24 / 80
第24話 新しい出会い
しおりを挟む
宿屋のベッドからのゲーム再開だった。リュウトの姿はない。
ログアウトするとその姿は消えてしまう。再ログインするまで見えなくなるのだ。逃げるなら今だった。
ナツキは左手首の端末を操作して、リュウトとのパーティを解除し、フレンド登録も解除した。ブロックするかしないか迷って、それはやめておく。
破れてしまった服は、壊れたアイテムになってしまうので、予備のものを身につけた。後でまた新しい装備を買い直そう。修理することもできるが、少々お高い。
「よし、普通にゲームやるか」
まずはこのアダルト空間からの脱出だ。自由に行き来できるらしいが、どうやって全年齢のほうへ戻るのだろう。戻り方がわからない。
催淫効果は完全に切れており、問題なく冷静に行動できそうだった。
宿屋から外に出るとこちらも朝だった。ゲームの時間とリアルの時間は進み方が違う。リアルで一日が過ぎる間に、ゲームでは何日も過ぎて行く。
なので、時間の感覚が少しおかしくなる。
アダルト空間とは言え、一応最初の村なので、出てくるモンスターの強さは全年齢のほうと変わらない。触手の森の蔓のようなモンスターは他にもいるのだろうか、と考えて、ナツキはぞっとした。アダルト空間は何が起こるかわからないので怖い。ウロウロすればするほど危険に遭遇しそうだ。
しかし全年齢空間へはどうすれば戻れるのか、さっぱりわからないままだ。リュウトに聞いておけばよかったと後悔する。
ナツキはまず、武器屋に行こうと足を踏み出した。
「あっ!」
いきなり大声をあげてこっちを見た男がいたので、ナツキは心底から驚いた。
その男はどこかで見たことがあるような気もするし、見たことがないような気もした。
若い青年だが、がっしりしていて、とても強そうだ。眉目秀麗で精悍な顔つきをしている。武器も防具もレベルが高そうだった。
なぜ強そうなのに、最初の村にいるのだろう。
「あのっ」
青年は迷わずナツキに寄ってきた。どぎまぎしている様子だ。
「お一人ですか?」
「……? 一人ですけど……」
「あの、俺とパーティ組みませんか。できればフレンド登録も」
「ええ?」
これから一人でゲームを楽しもうとしていたのに、また変なのが寄ってきた。
「一人は危ないですよ。ここはアダルト空間ですから」
「君といたほうが危なかったりしてね」
冗談のつもりで言ったのだが、青年はぎくりとした顔を見せた。リュウトに続き、また下心満載で寄って来た男なのか……。
うんざりしながらナツキは口を開いた。
「俺は一人で遊びたいの。純粋にゲームを楽しみたいの。男とセックスする趣味は持ち合わせてないの」
「俺の前に誰か寄って来たんですね?」
図星をつかれてナツキは思わず顔を赤らめた。逃げ出すように走り出す。青年が慌てた。
「あっ、待ってくださいっ。本当に一人は危ないんですってばっ」
腕をつかまれる。しぶしぶナツキは立ち止まった。
そうだ、と思いつく。全年齢空間への戻り方をこの男に聞けばいいのでは。
「聞きたいことあるんだけど、アダルト空間から全年齢空間に戻るにはどうしたらいいのか知ってます?」
「え? 戻れないですよ?」
「……え?」
ナツキはぽかんと青年を見つめた。彼はとても真面目な顔でナツキを見返していた。
「一度こっちに来たらある条件をクリアしない限り戻れないんです。自由に行き来できるのは、その条件を満たした人だけですよ。ちなみにレベル五十以上ないと無理です」
「……マジか」
やられた、と思った。リュウトは自由に行き来できる話しかしなかった。ナツキができないことは知っていたはずだ。それなのに言わなかったのか。
ログアウトするとその姿は消えてしまう。再ログインするまで見えなくなるのだ。逃げるなら今だった。
ナツキは左手首の端末を操作して、リュウトとのパーティを解除し、フレンド登録も解除した。ブロックするかしないか迷って、それはやめておく。
破れてしまった服は、壊れたアイテムになってしまうので、予備のものを身につけた。後でまた新しい装備を買い直そう。修理することもできるが、少々お高い。
「よし、普通にゲームやるか」
まずはこのアダルト空間からの脱出だ。自由に行き来できるらしいが、どうやって全年齢のほうへ戻るのだろう。戻り方がわからない。
催淫効果は完全に切れており、問題なく冷静に行動できそうだった。
宿屋から外に出るとこちらも朝だった。ゲームの時間とリアルの時間は進み方が違う。リアルで一日が過ぎる間に、ゲームでは何日も過ぎて行く。
なので、時間の感覚が少しおかしくなる。
アダルト空間とは言え、一応最初の村なので、出てくるモンスターの強さは全年齢のほうと変わらない。触手の森の蔓のようなモンスターは他にもいるのだろうか、と考えて、ナツキはぞっとした。アダルト空間は何が起こるかわからないので怖い。ウロウロすればするほど危険に遭遇しそうだ。
しかし全年齢空間へはどうすれば戻れるのか、さっぱりわからないままだ。リュウトに聞いておけばよかったと後悔する。
ナツキはまず、武器屋に行こうと足を踏み出した。
「あっ!」
いきなり大声をあげてこっちを見た男がいたので、ナツキは心底から驚いた。
その男はどこかで見たことがあるような気もするし、見たことがないような気もした。
若い青年だが、がっしりしていて、とても強そうだ。眉目秀麗で精悍な顔つきをしている。武器も防具もレベルが高そうだった。
なぜ強そうなのに、最初の村にいるのだろう。
「あのっ」
青年は迷わずナツキに寄ってきた。どぎまぎしている様子だ。
「お一人ですか?」
「……? 一人ですけど……」
「あの、俺とパーティ組みませんか。できればフレンド登録も」
「ええ?」
これから一人でゲームを楽しもうとしていたのに、また変なのが寄ってきた。
「一人は危ないですよ。ここはアダルト空間ですから」
「君といたほうが危なかったりしてね」
冗談のつもりで言ったのだが、青年はぎくりとした顔を見せた。リュウトに続き、また下心満載で寄って来た男なのか……。
うんざりしながらナツキは口を開いた。
「俺は一人で遊びたいの。純粋にゲームを楽しみたいの。男とセックスする趣味は持ち合わせてないの」
「俺の前に誰か寄って来たんですね?」
図星をつかれてナツキは思わず顔を赤らめた。逃げ出すように走り出す。青年が慌てた。
「あっ、待ってくださいっ。本当に一人は危ないんですってばっ」
腕をつかまれる。しぶしぶナツキは立ち止まった。
そうだ、と思いつく。全年齢空間への戻り方をこの男に聞けばいいのでは。
「聞きたいことあるんだけど、アダルト空間から全年齢空間に戻るにはどうしたらいいのか知ってます?」
「え? 戻れないですよ?」
「……え?」
ナツキはぽかんと青年を見つめた。彼はとても真面目な顔でナツキを見返していた。
「一度こっちに来たらある条件をクリアしない限り戻れないんです。自由に行き来できるのは、その条件を満たした人だけですよ。ちなみにレベル五十以上ないと無理です」
「……マジか」
やられた、と思った。リュウトは自由に行き来できる話しかしなかった。ナツキができないことは知っていたはずだ。それなのに言わなかったのか。
21
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる