると、一つの星が特に明るく輝いていた。
「セレスティア、見てくれてる?」
小さく呟く。
「クラフト魔法で、村がすごく良くなったよ。ノエルも、すごく頑張ってるよ」
星が優しく瞬く。
女神の微笑みを、感じた気がした。
「これからも、頑張るね。もっともっと、みんなを幸せにするために」
そして、僕は安らかな眠りについた。
明日も、家族と一緒に。
村人たちと一緒に。
新しい未来を、作っていく。
次回:第15話「村の代表、そして新たな挑戦」
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無理だと思うけど。
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