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第一章 青き衣(ジャージ)をまといし者
エルフは いがいと こうせんてき?
しおりを挟む「それで、アルカはこれからどうするんだ?」
「まぁ、頃合いを見計らって外に出るつもり」
「そうか。ならば、俺が喜んで露払いを引き受けよう」
あぁ、まったく、血気盛んなのはゲオルグじぃちゃんだけにしてくれ。
「どうして見付かること前提で、しかも嬉しそうに言うかなあ。さっきも俺、言ったよね? 暴力は良くない」
しばし沈黙すると、
「了解した」
バルトはいかにも残念そうな顔で返事をした。
今の、考えるところか?
やっぱりエルフって意外と好戦的な……というか、バルトがエルフ以外の種族だったりして。
「とりあえず、村の人達から話を聞こうじゃないの」
今はこうして拘束も解かれたことだし、魔法が使える分、こちらの方が有利だ。
また捕縛されないように注意すれば良いこと。
同じ失敗を繰り返してたまるか。
朝までにはまだ時間がある。
もう一眠りしようと思ったが、ここで普通に二度寝をして、再び拘束されたのでは間抜けもいいところだ。
無事に朝を迎えるには、結界を張るなどして、それなりの用意をしなくてはならない。
派手に火の結界とか、水の結界とか、いばらの結界を張り、村人に俺の強さをアピールすることもできる。
俺のことを青ジャージと連呼して、遠回しにバカにしてたし。
でも、火の結界は燃えちゃうから危険だろ?
水の結界は寒いし、いばらの結界は寝返りを打った拍子にうっかり刺さると痛いし……
「闇の精霊に申し上げる……」
俺は小さく呪文を唱え始める。
どの結界にしようか迷ったが、手っ取り早く闇の結界を使うことにした。
外部からこの結界に触れれば、たちまち恐怖心に心が支配されて、相手が逃げ帰るという、平和的に敵を追い返すことができる魔法である。
平和主義な俺にはぴったりと言えよう。
ヒカリゴケの明かりが闇にじわじわと飲み込まれ始めた。
「言えば、俺が張ってやるのに」
そう言うバルトの顔が闇に溶けていく。
「これぐらい自分でもできるって」
たちまち物置の中は闇に支配されていく。
どこに何があるのか、どこにバルトがいるのか、まったく見えない。
ここに入れられたときと同じ、真っ暗な空間に戻った。
「朝までのんびり待たせてもらうよ」
俺は毛皮の上に横になり、目を閉じる。
バルトが毛布を掛けてくれたらしく、寒さが少し和らぐ。
「それにしても、どういう依頼を受けたんだ?」
「森の中に出現したホワイトドラゴンの討伐だって」
ノエルを追って出現したのは、ホワイトドラゴンではなく村人達だったワケで。
あの場面でホワイトドラゴンが現れていたらと思うと背筋がゾッとする。
彼女が巻き込まれなくて良かった。
「依頼人のおっちゃんが言うには、複数のホワイトドラゴンをこの近くの森で確認したらしい。魔王復活を画策してるんじゃないかって」
「そんなことを企てているのなら、禍々しい空気が漂うものだがな」
バルト曰く、そんな気配は感じないらしい。
人間では察知できないような、特殊な気配をエルフは感じることができるのだろう。
「むしろ、怒りと悲しみが森全体に漂っている」
その答えは、朝を迎えて村人に問いただせば判明するのだろうか。
「エルアルト達、心配してるかな」
改めて思うが、俺が逃げたと誤解しなければ良いが。
「安心しろ。レオンがお前の代わりに飯を食うついでに、エルアルト達に安否を伝えるそうだ」
「な、なんだってぇぇぇえぇ?」
さらば、豪華な夕飯!
俺の嘆きを代弁するかの如く腹の音が盛大に鳴った。
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