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第一部
第52話 俺達と振り返り 後編
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まあ、とにかく。だいぶ話しがそれてしまったが、ロナがあの状況で動けた理由ははっきりしたか。
とりあえず、本題に戻そう。
「それで、他になにか思い出せないか?」
「うーん……あっ! たしか『ハドルオン=バイゼン』は使ったかな」
「魔力が2しかない状態でも使えたのか、あの魔法」
「うん。一か八かだったけどね」
ロナが魔導爆弾から俺を庇い、耐えられたのは、『ハドルオン=バイゼン』の防御力上昇効果の他はないとは思ってはいた、が。
彼女はそのとき魔力が欠乏している状態のはずだったから、確信が持てなかった。
しかし、本人があの魔法を使ったと言ったのだから、結局それで正解なのだろう。
思えば、あの魔法、たしか発動に必要な魔力は「残りの半分」だったか?
『ライフオン=オルゼン』のように最低限必要な魔力は記載されていなかったはずだ。
つまり、そのまま言葉通り……魔力が残り2しかなかったのに、その半分の1だけを消費して効果を発揮できたんだよな。
ありなのかよ、そんなの。
いや、俺は魔力消費なしで宝具使えてるから、それよりはマシなのかもしれないが。
「そうそう、それで、効果が出てすぐに私はザンのところに私は走ってって……爆弾を……えと、どうしたんだっただけなぁ……ここ、ここまで来てるんだけど……!」
ロナは自分のこめかみを触って、「話がここまで来てる」のジェスチャーをした。
竜族からこういう身振り手振りが見られるのって案外貴重かもしれない。
しかし、この様子だといつまでも思い出せなさそうだ。
ここらが記憶の限界かな。
なら、ここからは俺の予想を述べて、記憶を呼び覚ましてやれればいい。
「そうだな、俺が思うに爆弾をキャッチして抱え込んで、そのまま相手に突撃したんじゃないか?」
「ん~? んー……ん! それだ! そうそう、それだよ!」
「ほんとか?」
「ほんとほんと!」
ロナと《大物狩り》が倒れていたあの状況で、爆破されたような痕跡があったのはその二人だけだったんだよな。
周りの建物や地面にすら焼け跡もほぼなかったんだ。
普通の魔導爆弾の爆発なら見たことある俺は、誰かが何かしなければ、被害がその程度で収まるはずがないのはわかってた。アレは家一軒は吹っ飛ばせるはずだからな。
そして、ロナのあの衣服の弾け方を見て、爆弾を自身の身体でしっかりと包み込んで爆風を抑えたのではと推測した。
で、その状態で《大物狩り》に接近し、そいつにだけ巻き添えを喰らわせたんだ、と。
彼女の今の表情をみるにその通りなんだろう。
あの一連の出来事を正しく把握できてないと思っていたが、ほとんど予想が当たってたぜ。
流石はクレバーさに定評がある俺という紳士、名推理だ。
ってことはロナは……魔力の欠乏の症状自体は抜け切らないまま動き、巨核の方の爆音で耳は塞がれ、閃光で目は見えず、俺のことを守ろうと必死にあがきつつ、無意識に周りに被害が出ないように気を配り、爆弾の爆発をその身にゼロ距離で受け、《大物狩り》の巻き添えを狙って成功させた、のか……⁉︎
眠ることで記憶がトんでしまうのも無理はないよな、これは。
土壇場で『ハドルオン=バイゼン』を魔力2で試して見たのも含め、なんと凄まじい勇気と度胸の持ち主なのだろうか。
こんなにも愛くるしい容姿をしていて、年齢だって聞いた話だと俺の一つ下なのに、やはり竜族は竜族なんだな。
ああ、世間の評判と相違無しってやつだ。
うん、やはり俺とロナ、どっちがより活躍したかの論争は……彼女の勝ちってことでいいな!
「なら、やっぱりロナが一番の大活躍だぜ? 俺は今回、命まで救ってもらってるんだ」
「ええ⁉︎ 結局そうなるの? ううん、それでも大活躍したのはザンなんだよ! 私だって、いや、私だけじゃなく……ザンが居なかったらたくさんの人が死んでたんだもん! 私だってザンに命ごと助けられたんだよ!」
「爆弾一つ無効化したのは一緒じゃないか?」
「全然違うよぉ⁉︎」
ロナはそれから、俺がどれほど凄いことをしたのか語り始めた。
まず《大物狩り》、こいつ自体俺以外はほぼ対処が無理だったことを挙げてきた。
たしかにそうかもしれない、が、それは俺ができることをジェントルにこなしただけの話だよな?
そして次に巨核魔導爆弾の対処。
ロナ曰く、あの爆弾はなんと、Sランクに分類される魔物に十分なダメージを与えられるほどの代物らしい。
たしかに空中での衝撃や『バイルド』から伝わってくる感覚からしてヤバくはあった。
あのまま地上で爆発を許していたら、確実に数百人が亡くなっていたらしい。それを踏まえてロナは俺の活躍を評価してくれているようだ。
そう聞くと、あの爆弾の下に遮蔽物として『バイルド』を巨大化させながら添えたのは超大正解だったんだな。
あの盾自体に爆発への耐性がついてたのもデカイだろう。
……てか、普通の魔導爆弾はまだしも、なんでイチ強盗犯がそんな凶悪なもん持ってんだ? その事実、こわすぎないか?
「ね? ザンの方が頑張ったでしょ?」
ロナはなぜか自信満々にそう言った。
たしかに理屈を聞いてる限りじゃ、そうレディに思って貰えるのも納得な格好良さだった。やっぱり俺はすごい紳士だ。
だが……。
「ま、いい分はわかったぜ。でも俺はやっぱりロナに直接助けてもらってるしな……」
「それはほら、私だって助けられたもん。……そうだよ、これこそお互い様なんだよ、ザン!」
「あー……」
そうか、たしかに言われてみればそれこそお互い様だ。
ロナは俺を守り、俺はロナを守る。
おお、一昨日決めた通りになってるな。いい関係じゃないか。
いや、よく考えたら『お互い様』と言えるのは、助け合いや謝罪だけじゃないな? 例えば……。
「なら《大物狩り》を弱らせたのは俺、《大物狩り》を倒せたのはロナ、その点はお互い成果だな。 さらに俺は一人で巨核魔導爆弾の対処をした、ロナは爆弾に身を突っ込んだ、この無茶もお互い様だ」
「た、たしかに……!」
今の言葉で、ロナの表情が明らかに輝き始めた。
どうやら、彼女の喜びの琴線に触れたようだ。
これは何か……もう少し踏み込んだことを言えば、さらに喜ばせて俺への好感度を上げられるかましれない。
よし。ここはレディへのエスコートのプロとも言える俺という紳士の、超本領発揮といこうじゃあないか。
「なぁロナ。思わないか? これほどの『お互い様』、俺たちはいつの間にか、超抜群のコンビネーションを発揮してたってことになると」
「うんうん、うんうん!」
「つまりだ! ロナにとって俺は、俺にとってロナは……最高のパートナーなんだ! そうだろう?」
「……‼︎」
ロナは目を輝かせ、首を何度も縦に振り、大きな尻尾も一緒になって動かしている。ああ、すごいはしゃぎようだ。
「感激」をそのまま全身であらわしたかなようなこの態度。
扇動したとはいえ、すごいテンションの上がり方。
狙った通り好感度を増やせたと、そう、思っていいだろう。
そうだ……今なら。
もしかして、今なら!
今なら……ロナを口説けるんじゃないか⁉︎
前々からロナは俺との仲を、満更じゃなく……いや、むしろ喜んでいるのはわかっていたんだ。脈は有ると思えるほどに。
そして今のこの様子。最高のパートナーという言葉に対して大いに歓喜している、この様子! いい状況だ!
この部屋に二人きり、物理的に距離も近く、昨日渡せなかった花も手元にあり、当のレディは興奮状態……っ! いける!
あくまで俺は紳士だ、その姿勢を崩すことなくジェントルに……さぁ!
「なぁ、ロナ」
「ん……!」
「俺達、まだ運命の出会いをして日こそ浅いが────」
「おーい、ザンはここだよな!」
突然に扉が開かれ、空気の読めない獅子族のクソ野郎が部屋にズカズカと入り込んできた。
「いたいた。二人とも揃ってたか」
「あ、リオさん」
「……」
俺が話し始めたのとほぼ同時だったため、ロナは口説かれ始めたことすらわからなかっただろう。ふざけんな。
……おっと、紳士的じゃない言葉がいくつか浮かんできてしまったな。よしよし落ち着け、俺。ジェントル、ジェントル。
しっかし、せっかくのムードとテンションが台無しだ。
まあ、まあいい。ロナとはこれからも行動するだろうし、チャンスはいくらでも……クッソ……。
=====
ザン……(´・ω・`)
非常に励みになりますので、もし良ければ感想やお気に入り登録などをよろしくお願いします!
追記:
内容が思い浮かばなかったため、8/3の投稿はお休みします!
調子次第では8/4もそうなりそうです、次か次々で第一章終わりの最終話なのになかなかいいキメ方ができなくて……。
申し訳ありません!
とりあえず、本題に戻そう。
「それで、他になにか思い出せないか?」
「うーん……あっ! たしか『ハドルオン=バイゼン』は使ったかな」
「魔力が2しかない状態でも使えたのか、あの魔法」
「うん。一か八かだったけどね」
ロナが魔導爆弾から俺を庇い、耐えられたのは、『ハドルオン=バイゼン』の防御力上昇効果の他はないとは思ってはいた、が。
彼女はそのとき魔力が欠乏している状態のはずだったから、確信が持てなかった。
しかし、本人があの魔法を使ったと言ったのだから、結局それで正解なのだろう。
思えば、あの魔法、たしか発動に必要な魔力は「残りの半分」だったか?
『ライフオン=オルゼン』のように最低限必要な魔力は記載されていなかったはずだ。
つまり、そのまま言葉通り……魔力が残り2しかなかったのに、その半分の1だけを消費して効果を発揮できたんだよな。
ありなのかよ、そんなの。
いや、俺は魔力消費なしで宝具使えてるから、それよりはマシなのかもしれないが。
「そうそう、それで、効果が出てすぐに私はザンのところに私は走ってって……爆弾を……えと、どうしたんだっただけなぁ……ここ、ここまで来てるんだけど……!」
ロナは自分のこめかみを触って、「話がここまで来てる」のジェスチャーをした。
竜族からこういう身振り手振りが見られるのって案外貴重かもしれない。
しかし、この様子だといつまでも思い出せなさそうだ。
ここらが記憶の限界かな。
なら、ここからは俺の予想を述べて、記憶を呼び覚ましてやれればいい。
「そうだな、俺が思うに爆弾をキャッチして抱え込んで、そのまま相手に突撃したんじゃないか?」
「ん~? んー……ん! それだ! そうそう、それだよ!」
「ほんとか?」
「ほんとほんと!」
ロナと《大物狩り》が倒れていたあの状況で、爆破されたような痕跡があったのはその二人だけだったんだよな。
周りの建物や地面にすら焼け跡もほぼなかったんだ。
普通の魔導爆弾の爆発なら見たことある俺は、誰かが何かしなければ、被害がその程度で収まるはずがないのはわかってた。アレは家一軒は吹っ飛ばせるはずだからな。
そして、ロナのあの衣服の弾け方を見て、爆弾を自身の身体でしっかりと包み込んで爆風を抑えたのではと推測した。
で、その状態で《大物狩り》に接近し、そいつにだけ巻き添えを喰らわせたんだ、と。
彼女の今の表情をみるにその通りなんだろう。
あの一連の出来事を正しく把握できてないと思っていたが、ほとんど予想が当たってたぜ。
流石はクレバーさに定評がある俺という紳士、名推理だ。
ってことはロナは……魔力の欠乏の症状自体は抜け切らないまま動き、巨核の方の爆音で耳は塞がれ、閃光で目は見えず、俺のことを守ろうと必死にあがきつつ、無意識に周りに被害が出ないように気を配り、爆弾の爆発をその身にゼロ距離で受け、《大物狩り》の巻き添えを狙って成功させた、のか……⁉︎
眠ることで記憶がトんでしまうのも無理はないよな、これは。
土壇場で『ハドルオン=バイゼン』を魔力2で試して見たのも含め、なんと凄まじい勇気と度胸の持ち主なのだろうか。
こんなにも愛くるしい容姿をしていて、年齢だって聞いた話だと俺の一つ下なのに、やはり竜族は竜族なんだな。
ああ、世間の評判と相違無しってやつだ。
うん、やはり俺とロナ、どっちがより活躍したかの論争は……彼女の勝ちってことでいいな!
「なら、やっぱりロナが一番の大活躍だぜ? 俺は今回、命まで救ってもらってるんだ」
「ええ⁉︎ 結局そうなるの? ううん、それでも大活躍したのはザンなんだよ! 私だって、いや、私だけじゃなく……ザンが居なかったらたくさんの人が死んでたんだもん! 私だってザンに命ごと助けられたんだよ!」
「爆弾一つ無効化したのは一緒じゃないか?」
「全然違うよぉ⁉︎」
ロナはそれから、俺がどれほど凄いことをしたのか語り始めた。
まず《大物狩り》、こいつ自体俺以外はほぼ対処が無理だったことを挙げてきた。
たしかにそうかもしれない、が、それは俺ができることをジェントルにこなしただけの話だよな?
そして次に巨核魔導爆弾の対処。
ロナ曰く、あの爆弾はなんと、Sランクに分類される魔物に十分なダメージを与えられるほどの代物らしい。
たしかに空中での衝撃や『バイルド』から伝わってくる感覚からしてヤバくはあった。
あのまま地上で爆発を許していたら、確実に数百人が亡くなっていたらしい。それを踏まえてロナは俺の活躍を評価してくれているようだ。
そう聞くと、あの爆弾の下に遮蔽物として『バイルド』を巨大化させながら添えたのは超大正解だったんだな。
あの盾自体に爆発への耐性がついてたのもデカイだろう。
……てか、普通の魔導爆弾はまだしも、なんでイチ強盗犯がそんな凶悪なもん持ってんだ? その事実、こわすぎないか?
「ね? ザンの方が頑張ったでしょ?」
ロナはなぜか自信満々にそう言った。
たしかに理屈を聞いてる限りじゃ、そうレディに思って貰えるのも納得な格好良さだった。やっぱり俺はすごい紳士だ。
だが……。
「ま、いい分はわかったぜ。でも俺はやっぱりロナに直接助けてもらってるしな……」
「それはほら、私だって助けられたもん。……そうだよ、これこそお互い様なんだよ、ザン!」
「あー……」
そうか、たしかに言われてみればそれこそお互い様だ。
ロナは俺を守り、俺はロナを守る。
おお、一昨日決めた通りになってるな。いい関係じゃないか。
いや、よく考えたら『お互い様』と言えるのは、助け合いや謝罪だけじゃないな? 例えば……。
「なら《大物狩り》を弱らせたのは俺、《大物狩り》を倒せたのはロナ、その点はお互い成果だな。 さらに俺は一人で巨核魔導爆弾の対処をした、ロナは爆弾に身を突っ込んだ、この無茶もお互い様だ」
「た、たしかに……!」
今の言葉で、ロナの表情が明らかに輝き始めた。
どうやら、彼女の喜びの琴線に触れたようだ。
これは何か……もう少し踏み込んだことを言えば、さらに喜ばせて俺への好感度を上げられるかましれない。
よし。ここはレディへのエスコートのプロとも言える俺という紳士の、超本領発揮といこうじゃあないか。
「なぁロナ。思わないか? これほどの『お互い様』、俺たちはいつの間にか、超抜群のコンビネーションを発揮してたってことになると」
「うんうん、うんうん!」
「つまりだ! ロナにとって俺は、俺にとってロナは……最高のパートナーなんだ! そうだろう?」
「……‼︎」
ロナは目を輝かせ、首を何度も縦に振り、大きな尻尾も一緒になって動かしている。ああ、すごいはしゃぎようだ。
「感激」をそのまま全身であらわしたかなようなこの態度。
扇動したとはいえ、すごいテンションの上がり方。
狙った通り好感度を増やせたと、そう、思っていいだろう。
そうだ……今なら。
もしかして、今なら!
今なら……ロナを口説けるんじゃないか⁉︎
前々からロナは俺との仲を、満更じゃなく……いや、むしろ喜んでいるのはわかっていたんだ。脈は有ると思えるほどに。
そして今のこの様子。最高のパートナーという言葉に対して大いに歓喜している、この様子! いい状況だ!
この部屋に二人きり、物理的に距離も近く、昨日渡せなかった花も手元にあり、当のレディは興奮状態……っ! いける!
あくまで俺は紳士だ、その姿勢を崩すことなくジェントルに……さぁ!
「なぁ、ロナ」
「ん……!」
「俺達、まだ運命の出会いをして日こそ浅いが────」
「おーい、ザンはここだよな!」
突然に扉が開かれ、空気の読めない獅子族のクソ野郎が部屋にズカズカと入り込んできた。
「いたいた。二人とも揃ってたか」
「あ、リオさん」
「……」
俺が話し始めたのとほぼ同時だったため、ロナは口説かれ始めたことすらわからなかっただろう。ふざけんな。
……おっと、紳士的じゃない言葉がいくつか浮かんできてしまったな。よしよし落ち着け、俺。ジェントル、ジェントル。
しっかし、せっかくのムードとテンションが台無しだ。
まあ、まあいい。ロナとはこれからも行動するだろうし、チャンスはいくらでも……クッソ……。
=====
ザン……(´・ω・`)
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追記:
内容が思い浮かばなかったため、8/3の投稿はお休みします!
調子次第では8/4もそうなりそうです、次か次々で第一章終わりの最終話なのになかなかいいキメ方ができなくて……。
申し訳ありません!
応援ありがとうございます!
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