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第6話 初心者の村
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気づけば目の前には見知らぬ村があり、初対面の村長と強制的に向き合うことになった。
村長はその肩書にふさわしそうな知的な雰囲気をまとった老人で、ナツキに向かって簡単な操作方法を説明すると、チュートリアルクエストを渡してきた。NPCなので決められたこと以外は話さない。彼はプログラミングによって生まれた、ゲームの中でしか生きられない人間なのだ。
渡されたクエストをクリアすれば、報酬として経験値やアイテムなどがもらえるようになっている。クエストは自動的に左手首の端末に収納され、いつでも見たい時に確認できるようになった。
このチュートリアルクエストをこなすことで、操作の基礎を身につけられるようになっている。ゲーム内でどう行動すればいいのか、なんとなくわかるようになるのだ。
村長から渡されたクエストは複数あり、最初は話を聞いているだけでクリアすることができる。ゲーム世界の説明を聞いて、理解したかしてないかを確認され、理解したを選ぶとクエスト達成だ。少量のロンや、経験値、ポーションなどの初心者にはありがたいアイテムがもらえる。
次々といくつかクリアすると、クエストの内容が変わり、おつかいをすることになる。道具屋に行って、そこにいる店番のNPCに話しかけてアイテムの釣り竿をもらって戻ってくる。次に村長からアイテムの金属を受け取り、武器屋に届けてくる。ゲーム慣れしている人ならかったるく感じられるやりとりが何度か繰り返され、それらをクリアした頃に、ようやく戦闘のクエストが始まる。そこまでの道のりはだいぶ遠い。まだまだ先だ。飽きっぽい人間なら、途中でゲームを放り出して、ログアウトしてしまうだろう。
まず最初に村の家の前に立っている女性のNPCに声をかけ、仕事を受ける。荷物を運ぶだけという簡単な仕事だ。次のクエストはまた違う家のNPCの女性に声をかけ、買い物を代行する仕事を受ける。さらに次のクエストは裁縫を手伝う仕事だった。スケールの大きいゲームなので、戦闘以外にも物作りをしたり合成したり、料理を作ったり釣りをしたり、農作業をしたり貿易をしたり、楽器を弾いたり歌を歌ったり、必要な物を採取したりなどなど、あらゆることができるし、それぞれの経験値がもらえてスキルが育つようになっている。
初めのうちはやることが多すぎて目が回りそうだが、慣れればそうでもないのだろう。なので選べる職業の数も多い。だが一番最初は「村人」しか選べない。
最初の設定は村人なのだ。だから、クエストの内容も村人の手伝いばかりなのだろう。
面倒くさいなと思いながらも地道にそれらをクリアし、経験値と通貨の他に薬草とライフ回復ポーションと魔力回復ポーションと短剣をもらった。ここでやっと、モンスターとの戦闘がありそうなクエストをもらう。やっと戦えるようになった。やっと。
「物置に何かいるみたいなんです。退治してもらえますか?」
村人のNPCの男性からそう言われ、村の奥にある物置へと向かった。もらったばかりの短剣は装備済みだ。まったく使わなかった木の棒は最初からいらなかったんじゃないかと思ったが、チュートリアルクエストをやらない人がきっと使うのだろう。
物置は真っ暗で気味が悪かった。雑然と物が置いてあり埃っぽい。チューチューとネズミの鳴き声が聞こえてきて、もしかしてこれかと耳をそばだてた。
ネズミの感知範囲に入ったらしく、いきなりロックオンされた。エンカウントだ。取り巻く空気が急に変わる。初めてのことなので、ナツキは反射的に慌てた。コントローラーで操作するようなゲームでは焦らないのだが、この世界で戦うのは自分自身なのだ。そんな経験は今までしたことがない。
村長はその肩書にふさわしそうな知的な雰囲気をまとった老人で、ナツキに向かって簡単な操作方法を説明すると、チュートリアルクエストを渡してきた。NPCなので決められたこと以外は話さない。彼はプログラミングによって生まれた、ゲームの中でしか生きられない人間なのだ。
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初めのうちはやることが多すぎて目が回りそうだが、慣れればそうでもないのだろう。なので選べる職業の数も多い。だが一番最初は「村人」しか選べない。
最初の設定は村人なのだ。だから、クエストの内容も村人の手伝いばかりなのだろう。
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