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第一章 青き衣(ジャージ)をまといし者
てきとの ごたいめん
しおりを挟む嫌悪に鳥肌が立つ。
「ファルメール準男爵……」
振り向くと、赤い派手な雨傘の下に立っていた。
あのハンターな執事が無表情でおっさんに傘を差している。
それから、剣を構えた戦士風の野郎が二人と、黒い魔法胴衣に身を包む野郎の、合わせて三人の姿が見える。
間違いなく護衛だろう。
「姿を消されたと聞き、とても心配していたのですよ。もしや、ここの連中に連れ去られたのではと思えば、案の定でしたな」
「何言ってんだ、アンタ」
肥えたおっさんを睨む。
最初は愛嬌があると見ていたが、今はただ醜いとしか感じない。
「ここにリゾート施設を造るらしいな。その為に、地元住民に対して強制的に立ち退きを要求している」
「あれが住民ですと? 汚らわしい野蛮な原住民ではないですか」
おっさんは大袈裟な動作で肩をすくめた。
人をバカにしているようでいちいち腹が立つ。
突然、泥水を跳ね上げさせながら小さな影が俺の前を横切った。
「おまえー! われらのとちからでてゆけー!」
「ノエル!」
握り拳を振り回して、ノエルがおっさん達に向かって行く。
護衛の戦士二人は容赦なく構え、魔法使いも詠唱に入っている。
「ちびっこが相手だぞ!」
非難の声を上げたところで三人が態度を改めることはなかった。
俺は舌打ちをして大雨の魔法を解除した。
あらかた火は消えているので、後は村の男達が何とかしてくれるだろう。
「水の精霊、再びお願いする!」
そのまま早口で魔法の詠唱を始める。
ノエルが大地を蹴った。
戦士の一人が剣を正面から撃ち込む。
その一撃を彼女は器用に身を捻って宙で避けた。
爪先で着地すると、その足で素早く飛び、
「あぁあぁああああっ!」
猛々しい咆哮を上げて、彼女は戦士の頬に拳を当てた。
べちんと鈍い音がこちらの耳にまで届く。
良くやった!
喜びのあまりに拍手をしそうになったが、今は魔法に集中しなければならない。
最後の一音を唱えると、ノエルに精霊の加護を掛けた。
水のように流れるような動作で攻撃を受け流すことができる、敏捷性アップの魔法だ。
奴らに対してどんなに恨みがあろうとも、彼女には危険な戦闘から確実に離脱して頂かなければならない。
その彼女が素早く後ろに退いた。
剣が再び空間を切り裂く。
「ノーダメージだと!?」
ノエルの一撃を喰らった戦士は少しもダメージも受けていないように攻撃を繰り出す。
まあ、お子様パンチでは程度が知れているかもしれないが。
「ノエル! ここは俺に任せて、お前は逃げろ!」
「ことわる!」
敏捷性の高まった彼女は二人の戦士の攻撃を蝶のように舞いながら避けている。
見事だと言いたいが、それは俺の魔法のお陰なんだからな?
「相手が憎い気持ちは理解できる。だが、ちびっこがかなう相手じゃない。足手まといだ」
子ども相手に遠回しな表現は通用しない。
ここはストレートに戦力外を言い渡したが、
「こいつらを、たおすまでは……ひけない!」
それで引き下がらないのが、ちびっこだ。
俺も俺で引き下がれない。
「わがまま言うんじゃありません!」
「いーやぁー!」
俺の前まで戻ってくるなり、地団太を踏んで抵抗する。
ノエルの腕を掴み、
「ほら、もたもたしない!」
逃げるよう促していると、
「はい、そこの親子!」
相手方の魔法使いに変なツッコミを入れられてしまった。
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